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アホトラQ 「エンペリアル編」

      1〜6話         11〜14話         15〜17話


アホトラQ 第2部 「麻理亜の鐘 編」 

1〜3話     4〜6話     7話  


*アホトラQ 「エンペリアル編」 7〜10話 


第7話「旧式機対巨怪人」 
地球を離れること十数光年・モンストロ星に築かれた、宇宙の犯罪組織「エンペリアル」の
基地では、人工ワームホールを使って巨怪人コージー貴を地球へ送り出す準備が整え
られていた。体ががっしりしていて、張り手を武器にする怪人である。コントロール室では
リーダーのバートと幹部のナベネツがその様子を見ていた。
ナベネツ「このコージー貴で地球人の造った施設を無作為に次々と破壊し尽くし、我々の
      恐ろしさを地球人に思い知らせてやります」
バート「うむ、期待しているぞ」

その頃、森次隊員と高峰隊員は数名の防衛隊の職員と共に装甲トラック「コオロギ」で
E市にある「アルコール動力事業団」へ向かっていた。E市の中心街を抜け、郊外へ出ると、
一面に畑が広がっていた。穀物を中心に、どの畑でも作物が実り、あるいは育てられていた。
高峰「事業団まではあとどのくらいなんですか?」
森次「もう来ているよ。この畑が事業団の大事な『原料工場』なんだ」
高峰「原料工場??」
森次「アルコール動力事業団では植物を使って大量の燃料用アルコールを生産しているんだ」
ほどなく、コオロギは事業団の建物に到着した。責任者であり、所長の高久と5,6名の
所員が森次達を出迎えた。
森次「所長、頑張ってますね」
高久「いや、まだまだだ。アルコールが自動車や発電の燃料として広く認知されるまで
   頑張らなければ」
高峰「でも、なぜアルコールなんです?」
高久「元々、アルコールエンジンは排気ガス中の有害成分が少ない。それに、石油を使う事
   自体が炭酸ガスばかりを増やし、地球温暖化を促進させるから、石油に頼っては
   いられない」
森次「ここでは『燃焼式』といって、あるガスを送りながら植物を燃やし、多くのメタノール、
   つまり燃料用アルコールを造っている。この方法では乾かして燃える植物なら
   メタノールの原料になる。そして、原料用の植物は育つときに炭酸ガスを取り込む為、
   メタノールを燃料に使っても差し引きゼロで炭酸ガスの増加を防ぐ事ができる。」
高峰「さっきの畑の作物も、メタノールの原料なんですね」
森次「ところで、我々に試して欲しい乗り物を造られたということですが・・・」
高久「うん、こっちに来てくれたまえ」
森次達は建物の外へ案内された。ヘリポート用にアスファルトが敷かれ、そこに小型の
飛行機があった。
高久「ここで作った試作機・ジャイロビートルだ」
高峰「ジャイロ?それじゃ、プロペラ機なんですか?」
そのとおりだった。小型の機体の両側に大き目の翼が付き、その翼にはプロペラが
はめ込まれていた。機体後部にもプロペラが見える。
高峰「この現代にプロペラ機とは、時代遅れですよ。用途が無いでしょ」
森次「いや、我々の仕事は戦う事ばかりではない。探査や偵察には使えると思う」
高久「それに主翼の向きを変えることで垂直離着陸が可能、小型だから学校やデパートの
   屋上にも降りる事ができ、連絡用としても使えるぞ。最大の特徴は・・・」
森次「アルコールエンジンで飛ぶ、ということですね」
高久「そうだ、飛ぶだけの力を出すまでに苦労したぞ」
森次は防衛隊の職員達に言った。
森次「トラックに積んできた小火器をジャイロビートルに取り付けてくれ。取り付け終わったら
   試験飛行をする」
森次達が試験飛行の準備をしているその時、大音響が響き、事業団の建物から500メートル
程離れたところに光の柱が降り立った。そして、その柱の中から巨怪人コージー貴が姿を
現した。
森次「巨怪人!エンペリアルだ!!」
高峰「でも、何でここへ?」
森次「わからん・・・だが、大切な事は奴はこの施設を襲おうとしている事、そして我々はそれを
   阻止しなければならないと言うことだ・・・おい、ジャイロの用意は済んだのか!」
職員1「はい、済みました。でも、まさか・・・」
高峰「無茶です、プロペラ機で怪獣と戦おうだなんて。勝てるわけありません」
森次「時間稼ぎくらいはできるだろう。高峰隊員は本部へ連絡して応援を頼んでくれ」
森次はジャイロビートルに乗り込み、エンジンを始動させた。キュィィィィン・・・とプロペラが
回り、ジャイロは垂直に飛び上がった。そしてコージー貴へと向かっていった。
コージー貴は近づいてくるジャイロを叩き落そうと右腕を上げ、思いきり振り下ろした。
が、空振りし、勢いあまって前方に倒れこんだ。ジャイロがジェット機には不可能な
半径5メートルの弧を描いて急旋回した為である。
起き上がったコージー貴に、ジャイロは再び接近した。ジャイロを叩こうとコージー貴は両腕を
振り回すが、ジャイロは小回りを利かせてコージー貴の死角へ死角へと回りこみ、かすること
すらできない。薮蚊にまとわりつかれた幼児のごとく、コージー貴は翻弄された。
高峰「森次さん、すげえ!プロペラ機でここまでできるなんて・・・」
突然、ジャイロの後部から煙が−−いや、霧のようなものが噴出された。ジャイロはそのまま
コージー貴の頭の周りで旋回した。
高峰「なんです?あの霧みたいなのは?」
高久「燃料用アルコールとはメタノールだけではない。ここではエタノールも作っているんだ。
   ジャイロにも積んである」
高峰「エタノールって・・・酒の成分!?」
エタノールの霧を吸い込んで、コージー貴の顔は見る見る赤くなり、足もふらついてきた。
そしてついにドドッと倒れ、大いびきをかいて爆睡してしまった。
その時、ジェット音と共に連絡を受けたガードビートルが到着した。
黒部「森次隊員、やったな」
黒部隊長は酔っ払って寝ている巨怪人と無傷で飛ぶガードビートルを、笑みを浮かべて
見つめた。
(植物からメタノールを作り、それを自動車や発電に使う技術は現実に長崎総合科学大学で
 研究されています。ただし、それで飛行機まで飛ばすというのは「ウソ」です、悪しからず・・)
(第7話・終)


