以下は、アムネスティ日本の公式訳ではなく、個人訳です。
原文は、http://www.amnesty.org/en/library/info/MDE15/005/2015/en
にあります。


2015年2月5日

2014年のガザ紛争についての国連独立調査委員会の近況に関するQ&A

調査委員会の委員長であるシャバス教授の辞任と、イスラエルが委員会がまだ発表していない報告書の「棚上げ」を要請していることについて、アムネスティ・インターナショナルの対応はどうなっているのでしょうか?

2014年のガザ紛争についての国連独立調査委員会は、2014年7月23日、人権理事会の第21回特別会合で、賛成29票、棄権17票、反対1票(米国)で可決されたことを受けて2014年8月に設立されました。そのすぐ後から、アムネスティ・インターナショナルは委員会と関わっています。

調査委員会は一貫してその責務を2041年6月13日以降の軍事作戦の中でなされた違反行為を調査することと説明しています。つまり「イスラエルへの攻撃を含むガザのパレスチナ武装グループの活動、そしてガザ地区内でのイスラエルの軍事作戦と東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区でのイスラエルの行動」を対象とするということです。アムネスティ・インターナショナルその他様ざまな国際人権組織は、イスラエルとパレスチナの人権組織と同様に、双方によってなされた違反行為と人権侵害に関して情報を委員会に提出しています。

委員会はまたガザ地区、西岸地区、イスラエルの目撃者や犠牲者から直接聞き取りもしています。

イスラエル政府は委員会メンバーがイスラエルや被占領パレスチナ地域に入るのを許可しないことを含め、委員会への協力を今まで拒んでいるため、委員会は双方の目撃者と犠牲者とアンマンまたはジュネーブで面接しています。また紛争中になされた違反行為の情報について個人、団体へのテクノロジーを使ったインタビューも行なっています。

調査委員会の報告書は委員長を含め1人の作業をはるかに超えるものです。

調査委員会は法律、軍事、医療の専門家を含む献身的なプロのスタッフ、また子どもや女性の権利の専門家も抱えています。そして、ジュネーブやラマッラー、ガザ地区の国連人権高等弁務官事務所の職員による支援もあります。

人権理事会に提出された国連人権高等弁務官の最近の報告書には、2014年7、8月の間の紛争におけるイスラエル軍とパレスチナ武装グループによる違反行為と人権侵害の情報が記載されています。また、申し立てのあった違反行為の調査と説明責任を果たすためのイスラエルおよびパレスチナ当局の活動も査定しています。

メンバーの1人による1つの技術上の法的意見をもって、イスラエル政府が調査委員会を根本的に偏っていると表現するのを、アムネスティ・インターナショナルは拒否します。

委員会が設立されて以来、イスラエル政府が協力を拒み、委員会の度重なる要請にもかかわらず委員会の調査員がエレズ検問所経由でガザ地区に入ることを許されないのを、私たちは知っています。

イスラエル当局はまた、アムネスティ・インターナショナルその他独立した人権調査員たちのガザ地区への立ち入りを拒み続けています。

イスラエルが委員会への協力を拒否したこと、委員会および人権理事会とシャバス教授個人に対する公的な組織的中傷キャンペーンは、国連のメカニズムと調査委員会へのイスラエルの非協力の変わらぬパターンの一部と見なすべきです。

またシャバス教授は委員会在任中、死の脅迫を受けたという穏やかでない報告も複数あります。

シャバス教授へのそのような脅迫を含め、国連が任命した機関のメンバーを脅迫したり威嚇したりするいかなる企てもアムネスティ・インターナショナルは非難します。

イスラエルを含めすべての国ぐにはそのような脅迫を公に非難すべきです。

リチャード・ゴールドストーン判事の意見が公表された後、2011年4月、ベンジャミン・ネタニヤフ首相とアビグドール・フェルドマン外相がガザ紛争についての国連事実調査団の報告書の取消しを求めたことと似ていると、アムネスティ・インターナショナルは想起します。

ゴールドストーン判事は事実調査団の団長を務め、2008年から2009年にかけてのイスラエル・ガザ紛争での双方による戦争犯罪など国際人道法の重大な違反行為を文書化しました。

イスラエル政府が、最近のイスラエル・ガザ紛争についての国連が委託した調査を故意に妨害することはまったく許されません。また、調査委員会は重要な作業を完了させるために必要な支援をすべて受けなければなりません。

委員会の作業や報告が「棚上げ」されるよう求めることは、説明責任回避の要請であり、人権理事会と国際社会から断固として拒否されるべきものです。


2014年のイスラエル・ガザ紛争の間になされた違反行為についてのアムネスティ・インターナショナルの立場はどうなっていますか?

