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アホトラQ 「エンペリアル編」
1〜6話 7〜10話 11〜14話 15〜17話
アホトラQ 第2部 「麻理亜の鐘 編」
1〜3話 7話
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防衛隊は、アンラッキー・エアメイルを同乗して装甲車「ケラット」でF県の田岡村へ向かっていた。
数日前から田岡村の近くの小砂山の中で大きな怪音が響き、強いエネルギー反応が
感知されるという現象が見られたからだ。
高峰「今度の事件、もしかして敵や麻理亜の鐘と関係があるんでしょうか?」
黒部「あるかもしれないし、ないかもしれん。どちらにせよ、原因をはっきりさせるのが我々の役目だ」
高峰「でも、麻理亜の鐘が小砂山にある可能性もあるんでしょ。アン、見つかるといいね」
アン「うん!」
アンがうなづいた。
ケラットが小砂山に入って10分ほど経ったときだった。キョォォォ!キョォォォォォ!という音が響いた。
森次「例の音だ。行って見よう」
音のする方へ車を走らせると、がけのところで道が途切れた。がけの向こうの森から音が
聞こえてくる。
黒部「よし、ホバーを使おう」
ケラットにはホバー機能が付いており,短時間なら飛行が可能なのだ。
ケラットは下部から空気を噴出して宙に浮き,目指す森へと飛び、森の中へ着地した。
キョォォォォ!という例の音が、今ははっきりと聞こえる。
車を降りた黒部達がさらに進んで行くと、そこにいたのは身長10数メートルの、輝くトサカを持った
怪鳥だった。
黒部「こいつが怪音の正体か・・・他の地域にも現れたことがある。怪鳥アルバトンだ」
高峰「エネルギー反応もこいつですか」
黒部「アルバトンは、怒るとトサカから強力な光線を出す。蓄えられているエネルギーが反応したんだ」
そこへ、突然声が響いた。
声 「おじさん達、出てって!」
黒部達が振り返ると、八歳くらいのオーバーオールを着た少女がいた。乳母車に野菜やとうもろこしを
たくさん載せ,ここまで押してきた様だった。
少女「この鳥さん,ケガをしとるのや。いじめたらあかん!」
森次「お嬢ちゃん、我々は悪い怪獣でなければ攻撃しない。けがをしている怪獣をいじめたりしないよ」
団 「そうだ、怪獣用の薬もあるから,分けてあげよう」
少女「本当?薬,くれるの?」
黒部「うん、一緒に手当てをしよう。ところで、君の名は?」
少女「『ユウカ』いうねん」
ユウカの話によると、アルバトンは1週間前にけがをしてこの森に降り立った。たまたま森の奥まで
木の実を取りに来ていたユウカとその父親がそれを見つけたが、苦しんでいるアルバトンを
かわいそうに思い、ひそかに手当てをしていたのだ。他の人々に知らせなかったのは,安易に怪獣の
存在を知らせたら,攻撃されるだろう,と考えたからだった。
黒部達はユウカと一緒にアルバトンの世話をした。
団 「ユウカちゃん、この怪獣,恐くなかったのかい?」
ユウカ「はじめて見たときはこわかった。けどな、痛がっているのを見ているうちにほっておけなく
なったんや」
森次「いい子だな・・・君は」
高峰「隊長,大分良くなってますよ。これならもう2日くらいで飛べますよ」
ユウカ「また飛べるの?よかった」
黒部「ユウカちゃん達の世話が良かったんだよ」
そのとき、怪音とともに青白い光の柱が黒部達のいる森に降りたった。光の柱が消えたとき,
姿を現したのは半魚人・キシダ兵達と犬の顔をした男ポルチス、そしてもう一人の魔物だった。
