真っ暗な部屋の中、ベッドで眠る人物が一人。
そして、その人物に近づく影が一つ。

「……。寝てますよね?」
 気配を悟られないように気をつけつつ侵入したつもりではある。
本当は寝込みを襲う主義ではない。けれど……あんな別れ方をして
おいて、また顔を見せるなんて事は本当は出来ない。

「今度こそお別れです。鳴海さん」
 そう言ってわたしは身を屈めて彼の唇に自分の唇を触れ合わせる。
触れ合うだけのキス。結崎ひよのを名乗っていた時のたった一つの
恋心という名の未練。その未練を終わらせる為にちょっと協力して
貰って家に入れて貰った。
 二人とも一応笑顔で協力してくれましたけど……。

「さて……今度こそ行かないと」
 唇を離して身を起こそうとしたわたしの肩が手で抑えられる。
「人が寝ている時にキスをするとは反則だと思うが」
「な、鳴海さん!? お、起きていたんですか?」
「あんたが入ってくる時までは寝てたな……ぐっすりと」
「う……」
「火澄や兄貴と決闘まがいな事をやらされたせいか、人の気配には
 えらく敏感になったらしくてな」
「き、気を付けてはいたんですけどね」
「まっ、どうするのかと思ってたが、あれだな。初めてをこんな形
 で失うとは思わなかった」
「えっ? 鳴海さん、キス初めて……」
「ああ、そうだな」
「そ、それは……意外でしたね」

 顔が熱くなる。はぁ、それはともかく、早くここから去らないと。
去らないといけないのに身体が動かない。

「今度こそ本当のお別れなんだな」
「ええ、今度こそです」
「そうか」

 じっとこちら目を見つめてくる。何を考えているのでしょうか。

「寝てる所を部屋に侵入した上にファーストキスまで奪ったまま、
 お別れってのはフェアじゃないよな」
「えっ? んっ!!」

 少し不敵な笑みを浮かべながら今度は鳴海さんからのキス。私は
一瞬固まった後、そうするのが自然のように黙って身をゆだね目を
閉じた。

「それでは鳴海さん。またいつか会う日までは死なないでいてくだ さいよ」
「努力はするよ」

 クローンとして生まれた鳴海さんの身体は今こうしている間にも
死に近づいている。本当ならば傍で彼の力になり続けたい。けれど、
それは出来ない。彼がそう選んだように私は私でしなければならな
い事が沢山あるから。

「それでは、また……生きて会いましょう」
「ああ。またな」







あとがき

 エロ予定でした。うん、あっさり風? 何それ美味しいの?
何を書いてるんだぁぁぁぁぁぁぁ。俺はぁぁぁぁぁorz
 本来は寝込みを襲わせる予定だったんですが……何をどう
間違ったら原作の最終話前のif展開になるのか。本来のエロ
Verも何かしらの形で書きます。はい。