違法な民間人殺害、非軍事的資産の破壊、その他重大な違反行為や人権侵害など、2014年7、8月の紛争中になされたイスラエル軍とパレスチナ武装グループ双方による戦争犯罪その他国際人道法の重大な違反行為を、アムネスティ・インターナショナルは記録してきました。

アムネスティ・インターナショナルは報告書を公表し、紛争中にガザ地区の在宅家屋や高層建物、病院や医療従事者にイスラエルが攻撃したことを文書化しています。各報告は戦争犯罪を示す証拠と分析を含んでいます。

ガザ地区で活動していたパレスチナ武装グループは数千発のロケット弾と迫撃砲弾をイスラエルに向けて発射しました。精確に照準できない弾薬を非軍事地域に向けて発射することは戦争犯罪であり、ハマスとパレスチナ武装グループの声明もまた民間人殺傷を意図した攻撃があったことを示しています。

アムネスティ・インターナショナルはパレスチナ武装グループによるこのような違法な攻撃を繰り返し非難してきました。また、近く公表される報告書でより詳細を提示することとなります。

アムネスティ・インターナショナルはまた紛争中、ハマスの部隊によってガザで「協力者」とされた人びとが即決処刑されたことも非難しています。この件については別に予定されている報告書の対象となっています。

アムネスティ・インターナショナルはパレスチナの国際刑事裁判所(ICC)への加入を、双方の犠牲者のための正義と説明責任に向けての重要な一歩として歓迎します。ローマ規程第12条3項に従って2014年6月13日以降の管轄権まで遡及して受け入れるというICC検察官に対する宣言書の提出もそうですが、宣言書にある期間は不必要に短くされています。

最後になりますが、アムネスティ・インターナショナルは、パレスチナ当局が国際的な司法メカニズムを追求することへの報復的措置や脅迫を非難するものです。また、パレスチナの当該状況についての予備審査を開始するというICC検察官の声明を歓迎します。


今、どうあるべきなのでしょうか?

アムネスティ・インターナショナルは、双方の犠牲者とその家族のために委員会の現実の作業に焦点を絞る重要性を強調する人権理事会議長のルエカー大使の声明に同意します。

調査委員会とその報告書は、イスラエルとパレスチナにおける戦争犯罪と重大な違反行為の免責の長期持続的なサイクルを断ち切りやすくする機会を象徴するものです。

パレスチナ人とイスラエル人のために、この機会が失われるようなことがあってはなりません。

委員会の残ったメンバー、メアリー・マクゴワン・デイビス氏、ドウドウ・ディエネ氏は委員会のスタッフたちと共に自らの仕事を続けています。

2015年2月3日、人権理事会議長は委員会の委員長としてメアリー・マクゴワン・デイビス氏を議長に任命しました。

調査委員会の報告書は、2015年3月23日の人権理事会会合に提出されることになります。この報告書が最近の紛争中に双方によってなされた戦争犯罪を含む国際人道法の重大な違反行為が文書化されることが期待されます。

アムネスティ・インターナショナルは人権理事会に対し、委員会の調査結果と勧告を真摯に検討すること、委員会やその報告書を政治的に扱わないよう、また説明責任を確実に果たすため、あらゆる適切な措置を講じるよう求めます。

すべての当事者、特にイスラエルとパレスチナ当局は調査委員会と人権理事会が設立するその後のメカニズムに協力すべきです。

ベンジャミン・ネタニヤフ首相を含むイスラエルの高官たちは、最近の紛争の間、イスラエル軍は国際法に従って行動したと主張しつづけています。一方で彼らは国際的な調査員たちが目撃者や現地、物的証拠に物理的に近づくのを拒み続けているのです。

調査委員会に協力し、その調査員たち、またアムネスティ・インターナショナルなど国際人権組織の調査員がガザに入るのを即時許可することで、彼らは自らの誠意を示すべきです。


背景

2015年1月30日、イスラエルのジュネーブ常駐代表は人権理事会議長に書簡を送り、2014年のガザ紛争についての調査委員会委員長のウィリアム・シャバス教授を解任するよう要請しました。その書簡の中で彼は、イスラエルはシャバス氏が「現在の職務の前にパレスチナ側と契約上の関係を持っていた」証拠を有していると述べていました。

すぐその効果が表れ、2015年2月2日、ウィリアム・シャバス教授は人権理事会議長、ジョアチム・ルエカー大使に書簡を送り、議長を辞任することを伝えました。

2015年2月3日の声明で、人権理事会議長は辞意を受諾したことと、「シャバス教授の決定を尊重し、こうして利益相反にも見えることが避けられ、手続きの健全性が維持されたことを評価する」と述べました。

国際刑事裁判所(ICC)を定めたローマ規程および国際刑法の専門家であるシャバス教授は、辞任届の書簡の中で、パレスチナ解放機構(PLO)の渉外部のために2012年10月に法的意見を準備した事実に関するイスラエルの異議申し立てに言及していました。

その法的意見は、2009年1月にパレスチナ自治政府がICCに提出する宣言書のため、パレスチナが国連総会決議で非加盟国の地位を認められることの結果に焦点を当てたものでした。

シャバス教授は短期の相談として法的意見を提供したもので、それは彼が様ざまな政府や個人、組織に定期的に行っていることだと述べています。

彼はまたパレスチナあるいはその代表のためにその他の法的意見を伝えたり専門的サービスをしたことはないこと、また2014年8月に調査委員会の候補者としてアプローチされていた当時、イスラエルとパレスチナについての自らの見解は人権についての自らの学識と合わせてよく知られており、おおっぴらになっていたとも述べています。

シャバス氏辞任のニュースが公表されてから、イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相は、調査委員会の報告書を「棚上げ」するよう求める声明を出しました。その報告書はまた執筆中で2015年3月に公表される予定のものです。

イスラエルのアビグドール・フェルドマン外相は、「シャバス氏の辞任はイスラエル外交とイスラエル外交代表の勤勉さの新たな勝利だ」という声明を出しました。

別のイスラエル政界の長老は調査委員会の委員すべての辞任を求めています。


(訳: 野間伸次)