第8話「エツ湖の聖獣・その1」 
ある晩、山の手の子練郡という所に巨大な隕石が落下した。その隕石からは強い生体反応が
発せられていた。調査のため、黒部隊長と高峰隊員はガードビートルで、森次隊員と団隊員は
装甲トラック・コオロギで子練郡へと出動した。
黒部「隕石はここから北の山中に落ちているらしい。あと15分ほどで着くぞ」
高峰「隊長、森次隊員から連絡が入っています」
黒部は通信機を取った。
森次「隊長、隊長から見て北に隕石はあるんですね?」
黒部「そうだ。それがどうした?」
森次「西側からも強い生体反応が検知されています」
黒部「なんだと?怪獣は二体いるということか?」
団 「どうします?」
黒部「二手に分かれよう。我々は隕石の調査に向かう。森次隊員達は西の方へ行ってくれ」
こうして防衛隊の四人は二手に分かれた。
森次「この先には何があるんだ?」
団 「地図によると、エツ湖という湖があります」
コオロギがエツ湖に向かっていると、数十メートル先に人影が見えた。小学生くらいの子供が
6人、道をふさぐ様に横一列に並んでいる。コオロギが近づいても動こうという気配が無い。
森次はコオロギの速度を落としながら、子供達に近づいていき、子供達の数メートル先で
止めて車を降りた。
森次「君達、危ないじゃないか」
すると、子供達の一人が言い返した。
少女「おじさん達、聖獣をいじめに来たんでしょ」
森次「聖獣?どこにいるんだい?」
少女「エツ湖に住んでいるんだよ。子練郡の守り神なんだよ」
森次「君達はその聖獣を見たことがあるのかい?」
少女「みんな友達だよ。いっしょに踊ったりして、遊ぶんだよ」
森次「悪い怪獣ではなさそうだな。安心してくれよ。我々は悪い怪獣を倒すのが仕事で、
   みんなの友達なら傷つけるような事はしないよ。ただ、よかったらその聖獣に
   会わせてくれるかな」
子供達はどうするかを話し合っていたが、少しして少女が森次に言った。
少女「いいよ、案内する」
森次「わかった、みんなトラックに乗ってくれ。ところで君の名前は?」
少女「ひとみだよ。濱田ひとみ」

