とまぁ、パラレルワールド(いつもの事ながら) 物語上の設定は特になし。ただ、一度歩が挫折しかけて その時、ひよのがある一言で彼を立ち直らせているという 設定にしてます(ぉ 歩とひよのは付き合ってますが、呼び方は途中まで原作通り。 二人はまだキスもしてないプラトニックですよ(ぉ 関係は原作よりかは甘めにしてます。 くだらん前書きは後で良いから早く物語を書けとか 言われそうなので、物語の始まりっと 「歩さん、もうすぐですね」 「そうだな……」 秋の夜。俺とひよのは屋上に居る。 理由は月を見るため。一応ここまでの経緯を説明すると ひよのの一言から始まった。 「今日、土曜日で学校お休みですけど、来てくださいね」 「断る……」 「鳴海さん、酷いです。可愛い彼女のお願いを断るなんて」 「確かに、付き合ってはいるが何でまた」 「今日は屋上でお月見をする予定だからです」 「……。その前に休みの日は屋上には行けなかったと思うが」 「あら、鳴海さんはわたしの得意技を忘れたのですか?」 一瞬、背筋に悪寒が走る。恐らく用務員か教師を脅して 許可を得たのだろう。今回の場合、被害はこっちには来ないが 少々本気で別れようかと思いたくもなる。 まぁ、無理なのはわかっているが。 「な、なるほどな」 「声が裏返ってますけど大丈夫ですか?」 「ああ、大丈夫だ。それで何時ごろに行けば良い」 「そうですね。綺麗に見えるのはやっぱり夜ですから。あっ、でも今からそっちに行きますよ」 「何?」 「ほら、月見といったらお団子が必要じゃないですか。どうせだから 一緒に作りませんか?」 「それは、お誘いじゃなく、作れと言う事だな」 「酷い言い方ですね。ちゃんと手伝ってあげますよ」 「はぁ、分かった」 「ありがとうございます」 「どれくらいでこっちに来るんだ?」 「20分後くらいに行きますよ」 「じゃあ、鍵は開けておくから勝手に入れ。こっちは準備しておく」 「はい♪ 大好きですよ、鳴海さん」 「なっ……」 電話を切り、少し考える。大好きか。付き合い始めて何度か言われた言葉。 本気で言っているのは分かるが…… 普通、男の方から言うと思うんだが。まず自分では言えないな。 20分後 「お邪魔しまーす」 「よう」 「こんにちわ、鳴海さん。それじゃ、早速始めましょうか」 「ああ」 二人で黙々と団子を作り始めてはや1時間…… 会話が全く無い。一応様子を見ると手馴れた手付きで作業をしている。 「鳴海さん」 「何だ」 「いつも、わたしの我侭に付き合ってくれてありがとうございます」 「……。今更だ、それに付き合ってるんだ。可愛い恋人のお願いを そう無下にするほど俺は冷酷じゃない」 こう発言して、顔が熱くなるのを感じる。普段はまず”可愛い恋人”などとは言わない。 思わず言ってしまってから照れが一気にくる。 様子を見ると、向こうも顔を赤くしている。 「め、珍しいですね。鳴海さんがそんな事を言ってくれるなんて」 「あんたが、ああいうのも珍しいと思うが」 「ふふっ……」 「ははっ……」 お互いに少しおかしくなって笑い出す。前までの自分ならまずこんな事はなかっただろう。 そう言った意味ではいつも感謝している。言葉に出して言うと恥ずかしいので いつも心の中に留めているだけだが今なら言える、そんな確信があった。 「ありがとうな」 「えっ?」 「付き合い始めてからずっとあんた……いや、ひよのに色々と感謝してるんだ。 今までの自分ならまずこんな風に笑わなかったなとか、自分自身の事とか分からなかった 部分が分かってきた気がする」 「鳴海さん……」 「だから、感謝の言葉を言っておく」 「は、はい」 今度は少し雑談をしながらようやく、作り終える。 さて、これで後は学校の屋上に行って夜を待つだけか。 「さて、これから行くのか」 「うーん。