目が覚めてすぐに体の異常に気が付く。
ぐす…。
ぐすぐす…。
あれ?
なんか鼻が変だよ。
喉も痛いし…。
気持ちも悪いし…。
もしかして…。
「39度3分よ」
「…そんなにあるの?」
「今日は学校休んで寝てなさい」
「えっ、やだ。今日は学校行かなきゃ駄目なんだよ」
わたしは昨日の決心がゆるみそうで心配だった。
「駄目よ。今日は寝てなさい」
「……でも…」
「駄目」
「……わかったよ…」
わたしはそう言って布団にもぐりこんだ。
言葉では強がっていても、やはり体はだるかった。
だからすぐに眠りの中へと落ちていった。
(名雪…ごめんな…)
あったかいな…。
手…。
あったかいよ…。
わたしが目を覚ますと、祐一がわたしの手を握っていた。
「ゆ、祐一!?」
少し慌てるわたし。
「目…覚めたか」
「うん…」
祐一は少し黙ったあと、口を開いた。
「ごめん」
「えっ?」
「俺…最低な男だったみたいだ。名雪の気持ちにも気付いてあげられなかったし、自分の気持ちにも気が付かなかった…。ほんとに…馬鹿だよな…」
「祐一…」
そして、わたしも自分の胸のうちを言う。
「祐一、わたしね…祐一のこと、今でも好きだよ」
「最近なんだよ。ほんとに最近」
「祐一のことまだ好きなんだなって気が付いたのって…」
「7年前のことにこだわってるわけじゃないよ」
「わたしは…今、祐一のことが好きなんだよ」
「身近すぎてわからなかったのかもしれないね」
「自分の気持ちをわざと隠してたのかもしれないね」
「でもね…」
「わかったんだ…」
「わたしが求めていたものは…」
「その大きな手で…」
「その聞きなれた声で…」
「その見慣れた笑顔で…」
「別に多くを望むつもりはないんだ」
「わたしが祐一のことを愛したいだけだから」
「それだけでわたしは幸せだから」
「時間がどんなに流れても…ね」
「わたしは祐一を愛していけるよ」
「祐一がここにいる…」
「それだけでわたしは幸せだから」
急に祐一がわたしを抱きしめた。
「俺も…名雪が側にいるだけで幸せだよ」
わたしの目から冷たいものが流れていた…。
嬉しい時に流れるものだね。
「また…雪うさぎ作って良いかな?」
その問いかけに祐一は短く答える。
「ああ」
時の流れには、なにも望みはしない。
ただ、わたしがここにいて、祐一がそこにいる。
その事実だけを望みたかった。
わたしの望みは………。
祐一の側にいること……。
新しい未来への一歩を、踏みだしたわたし達…。
ずっと一緒に歩こうね、祐一。