もう一人の魔物は,細身だが身長が2メートルくらいの青鬼だった。般若のような顔をし、頭に2本の
角を生やし,口には牙が光り,プロテクターを身に着け武器となる杖を右手に持っていた。
アン「あいつは・・・」
森次「アン,知っているのか?」
アンの代わりに青鬼本人が答えた。
アフオーカー「我は,東界大帝様の部下でこの世界での司令官、オムアイワ・アフオーカー様だ」
団「・・・『お前はアホか』それがお前の名前か」
アフオーカー「『お前はアホか』ではない!オムアイワ・アフオーカー様だ!!」
団 「やはり『お前はアホか』だ」
高峰「お〜ま〜え〜は〜あ〜ほ〜か〜」
アフオーカー「お、おのれ、どこまでもコケにするか!」
アフオーカーの目が怒りに燃え,アフオーカーの体からも怒りの熱い熱気が発せられる。すかさず
キシダ兵が芋を刺した棒を差し出すと、あっという間に焼き芋ができた。
キシダ兵1「アフオーカー様、次は焼きそばを作りましょう」
アフオーカー「馬鹿者〜!!」
アフオーカーのアッパーカットをくらってキシダ兵が宙を舞った。
そんな漫才をやっているアフオーカーを無視して黒部はポルチスに尋ねた。
黒部「お前達も、エネルギー反応を麻理亜の鐘と思ってきたのか」
ポルチス「そんなところだ。だが、無駄足では無かった。この怪獣の蓄えたエネルギー、我々の物に
させてもらう!」
ポルチスが指をパチンと鳴らすとキシダ兵の一人が大型の銃のようなメカを構え、撃った。
先に吸盤のような物が付いたチューブが伸び、アルバトンの体に張り付いた。そして、キシダ兵が
メカのスイッチを入れるとチューブが光りだし,アルバトンが苦しみ始めた。エネルギーを
奪われているのだ
黒部「やめろ!おい、みんなで止めるんだ!」
ポルチス「そうはいかんぞ、現れよ、妖械人!」
黒部達の前に,黒い影が立ちはだかった。畳に筋肉の塊のような太い手足とシュワルツネッガーに
似た顔の付いた妖械人だった。
ポルチス「妖械人タタミネーター、奴らを叩きのめせ!」
森次「・・・隊長,我々はもしかしてとんでもないアホを相手にしているのではないでしょうか・・・」
黒部「・・・お前もそう思うか・・・」
タタミネーターは太い右腕をブンブン振り回して黒部達に迫ってくる。アンは黒部に向かって言った。
アン「妖械人は私が相手をするから、隊長さん達はあの怪鳥を助けてね」
アンはタタミネーターに真正面から突っかかっていった。タタミネーターは右腕で近づくアンを叩こうと
するが、アンはその右腕を受け止め、そのままタタミネーターを持ち上げ放り投げた。
森次「よし、我々も行くぞ!」
防衛隊の面々は、アルバトンを救うため、キシダ兵の群れにかかって行こうとした。
アフオーカー「邪魔はさせんぞ!」
アフオーカーが手にした杖の先から放電光線が飛び,黒部達を足止めさせる。
一方で「キョオオオオ!」とアルバトンの苦しむ声が響き,
ユウカ 「やめて!鳥さんをいじめないで!」
と、今にも泣きそうな顔でユウカが叫ぶ。
タタミネーターと戦っていたアンは状況を察し、両手を胸の前で交差させた。
アン「一気に決めさせてもらうよ・・・・・・風よ,全てを朽ち果てさせたまえ、メルトモンスーン!」
アンは息を大きく吸い,そして口から青白い気流をタタミネーターに吹きつけた。タタミネーターの
体が見る見る赤錆だらけとなり,動きも一気に鈍くなる。
唾液も消化酵素の一種であり,デンプンを糖に変えるなど、物を化学変化させる力がある。
アンは魔力を込めることで唾液に強力な酸化能力を与えて息に混ぜ,吹きつけているのだ。
タタミネーターはさらに腐食し,全身ポロポロになってまともに動けなくなってしまった。
(ここでクイズ・元ネタはなんでしょう?)