まだ日が暮れるまで時間ありますけど、行けばちょうど良い時間になりますね」 「ああ」 「それじゃあ、行きましょうか。歩さん」 「あ、ああ……ひよの」 恐らく、俺が名前で呼んだからだろう。ひよのも今までの呼び方から変えてきたので 多少の違和感を感じる。慣れるまで時間がかかりそうだ…… 「うーん。見事に曇っちゃいましたね……」 「そうだな」 夕方になって少し雲行きが怪しいとは思っていたが。空は日が暮れて暗くなったものの 見事なまでに曇っている。これでは月は見えない。 「はぁ、せっかくお団子まで作ったのに……」 「大丈夫だろ」 「えっ?」 「きっと晴れるさ。信じていれば叶わない事は何も無い」 「歩さん……」 「ひよのがかつて俺に言った言葉だ。自分を信じろ。信じていれば叶わない事は何も無いんだって」 「そうですね。信じないと叶うものも叶いませんね」 「ああ、だから信じてみよう。この雲が晴れる事を」 「はい」 二人で空を見上げ、雲が晴れるのをただ待ち続ける…… まだ少し時間が経っていないのに異常に長く感じる。 雲はまだ晴れない。 「……」 「……。歩さん」 「何だ?」 「嬉しかったですよ。名前で呼んでくれて」 「付き合っているのに、いつまでもあんたとか呼んでいるわけにもいかないだろう」 「くすっ。歩さんは女の人を名前で呼んだりしないから新鮮ですよ」 「ぐっ……」 言われてみれば確かにそうだ。姉さんを含めてとにかく、名前で呼んだ事は無い。 「だから、余計に嬉しいんですよ」 「そうか」 「はい。あっ……月が」 雲が晴れ、月が姿を現す。普段と変わり無いはずなのに どこか幻想的で暖かい光で俺達を照らす。 「本当に晴れましたね……」 「ああ」 「信じていれば叶う。嬉しいですよ」 そう言って少しだけ泣く。俺は反射的抱き締めて涙を指で掬ってやる。 そして、ゆっくりとキスをした。 「ファーストキスが学校の屋上ですね……」 「そうだな」 「見ているのはお月様だけ」 「そうだな」 「歩さん」 「ひよの」 そして、俺達はもう一度キスをした。 「んーっ、これでお月見も終わりですね」 「そうだな」 雲が晴れて少しして流石に時間も遅くなったのでお開きにする事にした。 ゴミを片付けつつ、ひよのに一つだけ聞いてみたい事があったので尋ねてみる。 「そういえば、どうして学校の屋上だったんだ?」 「えっ?」 「いや。月を見るならうちのベランダで充分だったからな」 「そうですね。強いて言うなら」 「ああ……」 「ここの方が月により近いからですよ」 「近いから?」 「はい。わたしの夢は三つあって、一つはジャーナリストになる事。 もう一つは月に行ってみたいんですよ」 「なるほどな」 「だから、高さとしてはこちらの方が高いですしね。少しでも近づきたかったんですよ」 「そうか。ところで、三つ目の夢って何だ?」 「(やっぱり鈍感ですね)」 「何か言ったか?」 「いえ、三つ目は秘密ですよ」 「気になる……」 「そう言われましても、秘密なものは秘密ですよ」 「……」 少し名残惜しいがこれ以上聞いても教えてはくれないだろうと思い大人しく諦める事にする。 「それじゃ、帰るか」 「はい」 帰路につく途中、ひよのはそっと三つ目の夢を教えてくれた。 それは…… ”歩さんのお嫁さんになる事ですよ” 後書き とまぁ、中秋の名月(十五夜)にちなんで書いて見ました。 久々に二日連続でSS書いてます。 やはり、読書の秋で絡ませるのは多少苦しかったので 正式に書いたのがこれ。 ああ、こっちは月は見えてますが。 雲がかかってるせいで光が強くは無いし、星は見えねぇし。 うーん。残念(何が) とまぁ、今回はこんな感じでやってみたけど。 時節ものはちょっと辛かった。 まぁ、これはこれで勉強なりますが。 数ヶ月後見たら穴だらけで本気で凹みそうな予感。 まだまだ修行が足りないです。はい。 とまぁ、これにて。 では、次はスポーツの秋にて。