校舎へと続く白い道。


冷たくなった両手に息を吐きかける。


口から出る白い息がふっと目の前で消える。


そしてあたしの目線の先にはいつもの二人。


相沢君と名雪の姿。






「おはよう、香里」

あたしに気付いた名雪が、笑顔で話しかけてくる。
そう。
本当に心の底から、溢れんばかりの笑顔で…。

「おはよう、名雪。ついでに相沢君」
「俺はついでか…」
「祐一はついでじゃないよ、香里！」

名雪が凄い勢いであたしに言う。

「わ、わかってるわよ。冗談よ、冗談」
「今度言ったら冗談じゃすまされないよ！」
「わかりましたよ〜」

まったく。
相沢君のことになると熱くなっちゃうんだから。

そして、あたしは一つため息を付く。

「どうしたんだ？」
「いや、あなた達のアツアツぶりに呆れちゃって…」
「だってわたし達、恋人だもん。ね〜、祐一」
「そういうこと。今の俺らを引き離すことは、ジャンボ宝くじで一等を当てるのより難しいぞ」
「…あっ、そう」

その時上空で、なにかが落ちてくる音。


バサバサバサッ…！


「危ない、名雪」

相沢君が名雪を押す。

「きゃっ」

その名雪があたしにぶつかる。

「わっ」

グシャ……。

「大丈夫だったか？名雪」
「うん。大丈夫」

「…ねぇ」

「結構木の上って雪が溜まりやすいからな」
「祐一がいてくれなかったら、直撃だったよ」

「…ねぇ」

「ところで香里はどうしたんだ？もう校舎の中に入っちゃったのか？」
「ほんとだ、おかしいねー」

「……あんた達……」

「うお、香里。なんでそんなところで寝てるんだ？」
「なにかあったの？」

「……もう良いわ……」

あたしはゆっくりと起きあがり、服についた雪を払い落とした。
この二人ったら…。
熱くなると回りが見えないんだから。
こっちは良い迷惑よね。

まぁ、二人とも幸せそうだから良いけど。


そしてまた、あたし達は校舎への短い道のりを３人で歩き出す。






あと少しで校舎内、というところで相沢君があたしに聞いてきた。

「ところで香里。その後北川とはどうなんだ？」
「えっ？あ、うん、まぁ…ね」
「香里〜、それって答えになってないよ〜」
「い、良いじゃない別に。ほらそれより早く行かないと、石橋が来ちゃうわよ」
「あっ、待ってよ香里〜」


そしてあたしは走り出す。






二人のアツアツぶりのせいかな？

あの人の顔を早く見たくなっちゃった。























































願いが二つ重なって、一つの想いになった時。


その想いはこの雪の街を暖かく包み込んでいく。


固まっていた時も心も全てを溶かして…。












ありふれた冬の季節を彩る想いが、この街には溢れている。