タタミネーターを戦闘不能にしたアンはすぐさまアフオーカーに向かって行く。
アン「ショットウインド!」
光弾がアンの右手から飛ぶ。が、アフオーカーは杖で光弾を簡単に払いのけた。
アフオーカー「そんなものが我に通じるか!これをくらえ!」
アフオーカーの杖から放電光線が発射され,アンは吹っ飛ばされて地面に叩きつけられる。
アン「いたたた・・・よーし、それなら、アタックウインド!」
アンの右の手袋がはずれ、アフオーカーめがけて勢いよく飛ぶ。だが、これもアフオーカーは杖で
難なくはじき返す。
アフオーカー「ワッハハハハハハ・・・・・・アンラッキー・エアメイル,お前の力など我に効くものか!」
森次「それじゃ、これは?」
いつの間にか中型の銃を手にしていた森次隊員が,アフオーカーの前に出ると銃を撃った。
アフオーカー「ワハハハハハ・・・・・人間ごときの武器などどうということも・・・・・・・・
な、なんだ、このネバネバしたものは!?」
森次の銃から撃ち出されたのは納豆だった。納豆は次々とアフオーカーの顔に,体にへばり付き,
アフオーカーはあっという間に納豆まみれになった。
森次「鬼退治は豆にかぎる。鬼は外、福は内,ってね」
アフオーカー「こ、これはたまらん、我慢できん!ポルチス,退却するぞ!」
ポルチス「しかし、あの怪獣からもっとエネルギーを奪わないと・・・」
アフオーカー「我の言うことが聞けないのか,バカ者!退却と言ったら退却だ!」
ポルチス達はアフオーカーの周囲に集まり、アルバトンのエネルギーを奪っていたキシダ兵も作業を
中断して駆け寄った。そして、彼らは青白い光に包まれその姿を消した。
アン「森次さん,ありがとう」
森次「礼には及ばんよ。それより、アルバトンは無事か?」
アルバトンはエネルギーをかなり奪われていたが,黒部達は栄養剤を与えるなど手当てを施し,
2時間後には快方に向かった。
黒部「もう大丈夫だ。数日後には飛びたてるだろう」
ユウカ 「本当?この鳥さん、また飛べるんやね,よかった」
森次「我々が見守っているから、ユウカちゃんは家に帰っていいよ」
ユウカ 「うん・・・おねえちゃんとおじさん達ならまかせられるよ。お願いね」
ユウカは笑顔を黒部達に向けて去って行った。
団 「いい子だな」
アン「ああいう子がこの世界にもいるんだね。だから人間界を守る張り合いがあるんだよ」
黒部「よし、戦っていこう,守りたいものを守るために」
アルバトンが全快し,小砂山を飛びたったのはそれから2日後のことだった。
(第4話・終)
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とある山中に、アフオーカー達は一つの基地を造っていた。その中で,ある妖械人が改造を
加えられていた。
ポルチス「この『鐘探知機』を組み込めば、出動準備は完了だ」
そう言って犬の顔をした魔界の科学者ポルチスは目の前の妖械人の胸部の内側に、
横10センチ、縦・高さ5センチの小箱を取り付け,胸の外装を閉じた。
ポルチス「よし、これで麻理亜の鐘は我々の物だ。妖械人、キシダ兵、行くぞ!」
ポルチス達は、「麻理亜の鐘」探しに本腰をいれたのだった。
妖械人が組み込まれた探知機の示すままに街中を進み,ポルチスと数人の半魚人・キシダ兵が
その後に続く。全員、上は長めのコート、下はズボンを着用し,大きなつば付き帽子をかぶり
サングラスをかけ、手袋をはめている。人間でないことを見破られないための変装だった。
もっとも、本人達は完璧な変装のつもりだったが、街ですれちがう人々には、怪しい集団にしか
見えず,いつしか行動を遠巻きに監視されていた。
妖械人が急に足早になった。
妖械人「こちらです、もうすぐです」
