一日一歌

甘枝の近況および日々の歌を臆面もなく公開。


11/29(金) 「お知らせ」

みなさんにひとつお知らせがあります。来年から、宮崎で暮らすことにしました。2月前後には引っ越すことになるかと思います。急な話ですが、そうすることにしました。

そうするに至った背景には、それなりの事情があって、ひとつは母の体調が思わしくなく、帰ってきてほしいと言われたこと。 博多でイッセーさんと夢の対面を果たした日の翌晩、本人から電話で打診されました。こう書くとさも深刻な状況のようですが、本人自ら電話してくるぐらいだからそれほどではなく、ただ、以前に大病をして、以降も時折軽い発作が出ることがあり、しかし声を聞いている限りでは、身体的なことよりもそれを受けて精神面で気弱になっている、そういう印象を受けました。

でもこれは、理由ではなくきっかけです。非情ながら、よほどの大事でない限り、この年で親のために田舎へ帰るつもりはありません。非情ですが。 また、「親のために」という理由付けは、今後の行く先によっては「親のせいで」という意味合いにたやすく転じてしまいそうでもあり、それも本意せざるところです。なので、他の誰のためでもなく、自分の中の問題としてこのことを捉え、考えました。  まあしかし、結果的には親の喜ぶかたちになって、不孝の限りを尽くしてきた娘としては清々しい思い。

母から電話を受けた時、甘枝は普段になく動揺しました。 むかしなら、即座に断り、聞く耳すら持たなかったことでしょう。 実際、学生の頃はこうした電話が頻繁にかかってきて、その都度「まだ当分は・・」と断ってきましたし。今回に関しても、はじめは「でも」と「いや」の繰り返しでした。「宮崎に戻る」ということはすなわち「広島を離れる」ことを示し、甘枝の中では常にそれが先立つためです。 宮崎に帰ったらできなくなる幾数もの事柄を、母に何度も訴えました。そして、まくしたてながら、それら「できなくなること」のほとんどが、広島で出会い、関係を結んでいる周囲の人々に起因していることに気づきました。 もう、会いたい時すぐに会えなくなる。いつもの場所で落ち合うことも、お茶を飲むことも、本を貸し借りすることも、変な看板を見つけて目配せすることも、夜中に助けに行くことも、助けに来てもらうことも、顔を見ることも、姿を見て安心することも、ぜんぶ遠くなってしまう。みんなできなくなってしまう。 ささやかながら、ここにたしかにあるわたしの世界を、手放せと?

想像しただけでぶるぶる首を振ってしまいますが、それでもなお、この時甘枝は強固に母を押し切ることができませんでした。 答えは常に、問うた時には握っている。そう思い、今まで悩み無用の甘枝でしたが、珍しく悩みました。いや、迷いました、か。動揺の元もここにありました。前なら迷わなかったことで今迷っている。 この時点でもうおかしい。これは非常事態だぞ、と。けれどもやっぱり、答えは出ているものなんですね。迷っているのは、それを認識したくない気持ちの抗いに似た行動であって。帰郷におけるデメリットを想像する一方で、当然ながらメリットも想定するわけです。 不思議とこういうとこには公平なのね。それで、現在甘枝の思いあたる唯一にして最大のメリットがやはりそこにあり。しかもそれがまた、このところ頭のどこかで実感していた問題事項と見事に連結し、もしかすると打開策になるやもという予感が働いて、つまりはそれで迷っていたのでした。

その問題事項とは、書くことにまつわるものです。周知の通り、ここ1、2年の甘枝は自ら進んで飛び込むかのように仕事に夢中になり、肝心の書くことがおざなりになってしまっています。 いつかいつかと思いつつ、その実ちっとも・・・・  日々の生活自体は楽しくて、特に不満もなく、しかしそれがかえって目先の魚を追うのに拍車をかけています。これで何も感じなかったら良いのだけれど、今現在はまだ書くことを続けたいわけで。日々の暮らしが面白いのも、結局はそれらすべてが、いつかの文章につながるだろうと思っているからで。 それなのに、付属的なことばかりが先行して、中心にあるべき芯の部分が穴になっている。ドーナツみたいになっている。 働きながら夢の実現を目指す者が陥りやすい展開です。 って、標語みたいな表現だけど(笑)これではいけない。日々、静かなる心持ちでそう思っていました。そう、思っていただけ。今回の件でそのことも実感しました。しかるべき環境を整えなければできないというのは、実に情けなく、恥ずべきことです。けれども、それが甘枝の現況で、実態。その点で、このたびの母の提案は、イチから生活を立て直すチャンスとしても受け取れるものなのでした。

