何気ない授業風景。
いつもと変わらない教卓でしゃべる先生。
当然わたしはわたしの席に座っていて…。
当然わたしの横には祐一が座っていて…。
それが必要以上にわたしの胸を締めつけていて…。
休み時間になってわたしは、香里に連れられて人気の無いところに連れて行かれた。
「名雪。こういう時はね、思いきって自分の気持ちをぶつけるのが一番良いのよ」
「そうだけど…」
「だったら今週、相沢君誘ってどこか行きなさい」
「そ、それってデートしろってこと?」
香里は黙って頷く。
「む、む、無理だよ」
「無理じゃないわ」
「できないよー」
「できるわよ」
「うーーー」
わたしがうなっていると、香里が思いついたかのように手をポンと叩いた。
「どうしたの?」
「良いこと思いついたわ。ちょっと待っててね」
そう言って香里は教室の方に走っていってしまった。
なに考えてるのかな…?
気になるよー。
しばらくして香里が帰ってきた。
「なにしてきたの?」
「名雪。明日の日曜日、遊園地ね」
「えっ?」
突然の香里の言葉に一瞬あっけにとられてしまった。
「大丈夫よ。あたしと北川君も行くから」
「香里と北川君も来てくれるの?」
「なんか相沢君に言ったら、向こうも計画たててたらしくてね」
「そっか。じゃあ安心だね」
わたしは少しほっとした。
二人っきりじゃなくて良かった…。
でも二人っきりの方が良いのかな?
その日は1日中、明日のことを考えていた。
当然授業には集中できるわけもなく
家に帰ってからもそのことばかり考えていた…。
お風呂から上がってリビングでテレビを見ていると、祐一が話しかけてきた。
「明日、楽しみだな」
「えっ、うん、そうだね」
「なんだよ。楽しみじゃないみたいだな」
「そんなことないよ。楽しみだよ」
わたしはちょっと慌ててしまった。
「それにしても奇遇だよな。そっちもこういう計画たててたなんてさ」
「そうだねー」
確かに奇遇だな。
なんでだろう?
もしかして、これって運命?
なんてわたしが暴走していると、祐一はお風呂に入りに行ってしまった。
わたしも自分の部屋に戻る。
ベッドに飛びこんでまた明日のことを考える。
眠れない……。
眠れないよ…。
どうしよう…。
静かな夜…。
心臓の音と私が寝返りを打つ音だけが聞こえていた……。