それから10分後黒部隊長達は山中の隕石に到着し、調査をはじめていた。
ガードビートルを隕石の上空に停止させ、カメラアイを降ろして、まず外観を調べる。
黒部「これは・・・隕石じゃない、カプセルだ」
高峰「カプセル?」
黒部「表面は金属をつないで造ってある。しかも、この輝きは地球の金属ではないかも・・・」
高峰「宇宙金属?」
二人がなおも調査を続けていると、不意に隕石、いやカプセルが動き始めた。表面にひびが
入り、内側から打ち破られ、中から全身が大きなとげに覆われた大トカゲ型の剛獣・バラノ
ザウルスが出現した。
黒部「やはりエンペリアルの仕業か・・・」
高峰「隊長、怪獣は子練村の方へ行きます」
黒部「村の住人に避難するよう、連絡してくれ。我々は怪獣を止めるんだ」

そのころ、森次達はエツ湖に到着していた。
森次「ひとみちゃん、この湖の中に聖獣はいるのかい?」
ひとみ「うん、歌を歌うと出てきてくれるんだよ」
森次「どんな歌だい?」
子供達は湖の前に横一列に並び、声をそろえて歌い始めた。
子供達「エーツ湖エツ湖 エツ湖はこわい エーツ湖エツ湖 エツ湖はこわい・・・・・・」
子供達が歌を歌いつづけると、突然湖の水面に裂け目ができた。そして、湖の水が左右に
分かれ、そこから全身茶色の毛に覆われた巨猿が姿を現した。
団 「こ、これはまさか、キングコング!?」
森次「いや、ちがうぞ、体型は5頭身だし、右手にはハリセンを持っている。なぜか
   踊っているし、あの顔はキングコングというより、ハナマルキみそのCMに出ていた
   山口こ○みにそっくりだ」
団 「ひとみちゃん、あの聖獣はなんていうんだい?」
ひとみ「名前?『こんこんぐ』っていうんだよ」
森次と団はコケた。
(第8話・終)