ポルチス「おお、見つけたか!」
ポルチス達が角を曲がると、そこはある外食店だった。妖械人が指差したのは,その店の看板だった。
ポルチス「あれは『かね』ではなく『カニ』だ!」
その店は「かに道楽」だった。
そのころ、防衛隊の基地の中ではアンが自分の世界から持ってきた道具の手入れをしていた。
いくつかのキーホルダーや直径3cmほどの円盤など,まとめれば一つのポケットに入るくらいの
物だった。
森次「魔具だって?」
アン「そう、例えば・・・」
アンはキーホルダーの一つを手のひらに載せ、ぎゅっと握り、そして手を開いた。
キーホルダーが輝き,長さ30cmの棒になる。アンがその棒を握って念を送ると、棒の先からビームが
伸びた。
森次「ビーム・メスか」
アン「他にもあるけど、また後で教えてあげるね」
そのとき、団がアンたちのいる部屋へ入ってきた。
団 「森次隊員,出動だ」
森次「奴らが出たのか?」
団 「そうらしい。見るからに怪しげな一行が街中をウロウロしていると通報が入ったんだ」
その怪しげな集団・・・ポルチス達は鐘を求めて歩きつづけていた。
妖械人「目標発見!」
そう叫んで妖械人は走り出し,ある店の前で止まった。ポルチス達が中をのぞくと小舟が何艘か
並んでいる。
ポルチス「あれは『カネ』ではなく『カヌー』だ!」
そのわきではキシダ兵達がそろってコケていた。
気をとり直してポルチス達は、また鐘を求めて歩き始めた。
キシダ兵1「ポルチス様、本当に大丈夫なんですか?あの探知機」
ポルチス「黙れ,これまではただのプログラムミスだ!手直しはした。次はもう、必ず見つかるぞ」
妖械人はしばらく普通に歩いていたが,急に足を速めた。
ポルチス「おお、今度こそ見つけたぞ!」
妖械人はある店の前で立ち止まった。「ケンタッキー」の店だ。店の外の人形を妖械人は指差した。
妖械人「見つけました」
ポルチス「これは『カネ』ではなく『カーネ』ル・サンダースだ〜!」
キシダ兵達が脱力感を味わっているところへ,防衛隊の装甲車「ケラット」が到着した。車から
黒部達やアンが降りてくる。
黒部「ポルチス、おとなしくしろ!」
ポルチス「なんだと!なんでこの完璧な変装がばれたんだ!?」
団 「とうの昔にばれてるぞ、そんな『仮装』は」
団の言う通り,ポルチス達の怪しさは見ぬかれており,ポルチス達は鐘探しに夢中で
気がつかなかったが街の人々は既に退避していたのだった。
高峰「さあ、降伏してもらおうか」
防衛隊の面々が銃をつきつける。
ポルチス「だれが降伏などするか。こうなったら邪魔者のお前達を血祭りにしてくれる・・・妖械人よ!」
妖械人は身に付けていた帽子とサングラスを取り、着ていたコートとズボンを破る様に自らの体から
剥ぎ取り本当の姿を現した。その妖械人は六本の腕があり、それぞれの手に扇子(せんす)を
持っていた。その扇子からオレンジ色のビームが発射され,黒部達の手にする銃をすべて
はじき飛ばした。
ポルチス「どうだ!六本の腕で6枚の扇子を操る妖械人、名付けて『シックスセンス』だ!」
高峰「隊長、我々は何でこんなアホと戦わなくてはならないんです?」
黒部「泣くな、こっちも泣きたいんだ!」
シックスセンスはアンへ攻撃のほこ先を向け、6枚の扇子から次々とビームを撃ち出した。
アンは手のひらにエネルギーを集めてシールド化し、左右の手を矢継ぎ早に前へ出してビームを
はじきかわした。だが、次にシックスセンスはビームを1点に集中させた。六本のビームが一本の
光るエネルギーの束になり,アンは両手を前に出してそれ受けるがビームの勢いにズズズズッと
後方へ押しやられる。
森次「アン,大丈夫か!」
するとアンはビームを受け止めながらニッコリ笑った。