一晩右往左往して考えたのち、ふと大学時代の親友が宮崎にいることを思い出して電話してみることに。現在の宮崎がどういう感じなのか、宮崎で暮らしていて何が楽しいか、リサーチしようと思ったのです。 結果は予想通り。良いも悪いもなく予想通り。「宮崎の街はどう?」「相変わらず何もないよ」(やっぱり・・) 「住んでて何が楽しい?」「地元のラジオ番組とねー あとケーブルテレビ」(おもいきりインドアライフじゃないか・・・) 「昔いた広島と比べてどう?」「正直に言うよ。つまらん」(やっぱりーーー!?) 宮崎在住の方が読まれたらさぞ憤慨ものだろうが、仕方ない。この二人は明確な比較対象を持っているのだもの。御無礼どうか平に御容赦を。。 電話を切った後、甘枝は再び迷い始めた。事態はかえって深刻になった気すらした。旅行に行くわけではないのである。そこで毎日暮らすのである。今の環境と大きなギャップがある宮崎でやっていけるだろうか?

慣れないことしているものだから、しまいには気分が悪くなった。気分転換をはかり、かのイッセー氏の公式サイトなどのぞく。すっかりお馴染みの場所なので見るところは限られているのだが、よくよく見れば、いまだ未見の箇所があることに気がついた。「歩く年表」というコーナで、タイトル通りイッセーさんの経歴が綴られている。甘枝は今まで著書やテレビから彼の歴史を知った気になっていたが、改めて時系列に見てみると、実はたいして詳しくなかったのだなということがわかった。 そして結果的にいえば、この年表こそが、今回の決断を甘枝にもたらしたのだった。これで決まった。これで決めた。 そこには、ひとつのことを続けてきた、そして今もなお続けている人の、一見たやすいようでそうではないたしかな足取りがあった。そしてそんな人の集大成を、つい先日甘枝はこの目で見たのだ。これは効いた。タイミング的にたまたまそうなっただけにしても、そのタイムリーさにやられた。絶妙だもの。「あたりまえのことが実は全然あたりまえでない。或いは、あたりまえでないことを、あたりまえでないと感じさせることなくあたりまえのようにやる」 先日の公演で、甘枝はそのような内容のことをアンケートに書いたのだが、それは毎回彼から感じていたはずのことなのに、そして自分でもそう書いているのに、その意味合いが正しいかたちで全身に浸透したのはこの時が初めてかもしれない。 この時点で、根拠は何もないのだが、すべてのことが甘枝の中でつながった気がした。

あたりまえのものとして享受していた世界から、いったん離れてみよう。大切な人々と、居心地の良い(そして温室でもある)この場所を、言い方は悪いが自分から引き離して、たったひとりに戻ってみよう。 書きたいなら、書くための自分を育てよう。 そう思ったのだった。何をおおげさにと思われるかもしれないが、甘えたりりであるところの甘枝りりにとって、これは最大の勇気を必要とする、大きな決断であった。自分でそう決めたというのが何より大きい。 だから、今回のことは宮崎で暮らすことに「なりました」ではなく、「しました」なのだ。

決めてすぐ、親しい友人、それも特に広島の友人たちに報告をしようと思った。だが、一番最初にカジに電話をかけて(彼女とは3年一緒に暮らした仲なので、最初に伝えたかった)報告をしたら、「なんだか、モンゴルに行くって言われるより遠い気がするね」と返ってきて、それ以上はとてもじゃないがまともに話せなくなってしまった。本当に、彼女の言う通りの気がした。   なので、カジ以外の方々にはここで初めてお伝えすることになります。間接的でごめんね。 やっぱり、辛いんだよね。辛いよ。

カジが呟いたフレーズは胸にいたく突き刺さったが、それはたぶん、宮崎に「帰る」という状態に由来した重みなのだと思う。 そのニュアンスは永続的なものだから。 しかしながら、甘枝の気持ちとしては「これで田舎に永住」とは思いたくない。実際どうなるにしろ、現時点ではあくまでしばらくの滞在としておきたい。親もそこはわかってくれて、「とりあえず3年。それでまた飛び出す気になったら、行きなさい。止めないよ」とのこと。(しかし、とりあえず3年て・・・いったいどこから出た計算なのか)修行のような、或いは海外滞在のような(まあ外国みたいなとこだし)心づもりの甘枝である。 文中、帰郷とは書きましたが。また、住居も親とは別で、宮崎中心部に住む予定。それでも広島よりは近い! 当然か。ノーチは連れて行きます。唯一の条件。

ああ、なんだか途中からいつもの日記口調になってるし。。  まあそういうわけで、甘枝よりひとつお知らせでございました。


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