第9話「エツ湖の聖獣・その2」 
エンペリアルが地球に送り込んだ剛獣バラノザウルスが子練村に迫りつつあった。
村では住民達の避難が行われていたが、剛獣の進む速度が予想外に速く、完全な避難は
無理に思われた。そして、上空にはバラノザウルスを追うガードビートルの姿があった
黒部「ビーム(光線)を打ち込んで怪獣の動きを止めるんだ。ビーム発射用意!」
ガードビートルの下部が開き、発射装置が姿を現した。
黒部「ビーム発射!」
発射装置から、綺麗な色のガラス玉が大量に打ち出され、バラノザウルスにパラパラと
当たった。
黒部「おい!あれは『ビーダマ』だろ!私の言っているのは『ビーム』だぞ!」
高峰「今度は大丈夫です。発射します!」
発射装置から、今度は茶色の液体がバラノザウルスめがけて勢いよく噴射された。
黒部「こら!あれは『ビール』だろ!私が言っているのは『ビーム』だぞ!」
高峰「了解、次こそ大丈夫、発射します!」
発射装置から、今度は大きくて軽そうなボールが飛び出した。
黒部「あ、あれは『ビーチ』ボールだー!!!」
この会話を聞いていたバラノザウルスはあまりの寒さと馬鹿馬鹿しさのために凍りついた・・・
かに見えた。だが、しばらくするとバラノザウルスの口から熱光線が発射され、その熱で
自らの体を覆う氷を溶かすと、バラノザウルスは再び進撃を開始した。
黒部「我々にはあの怪獣は止められないのか・・・おや?あれはなんだ?」
黒部の目に入ったのはバラノザウルスめがけて走ってくる、全身を茶色の毛で覆われた
一頭の巨猿・こんこんぐだった。そのとき、森次隊員から連絡が入った。
森次「隊長、あの巨猿は敵ではありません。エンペリアルの怪獣を食止めに来たんです。
   攻撃しないで下さい」
その森次達も、装甲トラック「コオロギ」でバラノザウルスの姿が見えるところまで来ていた。
こんこんぐはバラノザウルスのすぐ近くまで来ると、右手に持ったハリセンで一撃を加える
・・・・・・ことはせず、バラノザウルスの前で踊り始めた。
森次「ひとみちゃん、なんでこんこんぐは踊っているんだい?」
ひとみ「あのね、こんこんぐは踊るのがとっても大好きなのね」
森次「でも、こんなときに踊らなくても・・・」
バラノザウルスははじめは踊るこんこんぐを呆然と眺めていたが、馬鹿にされていると
思ったのか、急に怒ったような表情になり、口から熱光線を吐いた。光線はこんこんぐの
周囲で爆音をあげて炸裂した。すると、今度はこんこんぐが怒ったような表情を見せた。
そして両腕を顔の前で交差させ、何か気合いの様な声を発した。次の瞬間、こんこんぐの
体の色が変わった。
団「こんこんぐの色が・・・青く・・・なった?」
バラノザウルスは今度はこんこんぐの顔めがけて熱光線を発射した。だが、こんこんぐには
当たらなかった。こんこんぐが一瞬のうちに50メートルほど右へ移動してしまったからである。
団「瞬間移動?ひとみちゃん、これはどういうことなんだい?」
ひとみ「えっとね、青いこんこんぐは超能力聖獣なんだよ」
森次「ちょっと待て!それは『ウルトラマンダイナ』の盗作じゃないのか?」
バラノザウルスはなおも光線を乱射した。だが、こんこんぐはそのすべてを瞬間移動で
かわしてしまった。とうとうバラノザウルスは光線を吐くのをやめてしまった。吐き疲れたのだ。
するとこんこんぐはまた顔の前で腕を交差させ、気合いを発した。こんこんぐの色が
また変わった。
団「こんこんぐが・・・今度は赤くなった・・・」
こんこんぐはバラノザウルスに、今度は正面から近づいていった。光線を吐き疲れたとはいえ、
バラノザウルスにもまだ余力はあった。大きな爪の付いた前足を振り上げ、こんこんぐを
叩こうとした。だが、こんこんぐはその前足を片手で受け止めると、そのまま片手で
バラノザウルスを軽々と持ち上げ、放り投げた。
団「すごい怪力だ・・・・・・」
ひとみ「あのね、赤いこんこんぐは力の聖獣なんだよ」
森次「もう、なんでも勝手にやってくれ・・・・・・」
こんこんぐの攻勢は続いた。こんこんぐがバラノザウルスにタックルをすると、バラノザウルスは
大きく吹っ飛んだ。なおも起きあがろうとするバラノザウルス。が、こんこんぐはジャンプを
すると、バラノザウルスの頭にハリセンで一撃を加えた。この一撃でバラノザウルスは失神し、
倒れてしまった。

子供達「ありがとう、こんこんぐ!」
戦いを終えたこんこんぐは子供達のお礼の声援を受けながら、勝利の舞いを1時間ほど
踊りまくり、そしてエツ湖へと帰って行った。
団「地球にも、まだまだ謎が隠れているという事ですね・・・」
森次「いや、地球にも、まだまだ阿呆が隠れているという事だ・・・」
防衛隊のメンバー達は、馬鹿馬鹿しさと感謝の気持ちが入り混じった複雑な思いで
エツ湖の方角を見やるのだった。