アン「なかなかやるね。こっちもお返ししなきゃね」
そしてアンはジャンプすると,空中で静止して言葉を唱えた。
アン「風よ、立ち込める闇を切り裂きたまえ!」
風がアンに向かって吹き,アンに力を注ぐ。アンは両膝をシックスセンスに向けて突き出すと叫んだ。
アン「ニー・インパルス・ウインド!」
アンの両膝から三日月状の光波カッターが連続的に打ち出され,シックスセンスの持つ6枚の扇子を
ことごとく叩き割った。
アン「これで光線は使えないよ!」
ふわりと着地するアン。シックスセンスは武器を壊されて一瞬呆然とするが,怒りの形相になり
六本の腕を振り上げてアンに襲いかかった。次々とシックスセンスのパンチがふりそそぐが、
アンはそれをすべてカットし、相手の腹に一撃を加えた。シックスセンスが一瞬ひるみ,そのすきを
逃さずアンは敵の後ろへ回った。そしてシックスセンスの頭が下に、足が上になるように、
つまり逆さまに抱え上げ、ジャンプすると叫んだ。
アン「ジャイアント馬場さんの必殺技の一つ!」
アンは両膝でシックスセンスの頭をはさむと落下し,地面へ相手の頭を突き立てた。シックスセンスは
その衝撃にショートして動けなくなってしまった。
森次「パイルドライバー、脳天杭打ち落としだ」
妖械人を倒され,ポルチスとキシダ兵達はいっせいに逃げ出した。
アン「待ちなさい!妖械人を置いて逃げるの?」
アンの声を無視し、キシダ兵達はとん走した。が、ポルチスだけは立ち止まり、振り返った。
ポルチス「仇は必ず取る!精魂込めて創った奴を、誰が好きこのんで見捨てるか!!」
アンはポルチスの言葉を聞いて,小さくうなづいた。
ポルチス「覚えていろ,麻理亜の鐘は我々が見つけるからな!」
そう言うと,ポルチスも走り去った。
黒部「奴らもそれなりに本気だな」
団 「こちらも頑張って,先に鐘を見つけましょう」
アンは,動きの止まったシックスセンスを抱えあげた。
森次「・・・・・・アン?」
アンは普段は見せない,寂しげな顔をしていた。
アン「妖械人は戦うため,破壊をするために造られる・・・だから壊さなきゃならない。
でも、折角、造られても使い捨てなんて、やっぱり間違ってるよ・・・」
森次「そうだな・・・よし、それなら妖械人を造り出す親玉を倒せばいいんだ。我々も協力する。
必ず勝てるさ」
森次の言葉に,アンは無言でうなづいた。
(第5話・終)
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あるうす曇の日,防衛隊は装甲車ケラットと小型飛行メカジャイロビートルでMM市に向かった。
2週間前にその付近から強いエネルギー反応が感知され、その時の調査では不審物は何も
見つからなかったが、黒部隊長はもしかしたら麻理亜の鐘と関連があるかもしれないと考え,再調査
することにしたのだ。ケラットには黒部と団と高峰が、ジャイロビートルには森次とアンが乗っていた。
高峰「もし、今度も麻理亜の鐘でなく怪獣による反応だったら、どうするんです」
黒部「それならそれで、その怪獣が人間に対し無害であるかを確認する必要がある。無駄足には
ならないさ」
ケラットは地上30階を越えるビルが立ち並ぶ地域へ入っていった。エネルギー反応が感知されないか
確かめながらいくつかの交差点を何度か曲がって行くと、ビル街とは少し不釣合いな温室の並ぶ
広場が見えた。
団 「おや?こんな所に温室が・・・」
黒部達は車を止めて降り、温室へと歩いて行った。
広場は南側を道路,残る三方をビルに囲まれた30メートル四方の広さで半分は緑の芝生で覆われ,
残り半分に温室があった。温室の中では子供達が何人か、植物の世話をしていた。そのうちの一人が
