だるい1日がはじまる…。
そう、いつも通りの1日…。
のんびりと過ぎていく時間。
それが幸せなことなんだと俺は思う。
それが俺の幸福感…。
「なぁ、相沢」
休み時間。
顔を横に向けて外を見ている俺に、北川が話しかけてきた。
「どうかしたのか?」
俺は顔を真っ直ぐに直して北川に言った。
北川は首を縦に振ってそれに答える。
「実はちょっと相談したいことがあるんだけど…」
「ああ。俺で良かったら相談にのってやるよ」
俺はそう言って北川を見た。
北川は他の生徒を気にしながら、小さな声で言った。
「あのさ…オレ…美坂のことが好きなんだ」
「ふーん」
「ふーんってお前…それだけかよ」
「そんなのお前の態度見てりゃあわかるって」
俺は北川に言ってやった。
「そ、そうかな?」
「ああ、ばればれだって。俺は他のやつみたいに鈍感じゃないからな」
俺が言うと北川は、なぜか納得したように頷いていた。
「で、どうしたら良いと思う?」
「そうだな…じゃあ俺が家で考えてくるよ」
「ほ、ほんとか?」
「ああ」
「それでこそ親友だよ」
「照れるな、おい」
俺は少し頭をかいて見せた。
「そいじゃあまかしたからな」
「おう、まかせとけ」
授業がはじまりそうだったため、俺と北川はそう言って別れた。
学校じゃあ調子乗って引きうけちまったけど…。
どうしたら良いかな。
家に帰ってからも、どうやって北川と香里をくっつけようかと俺は悩んでいた。
しばらくすると玄関の方で声が聞こえてきた。
「ただいまー」
名雪が帰ってきたらしい。
「おかえりー」
俺はそれに答える。
そういえばここんとこ名雪元気無いんだよな。
なんでだろ?
っと、そんなこと考えるよりも北川だよ北川。
そうこうしているうちに夕食の時間になっていることに気が付いた。
名雪も部屋に入ってくる。
やはり元気が無い。
「今日はなんか元気無かったみたいだけど大丈夫か?」
「調子が悪いんだったら部屋で寝てなさい」
秋子さんも気を使う。
「ん…。大丈夫だから。ほら、早く食べないとご飯冷めちゃうよ」
そう言って名雪はご飯に手を伸ばした。
ん?
「名雪、お前いただきますって言ったっけ?」
「あっ…言ってないよ…。ごめん…」
「いや、別に謝らなくても良いけどさ」
いつもならきちんとこういうことは言うやつなのに…。
やっぱり変だ。
「おい。ほんとに大丈夫なのか?」
「ごめん…。ちょっと今日食欲無いみたい。私もう寝るね」
そう言って名雪は自分の部屋へと戻っていってしまった。
変だな…。
夕食を食べ終えて自分の部屋に戻る。
名雪の元気の無さも気になったが、今俺の脳みその大部分を占拠しているのは北川と香里のことだった。
あー…。
どうしようかなー…。
うーーー…。
そうだ!
遊園地にしよう!
俺と名雪も一緒に行けば問題無いだろ。
名雪も元気出してくれれば一石二鳥だし。
脳みそを使いすぎたのか、問題が解決された瞬間にいきなり眠気が襲ってきた。
今日はもう寝るか…。
窓の外は一面雪景色。
白の世界。
そんな中…。
俺はゆっくりと目を閉じた。