*この話しはフィクションであり、実在の人物に関係および悪意はありません。
(第9話・終)


第10話「防衛隊基地爆破計画」 
 その晩は月の出ていない,暗い夜だった。数人の男達が林の中を駆け抜けていった。
地球防衛隊の基地は街をいくらか離れた郊外にある。男達はその防衛隊の基地を目指して
いたのだった。男達の正体,それは「エンペリアル」の幹部ヒットと、部下1・部下2・部下3
だった。
 ヒット達は林の中にあるイデ池の近くまで来ると小休止のため立ち止まった。
ヒット「部下どもよ!これから我々の作戦をことごとく邪魔する、地球防衛隊の奴らを基地ごと
   吹っ飛ばす!この夜の闇を利用して防衛対の基地に忍び込み,爆弾を仕掛けるのだ。
   我々が怪獣を使った大規模な作戦しか行わない、と奴らは考えているに違いない。
   その裏をかくのだ!題して『地球防衛隊の屑共を爆弾でやっつける作戦』だ!」
部下1「でもヒット様,我々は爆弾を渡されていませんが」
ヒット「地球人どもの造ったちゃちな基地など,一個の爆弾で十分だ。ここにその爆弾がある。」
ヒットは直径30センチ、幅5センチほどの、外装が鉄製の円盤状の物を取り出した。
部下2「こんなもので大丈夫なんですか?」
ヒット「小さいようで威力は絶大だ。1キロ四方の建物を破壊し尽くすことができる。
   何しろこの爆弾はだな・・・」
ヒットがさらに爆弾の説明をしようとしたとき,手が滑って爆弾が下に落ちた。起爆装置が
まだONになっていないため,暴発の心配は無かったが、円盤状のため、イデ池に向かって
転がり始めた。
ヒット「いかん!誰か,爆弾を止めろ!池に落ちるぞ!」
部下達が追いかけたが、間に合わず爆弾はイデ池に落ちてしまった。
ヒット「なんという事だ・・・・・・これでは防衛隊の基地を爆破できん・・・どうすればいいんだ」
ヒット達が途方にくれていると,イデ池からブクブクブクッという音がして,池の水面に
一人の男が姿を現した。左手には鉄の円盤,つまりヒット達の爆弾を持ち,右の手のひらには
金と銀の円盤を乗せている。驚いてヒットは男に尋ねた。
ヒット「お,お前はいったい誰だ!」
男は答えた。
男  「私はイデ池の精です。あなたが落としたのはこの金の円盤ですか?それとも銀の円盤
   ですか?」
ヒット「いや、どちらでもない。俺が落としたのは鉄の円盤だ」
男  「あなたは正直な人だ。ご褒美にこちらの高級ビールとご馳走を差し上げましょう」
池の精が指差す方を見ると,いつのまにか半ダースのビールと牛肉のステーキが何十枚も
並べられた大きな皿が現れていた。ヒットは酒に目が無い男だった。部下達と共に
ステーキを食べながらビールを飲んでドンチャン騒ぎを行い,いつしか3時間が経過していた。
突然,ヒットはハッとした。
ヒット「いかん,我々は任務の途中なのだ。部下共、行くぞ!」
再びヒット達は防衛隊の基地を目指して進み始めた。林の中のムラマツ池の近くに来た
ところで部下3がヒットに尋ねた。
部下3「ヒット様,この爆弾は防衛隊の基地に投げ込むんですか?」
ヒット「ばか者!奴らの基地に忍び込んで仕掛けると言ったろうが!この爆弾の裏側に
   電磁石がついていて、起爆装置を入れると張り付く仕組みだ。見せてやろう・・・アッ!」
爆弾を裏返そうとした拍子に手が滑り,爆弾は再び落ちてムラマツ池に向かって転がり
始めた。もちろんヒット達はその後を追った。爆弾は転がる途中で岩に当たり,ポーンと大きく
上に跳んだ。そこへリスが現れ,その後から野犬が現れた。リスは野犬に追われて逃げて
いるのだ。と、野犬の頭の上に爆弾がゴーンと落ち,野犬は失神してしまった。地面に落ちた
爆弾は再び転がり、ムラマツ池に落ちてしまった。
ヒット「なんという事だ・・・これでは防衛隊の基地を爆破できん・・・どうすればいいんだ」
ヒット達が途方にくれていると,ムラマツ池からブクブクブクッと音がして,池の水面に
一人の男が姿を現した。手にはヒット達の爆弾を持っている。ヒットは男に尋ねた。
ヒット「お前はいったい誰だ!」
男2 「わしはムラマツ池の精じゃ。この円盤はお前達のものか?」
ヒット「俺達の物なら、どうだというんだ」
男2 「わしのペットのリスをよく助けてくれた。お礼に高級シャンパンとご馳走を差し上げよう」
池の精が指差す方を見ると,何時の間にか半ダースのシャンパンとローストチキンが山盛りに
乗せられた大皿が現れていた。ヒットは酒に目の無い男だった。部下達と共に
ローストチキンを食べながらシャンパンを飲んでドンチャン騒ぎを行い,いつしか3時間が経過
していた。

