歯医者へ行こう!  第1回  ぽろっ・・・それがすべてのはじまり

     2000年の7月もあとわずかで終わろうというある日のことだった。
     もぐもぐもぐ・・・
     家族で夕食を食べている時、ふと口の中に違和感を感じて、「それ」を出してみる。 鈍い銀色をした
     それは奥歯の詰め物だった。 どわっ!? なんでなんで? 硬いものを噛んでたわけじゃないし、
     おもちみたいに粘っこいものを噛ん出たわけでもない。 なんの前触れもなく、なんの抵抗もなく
     取れるなんてどういうことなんでい!(なぜか江戸っ子にゃお)
     急いで口をすすいで鏡で口の中を点検する。 どこが取れちゃったの? 見ると右奥歯の詰め物がない。 
     これか?!  ・・・だぁ〜 歯医者だ・・・

     にゃおはその時、友達と2日後にパフェを食べに行く予定だった。 前からの予定が子供の病気などで
     延びてしまい、やっとスケジュールを合わせた日だったのに・・・ 一瞬、パフェを食べに行ってから
     歯医者に行こうかな・・・という考えがよぎる。 でも手のひらの上の取れちゃった詰め物が
     「それでええんかい? 知らんでぇ〜(なぜか関西弁もどき)」といやみったらしく存在をアピールしている。 
     パフェか歯医者か・・・ 軍配は厳正なる協議の結果、歯医者へと上がった。

     だいたい誰でもそうだと思うけど、にゃおは歯医者が苦手だ。
     あのキュイ〜ン、ガリガリ、ゴリゴリ、シュ〜〜〜っていう機械音。 いろいろ塗られる薬の味、
     麻酔注射の痛み。 過去のありとあらゆる苦い思い出が蘇って思わず痛くないはずの歯が
     痛くなってきて頬を押さえてしまう。 だけど軍配を上げちゃった以上は行かねばなるまい。
     幸いに子供は3歳を迎えてだいぶ親の言うことも理解できる。 これなら歯医者へ連れて行っても
     なんとかおりこうで待てるかもしれない。 今までだって歯医者に行かないといけないかな〜って
     思うことが何回かあったけど子供は小さい、子守りをしてくれる人もいないというわけで
     行くことができないでいたのだ(それを理由に行くのを引き伸ばしたという説もあり)。

     翌朝、診察の始まる10分くらい前ににゃおは近所の歯医者へと電話をかけた。
     詰め物が取れたので今日診てもらいたいのだか時間が空いてるか?との問いに11時からなら
     O.Kとの返事があった。 すぐにその時間の予約を取ってさらに気になることを尋ねる。
     「3歳過ぎの子供がいるんですけど連れて行っても大丈夫ですか?」
     受付のおねーさん(声からして若いお嬢さんに間違いない)は「大丈夫ですよぉ〜♪」と
     軽やかに答えてくれたのでにゃおはホッとして受話器を置いた。
     次に問題なのは子供だ。 子供はやっぱり医者が苦手。 というよりも他所の建物に入るのが
     苦手なのだ。 入り口で「いやぁ〜 入らない〜〜〜」と泣き喚かれでもしたらどうしようもない。
     にゃおは子供を呼ぶと「どうしよう〜」と泣きまねを始めた。

     にゃお:「お母さん、歯が痛いの〜(声をしゃくりあげて泣いてみせる)」
     子供 :「大丈夫、よしよししてあげるから大丈夫よ」
     にゃお:「お母さん、歯医者さんに行ってもしもし(診察を受けること)してもらわないと・・・」
     子供 :「・・・(一瞬にして困惑の表情で固まる)」
     にゃお:「お母さん、がんばって先生にもしもししてもらうから○○ちゃんはお母さんのこと
           そばで応援してくれる?」
     子供 :「応援? いいよ〜 がんばれぇ〜」
     にゃお:「そうそう、○○ちゃんはがんばれぇ〜って応援してくれるだけでいいからね」
     子供 :「うん、○○ちゃんは応援するだけね?(子供は非常に疑り深いのである)」
     にゃお:「そうそう。 そしたらお母さんとスーパーへ美味しいものを買いに行こうね」
     子供 :「美味しいもの? うん、○○ちゃんプリン買うんだぁ(やっぱり食い物には弱い)」

     こうして何度も暗示にかけてからいざ出発する。 場所は歩いて5分、車で1分のところにある
     絶好の場所。 でもやっぱり車が止まると子供は不安そうな表情を浮かべ、さらに入り口で半泣き状態。
     自分はもしもししなくてもいいことをしつこく確認し、待合室に入ってからも目を潤ませたままだった。 
     やれやれ・・・泣きたいのはお母さんだってば。 こんな調子でにゃおが診察を受ける間、
     大人しくできるかなぁ・・・ 一抹どころか三抹くらいの不安を胸ににゃおはクーラーがよく効いた
     部屋の中で一人うっすらと汗をうかべていたのだった。

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