ふあ〜…。
良く寝た…。
俺は勢い良く体を起こしてベッドから出る。
遊園地に行くために、寝巻きから私服に着替える。
さて…名雪はもう起きてんのかな?
俺は自分の部屋から出て、名雪の部屋の前に立った。
名雪の部屋の中からは、なんの音も聞こえない。
あいつ…。
もしかして寝てんのか?
「おい!早く起きろよな。待ち合わせ時間に間に合わないぞ」
俺は名雪の部屋に向かって叫んだ。
しばらくして凄い勢いで部屋から出てくる名雪…。
そしてケロットした表情で言う。
「おはよう祐一。さっ、走って行こう」
「…休みの日まで走ることになるとはな……」
あー…しんどい。
待ち合わせ場所である駅前に着くと、すでに北川と香里が来ていた。
「遅いぞ相沢」
「遅いわよ名雪」
「ごめん」
二人の声が重なる。
隣の名雪を見ると、また頬を紅潮させていた。
走ったからか…。
そんなことを考えていると北川が言った。
「さぁ、さっさと行こうぜ」
その一言で俺達は電車に乗りこんだ。
遊園地に着いた。
今日は日曜日ということもあり親子連れがたくさんいた。
「混んでるな」
「そうだな」
俺達はチケットを買って中に入った。
さーてどうすっかな。
俺がそんなことを考えてると、北川が寄ってきて小さな声で話しかけてきた。
「おい。一体どうするんだよ?」
「ああ。今それを考えてたところだ」
「そうか。まぁ…頼りにしてるからな」
「まかしとけって」
…とは言ったものの…。
特に考えは無かったりするんだよな…。
ふと遠くの方に目をやると観覧車が目に入った。
あれだ!
あれしかない!
「おい北川これなんて…」
俺が北川に今思いついたことを伝えようとすると、突然横から声がした。
「ねぇ、相沢君。二人でなにをこそこそしてるのよ」
香里だった。
今こいつらにこの計画がばれるのはまずいな。
「な、なんでもでーよ。なぁ、北川」
「おう。なんでもないぜ」
そう言って俺は香里を振りきった。
そして北川に観覧車のことを言う。
「良いなそれ!上手くやってくれよ!」
「わかってるよ」
そう言って俺らは内緒の作戦会議を終えた。
気が付けば日が落ちかけていた。
次に乗るので最後ということになった。
当然乗るのは観覧車。
そこで俺は名雪に言う。
これが作戦の一番大事なところ。
「名雪。俺と一緒に乗ろうぜ」
「えっ?」
少し戸惑いを見せる名雪。
「嫌だったら四人で乗るけど…」
「ううん。嫌じゃないよ。一緒に乗ろう祐一」
ふぅ…。
なんとかなったな。
あとは北川。
お前次第だぞ。
そうして俺と名雪、北川と香里の組み合わせで観覧車に乗りこんだ。
大丈夫かな北川…。
上手くやれよー。
そうでなきゃ俺の苦労が水の泡だぜ。
まぁ、そんなに苦労はしてないけど…。
そんなことを考えていて、名雪がしゃべりかけてきたことに、ぶっきらぼうに答えていてしまった。
あー…もっと近く寄れよ香里。
そう…。
良し…。
良い感じじゃないか。
とりあえず俺の役目は終わりかな。
帰り道。
北川と香里の方はなにやら二人で話していたから良かったのだが…。
名雪の元気が無い。
一言も口をきかないし…。
俺なんかしたかな…?
家に帰っても名雪は元気が無かった。
夕飯も食べずに自分の部屋に入ってしまった。
俺も夕飯を食べ終えて自分の部屋に戻る。
昨日とは違った悩みが俺の脳みそを揺さぶっていた。
名雪…。
心配だな…。
やっぱり原因は俺なのかな…?
んな馬鹿な話があるかよ。
だって俺は……。
俺は……。
俺は……?
俺は名雪のことを…?
その時一瞬俺の中を閃光が走った。
そしてなにかが届いた。
それはなんなのか…?
それを思い出すことが俺の使命なのか…。
すべてが未知なるものに見えて…。
開けてはいけない箱を開けたようで…。
とても変な感じがしたことだけは確かだった…。
俺はベッドに頭を突っ込んだ。
自分が壊れてしまいそうだったから……。
そして俺は黒の中に身をゆだねた…。