なんだかすっきりしない朝。
なにかが出かかってるのがわかる。
俺の頭の中でぐちゃぐちゃと…。
それは俺の封印されし過去の話…?
それは俺の名雪への隠されし想い…?
いつも通りの時間に家を出る。
でも俺の隣には誰もいない。
名雪は朝食も取らずに、さっさと出ていってしまったからだ。
学校に着く。
隣を見ると覇気の無い顔をした名雪がいる。
なんでだろう?
おかしいな?
原因は…たぶん俺なんだろうなぁ…。
休み時間になって、俺は香里に名雪のことを聞いてみた。
「なぁ…ちょっと名雪のことで聞きたいことがあるんだけど」
「あ…」
「なんであんなに元気無いのかわかるか?」
「相沢君……」
香里はキッと俺の顔を睨んだ。
「相沢君…鈍感すぎるわよ……」
「えっ…どういう意味だよ?」
「自分で考えなさい」
「……………」
自分で考えろって言われても……。
考えてもわからないから聞いたんだぜ……。
放課後になり、家に帰り、夕食を食べ、そして風呂に入って部屋に戻る。
いつも通りの生活。
ただいつもと違うところといったら…。
名雪と全然顔を合わせなかったってこと。
それが俺をおおいに悩ましてくれた。
駄目だ…。
わかんねー…。
なんか引っ掛かってるのは確かだ。
それがなんなのか………。
あーーーー!
もう駄目駄目!
考えたってわかんねーよ!
寝る!
もう俺は寝るぞ!
誰がなんと言おうと寝る!
俺は強引にそう決め付けると、目を力強く閉じた。
白い雪……。
真っ白な雪……。
雪で作られたうさぎ……。
「ほら、これって雪うさぎって言うんだよ」
「わたしが作ったんだよ」
「わたし、ヘタだから、時間がかかっちゃったけど…」
「一生懸命作ったんだよ」
「……」
「…あのね…祐一…」
「…これ…受け取ってもらえるかな…?」
「明日から、またしばらく会えなくなっちゃうけど…」
「でも、春になって、夏が来て…」
「秋が訪れて…またこの街に雪が降り始めたとき…」
「また、会いに来てくれるよね?」
「こんな物しか用意できなかったけど…」
「わたしから、祐一へのプレゼントだよ…」
「…受け取ってもらえるかな…」
「……」
「わたし…ずっと言えなかったけど…」
「祐一のこと…」
「ずっと…」
「好きだったよ」
薄明かりの中、目を開ける。
冷たい…。
涙…?
でも…わかった。
俺は…。
俺も…。
名雪のことが好きだ。
俺は目の回りの涙を拭った。
明日…謝ろう。
謝らなきゃ駄目だ…。
俺はまた目を閉じる。
一番鈍感だったのは……。
俺だったんだなぁ…。