突然、ヒットはハッとした。
ヒット「いかん、我々は任務の途中なのだ。部下共、行くぞ!」
ヒット達はまた防衛隊の基地を目指して進み始めた。林の中のアラシ池の近くに来たところで
部下1がヒットに尋ねた。
部下1「ヒット様,防衛隊の基地にも警備システムがあると思いますが,どう対処する計画
    なのですか?」
ヒット「ばか者!レベルの低い地球人どもの警備システムなど,赤外線透視メガネさえあれば
   十分だ。ここにあるメガネをつければ監視装置に使われている赤外線もはっきりと
   わかり、避けて進む事は簡単な事だ。今、見せてやるぞ・・・アッ!」
懐からメガネを出そうとした拍子にヒットの手から爆弾が滑り落ち,アラシ池に向かって転がり
始めた。爆弾は今度は池の手前で岩に当たってポーンと飛び上がり、池の中ほどにある
小さな岩に当たって池の中へ落ちてしまった。
すると、ブクブクブクッと音がして,池の水面に一人の男が姿を現した。左手にはヒット達の
爆弾を持ち,右手には片手で振る事のできるベルを持っている。男はそのベルを
カランカランッと音をさせて振ると「おめでとうございます!」と言った。
今度はヒットも驚かなかった。
ヒット「お前はこの池の精か」
男3 「そうです。あなたはこの池の大当たり岩に見事にこの円盤を命中させました。
   景品としてこちらの高級ワインとご馳走を差し上げましょう!」
池の精が指差す方を見ると,半ダースのワインとマグロの刺身が並べられた大きな皿が
現れていた。ヒットは酒に目が無い男だった。部下達と共にマグロの刺身を食べながら
ワインを飲み,三たびドンチャン騒ぎを始めた。

部下1「ヒット様,起きてください!」
部下1の声でヒットが目を覚ましたとき,とっくに夜は明けていた。立ちあがろうとするが,
飲み過ぎと食い過ぎで頭はがんがん痛み,腹ももたれて気分は最悪だった。部下達も,
部下1がかろうじて立っていられるが、部下2・部下3は頭を抱えてウンウン唸っている。
ヒット「これでは作戦の続行は無理だ。仕方が無い,引き上げるぞ!」
部下1「でもヒット様,バート様にはなんと報告すればいいので?」
ヒット「地球人の警備システムが予想外に強力で,作戦を断念した,と言うのだ」
部下1「あの・・・宴会のやり過ぎではないのですか?」
ヒット「ばか者!俺を失脚させるつもりか!この優れた人種である俺が作戦中に宴会など
   するわけ無いではないか!いいか、余計な事はしゃべるな!」
部下1「はあ・・・・・・」
釈然としないまま,部下1は口を閉ざした。
かくして、エンペリアルの「地球防衛隊の屑共を爆弾でやっつける作戦」は、地球人に
作戦の存在自体を知られぬまま,中止されたのだった。
(第10話・終)