黒部達に気付いた。
子供A「あ、防衛隊だ」
子供B「ほんとだ、カッコいい」
団 「この温室は君達の物なのかい?」
子供A「みんなの物だよ。食べ物がどうやってできるかを勉強するために、皆で世話をしているんだよ」
高峰 「勉強?」
子供C「街の中に住んでいて食べ物は買うことが当たり前の生活をしていると、食べ物を作る苦労が
わからなくなって食べ物を粗末にするようになるの。ここでは街の子が自分で作物を育てることで
食べ物を作る苦労を学ぶんだよ」
リーダー格らしい可愛くスタイルのいい少女が出てきて答えた。
黒部 「いい勉強だな・・・ところで君の名前は?」
子供C「私?花岡香菜」
黒部が温室をのぞくとトマトの木が何本も生え,どの木もたくさんの実を付けていた」
黒部「温室とはいえ,よく実っているな。皆の世話がいいんだな」
香菜「それと、天使が見守っててくれるからね」
団 「天使?」
香菜「見せてあげる。ついてきて」
広場の北東のすみに、太さ1メートル四方,高さ2メートルの程のコンクリートの台があり,その台の上に
石でできた1.5メートルくらいの羽を付け優しい顔をした天使の像が載せられていた。
高峰「この天使像のおかげで実が良くできるのかい?香菜ちゃん」
香菜「うん、この天使にお願いするとね・・・・・」
香菜が言いかけた時,道路の方から自動車が急ブレーキをかける音、そして大きな物が倒れる音が
響いた。
高峰「交通事故か?」
団 「行ってみよう」
ただの事故ではなかった。コンビニ店に弁当を運ぶトラックが横倒しになっていて、トラックの後部の
扉は開いていた。そして後部に全長8メートル程の怪物が頭を突っ込んで中の弁当を片っ端から
食べていた。
団 「あれは・・・怪獣ホオバルンガ!」
ホオバルンガは太った金魚の様な姿をしていて,空中をフワフワと泳ぐ様に動き回る。
そして、食べ物を見たら次々とあさる食欲怪獣なのである。
団 「エネルギー反応はこいつだったのか。前回は見落としたってわけか」
トラックの中の弁当をたいらげたホオバルンガはトラックを離れてフワフワと街の中を進んだ。団達は
麻酔弾を撃つが,ホオバルンガのぶよぶよ太った体に弾ははねかえされる。
高峰「さっきの温室の方へ行くぞ。子供達が危ない!」
ホオバルンガが温室に近づき黒部は子供達を避難させた。
黒部「逃げろ!早く逃げるんだ!」
ホオバルンガは温室に自分の頭をぶつけ、温室に穴を明けた。中のトマトの木が何本か倒れる。
明いた穴に頭を突っ込み,ホオバルンガが息を吸い込むと、トマトの実だけがホオバルンガの口に
どんどん吸い込まれていく。
香菜「このままじゃ、皆で作ったトマトがみんな食べられちゃう」
黒部「やつのぶよぶよの体には普通の武器は効かないし,どうしたらいいんだ」
トマトの実をほおばるホオバルンガだが、急に何者かに尻尾を引っ張られ温室から引き剥がされる。
ジャイロビートルから飛んできたアンラッキー・エアメイルだった。アンはホオバルンガの尻尾を
つかんだままぐんぐん上昇し,空中でホオバルンガを振り回し放り投げた。が、ホオバルンガはすぐに
体勢を立て直し,アンに向かって突っ込んでくる。
アン「アタックウインド!」
アンの右手の手袋が鋼鉄並の硬さになって飛ぶが、やはりぶよぶよの体にはじき返される。
団 「アンの力でもだめか」
そのままホオバルンガはアンに体当たりを仕掛けるが,アンはそれをかわし、ポケットから
直径10cm程の絵の描かれた丸い札(ふだ)を取りだし,見つめて念を込めた。そして
アン「我が命の一部を与える・・・現れよ,札魔獣『カミムラさん』!」
と言って札をホオバルンガに投げつけた。札は途中で身長50cm程の中年男の人形に姿を変え,
