季節は秋…… さて……どうしたものか。 自分、アイズ・ラザフォードは少し厄介な悩み事を抱えている。 今現在、家には自分と恋人である竹内理緒が居る。 ここ数ヶ月、ずっと仕事が多忙で会っていなかったので 来てくれたのは嬉しいが、必要最低限度しか会話が無い状態になっている。 何かを話そうにもそういう状態でないに等しい。 とりあえず、膠着状態が続いているのでリビングで本を読んで 探りを入れている始末だ。リオの方も顔は本で隠しているが きちんと何か読んでいるようで邪魔するのも悪い。 こんな状況だから余計に話しにくいのが現状か。 とはいえ、喉が乾いたな。ちょうど良い、リオにも聞くか。 「リオ、お茶を入れるが飲むか?」 「あっ、わたしがやるよ」 「だが……」 「良いから良いから、アイズ君は座って本を読んでて」 「分かった」 そう言ってリオはキッチンへと向う。 その背中を見送りながら、リオが居た辺りを見ると本が置いてある。 リオが何の本を読んでいたのかふと気になりそれを手にして中身を見る。 「……」 中身を見て多少驚き少し後悔する。 リオが座っていた部分を見ると多少染みができている。 とりあえず立ち上がり、リオがいるキッチンへと向う。 リオは、ガスコンロの近くに居るが、まだ火はつけてないようだ。 気づかれないように近寄って背後から抱き締める。 「あ、アイズ君!?」 「リオ、すまない」 「あっ……」 顎に手を当て多少強引に振り向かせてキスをする。 少し触れるだけのキス。だがそれで充分なのだと思う。 リオはずっと不安だったのだと気づかされる。 彼女が読んでいたもの。それは、一人の男女の話。 男は仕事で世界を飛びまわり、彼女はひたすらそれを待ち続ける。 それがずっとずっと続き、そしていつしか二人は別れてしまい 女は悲しみの果てに亡くなり、男もそれを追って死ぬ。 そんなお話…… 「アイズ君、わたし、わたし……」 「何も言わなくて良い。ただ、今はこうさせてくれ」 「うん」 お互いの中にあった、いつか離れてしまうのではないかという不安。 確かにこれからも自分は仕事で忙しいし、リオにはかなり辛い思いを させる事になるだろう。今回のような事が何度もあるだろう。 それでも、リオを幸せにしたいと思う。 「アイズ君」 「何だ? リオ」 「今少しまた不安になったでしょ」 「分かるか」 「うん。アイズ君の考えている事なら大体分かるよ」 「そうか」 「不安なのはお互い様だよ。でもね、こうしてアイズ君が抱き締めてくれていると そんなのも段々と吹き飛んでいく感じがする」 「そうか」 そう言ってリオの髪を少し撫でてやる。気持ち良さそうにしながら言葉を紡ぐ。 「アイズ君の仕事の事は分かってるつもり……だけど、どうしても不安になって 泣いちゃったりするけど、でも大丈夫だよ。アイズ君の事信じてるから」 「……」 「ちゃんと約束通り幸せにしてくれるって」 かつて、あの戦いが終わってリオと交わした一つの約束。 ”何があっても必ず幸せにする” 「約束だからじゃない。そう決めたから。リオの事を本当に好きだからそう誓ったんだ」 「うん」 リオの身体を真正面に向かせ顔を見る。乾いているが涙の後が少しある。 「すまない」 不安にさせた事と泣かせてしまった事に対する謝罪の言葉。 「うん」 そして、もう一度キスをした。 夜…… 「今晩は中秋の名月だよ」 「十五夜の事だな」 「うん」 「見えると良いが」 空は少し曇ってて見えない。一応、脇には月見団子を置いているが…… 予定では、月の光を利用して本を読む予定なのだが。 「大丈夫、きっと見えるよ。信じていれば思いは届く……だから、絶対に見えるよ」 「そうか。リオがそう言うなら間違い無いな」 「うん」 お互いに月が出ているであろう方向を見上げて少しだけ祈る。月が見えるようにと。 その願いが通じたのか雲が晴れ、月明かりが辺りを照らし出す。 「綺麗な月だな」 「うん」 予定通り、月の光を利用しつつ本を読み始める二人。 そんな二人を月の光は優しく照らし続けていたのであった。 あとがき えーと。これが元エロ文章を書こうとしてたなんて…… ちなみに、半分原型が亡くなってます(苦笑) うーん。やはり理緒に弱鬼畜、純愛系は合わん。 素直に純愛系で良いわ。というか、エロが書けなくなってるような気分。 気のせいではないだろうけど。素直に原点に戻ってみるか。 まぁ、題材が難しかった。途中で路線変更したのは少し失敗。 素直に本能の赴くままにエロにしておけば良かったと思いつつ 今後の課題だな……これは。 さて、これを書いているのは20日だったりするわけで。 21日には無事に月が見えるかねぇ…… 月の光で本を読むのは多少無理がありそうだが、一応可能なのです(ぉ ただ、この時期だと赤い月になる可能性もある罠。 まっ、晴れれば何とかなりますがね。 そんなわけで。では。