鋼橋の製作において、不都合発生原因は、各工程毎に分類されます。
1.素材マーキング、切断工程
不都合の見つかるタイミングが、後になればなるほど、その損害は大きくなります。
現在の橋梁製作は、船や鉄骨構造物製作のノウハウの延長上で行われています。
橋は、強度と美観です。
正しい座標があれば、各工程で作られた半製品を検査することが出来ます。
取り付け部材の誤指示、開先不良、外形不良、開口不良など。
2.孔明け工程
孔配列不良、孔基準不良、孔径不良など。
3.パネル溶接工程
2次部材長不良、溶接ひずみ折り込み不良、誤取り付けなど。
4.組立て工程
組立て基準の不良、手順間違い、矯正不良など。
5.現地施工工程(仮組み工程)
支間長不良、桁間不良、施工ギャップの折り込み不良など。
大抵の場合、不都合は、後工程になるほど発見され易いものです。
(いくら工程毎に検査をしても、間違ったものを作っているという認識は持たないから。)
誰しも、各工程においては、正しいものを作っているのです。
しかし、橋全体で考えると、やはり間違いは起るのです。
現地施工時に”設置が出来ない”のは、最悪の状況と言えます。
それだけは避けたい・・・から、仮組み工程などが存在します。
各工程での検査、これが一番素朴で確実な方法なのですが、”何が正しいのか?”が問題です。
各工程での検査シートそのものが間違っていたら、それだけの事なのです。
(設計段階での不都合が、現地で発見される可能性も有るのです。)
”図面寸法”が数字で書かれているから、ものさし(現在は光波)で長さを測って検査します。
いくら正確に測ろうと、製作しようと、図面寸法が違えば、当然、不具合が発生します。
仮組み立て省略システムも、所詮、同じ流れを電算化しただけです。
仮に、図面が間違っていても、正しい橋が架かる。
その方法を考えなくてはなりません。
橋を架ける場所が決まったら、現地の地形を3次元CADでシミュレートする必要が有ります。
今時、GPSで現地の座標点なんて、正確に、簡単に入手出来るはずです。
正しい座標点をもとにして、橋梁デザイナー(設計)が、3次元線形を作れば・・・。
最低限、支間長と桁間の正しい橋のデータが得られます。
さながら、車のデザイナーが描いた画を、3次元座標化するかのような手順です。
光波で長さを測らなくても、今時の画像処理技術を駆使すれば、写真だけで検査出来ます。
いい加減に”出来た物の長さを測る”・・・という前世のやり方は捨てましょう。
いいか悪いか、それは全体を人間の目で見れば9割方分かります。
それを10割にするのなら、電算処理に任せましょう。
使用した材料の品質と、組み立て手順を調べれば、強度はおのずと分かります。
正しい組立てが行われたかも、設計画像と検査画像を重ねれば分かるでしょう。
本当に精度を要する組立て箇所は、特定出来るのだから・・・。
とはいえ、一朝一夕にそんな技術が出来るわけないのが実状ですね。
今日も黄色のラインマーカーで、図面数値と成果物の寸法を”消しこみチェック”しています。
だけど、それを当たり前・・・と思ったら、日本の橋梁(鋼橋)製作に未来はないですね。