ホオバルンガの体にくっついた。
黒部「あれは・・・いったい・・・」
ブロッチ「魔具の一つ、『魔獣札』だよ」
いつの間にか魔界の虫イエローブロッチが黒部の肩に止まって解説した。
ブロッチ「元々は魔界の遊び道具だったんだけど、魔具として改造した物。使用者の魂の力を
与えることで札の中の魔獣や道具を実体化し、操ることができる」
森次「つまり『ジョ○ョの奇妙な冒険』の『スタンド』と『遊○王』の『カードモンスター』の複合パクリか」
ブロッチ「ネタばらししないで!『スタンド』と違うところは魔獣の能力を自分で選べること。アンは風を
操れるけど,水や炎はコントロールできない。でも、水や炎の札魔獣を使えばそれを補える。
『スタンド』と同じところは,札魔獣が外からの攻撃で傷ついたら使用者も与えたエネルギーの
量に応じてダメージを負う」
団 「で、あの札魔獣にはどんな能力があるんだ」
ブロッチ「見ていればわかるよ」
アンは,ホオバルンガに取りついた「カミムラさん」に向かって言った。
アン「リゲイン!」
カミムラさんが答えた。
カミムラ「リゲイン・ログイン・学級委員!」
アンは続けて叫んだ。
アン「豆腐!」
カミムラ「豆腐・毛布・大阪府!」
アン「アクション!」
カミムラ「アクション・ハクション・カーネーション!」
アンとカミムラさんの掛け合いが続くうち,ホオバルンガの体に氷の粒が着きはじめた。
団 「どういうことなんだ?」
ブロッチ「カミムラさんは低レベルのギャグを言うたびに周囲の気温を下げていく魔獣なんだ。もっと寒く
なるよ」
アン「センス!」
カミムラ「センス・タンス・ヒヤシンス!」
アン「小腸!」
カミムラ「小腸・大腸・七面鳥!」
ホオバルンガの体がますます冷やされ,空気中の水蒸気がどんどん氷になって取りつき,
ホオバルンガの全身が白くなる。
アン「カブトムシ!」
カミムラ「カブトムシ・茶碗蒸し・信号無視!」
アン「ピカチュウ!」
カミムラ「ピカチュウ・昆虫・ネズミがチュウ!」
とうとうホオバルンガは氷の固まりに閉じ込められ、地上に落下した。
氷づけになったホオバルンガは防衛隊の基地に運ばれることになった。戦いの後,黒部達は子供達と
例の温室の処置を行った。倒れた木を起こして、根を地中に埋める。
高峰「これで大丈夫かな。根が元通り、しっかり張ってくれればいいんだけど」
香菜「うん・・・天使にお願いしてみる」
団 「天使?あの像のことかい?」
香菜は胸のところで両手を組んで祈りはじめた。すると温室の外から鐘の音が聞こえ、黄色い光の
粒子が温室へ流れ込んだ。傷ついた木々のしおれた葉が光の粒子を浴びて回復して行くのが
見た目にもわかる。黒部達はそれを呆然と眺めていたが,アンはハッとして香菜を止めた。
アン「だめ!それ以上やったらあなたが危ないよ!」
黒部達はアンや香菜とともに例の天使像のところへ来た。先程は気付かなかったが天使像は
両の手のひらを上に向け,胸の下あたりで組んでいた。その手のひらの上に高さ15cm位の薄黄色の
鐘が載っている。
高峰「香菜ちゃん、あの鐘、像の一部じゃないのかい?」
香菜「あれは2週間前にここに落ちて・・・ううん、ゆっくり降ってきたんだよ。天使像のアクセサリーに
ぴったりと思って載せておいたんだけど,なんか、植物を回復させる力があるみたい」
アン「植物だけじゃないよ」
アンは,両手を鐘の前で組み,祈るようなポーズをとった。すると鐘が輝き,優しい音色を奏でながら
柔らかく暖かなエネルギーを周囲に発した。
団 「ニ週間前の反応の源はこれだったのか」
アンがポーズを解くと,鐘も鳴り止んだ。
黒部「アン、これがまさか・・・」
アン「そう、麻理亜の鐘だよ」
(第6話・終)