歯医者へ行こう!  第2回  嵐の予感

     初めて行ったその日のうちに、詰め物が取れた右下奥歯は新たに削り直して型が取られ、
     次回には新しい詰め物が入ることになった。 これで終わり・・・のハズだったが、にゃおは
     ついでに他にも治した方がいいところがあったら治してくださいと言った。 そこの先生の
     治療方針は患者への情報公開なのか、いちいち手鏡を持たされ、自分の口の中を見ながら
     治療や状態の説明を受ける。 先生は口の中をあちこちと覗き込み、なにかでつつき、
     ぼそぼそ・・・と歯科助手に何かを伝える。 そのあとで鏡が渡された。

     「ここが・・・なんですね。 それでここも・・・です。 ここはもう・・・です」

     あうあうあう〜〜〜 わかっちゃいるけど、改めて口の中を覗いてみるとなんてグロテスクなんだろう。
     そこを先生がポイントしながら説明する。 口を引っ張られてる中で先生の言葉に相づちを
     打つもんだから、「はい」のつもりが「ふぁい・・・ふぁい・・・」とアホみたいな発音になる。

     ここでは大きな問題点が2つ指摘された。
     その1 全体的に歯茎のしまりが悪く、歯槽膿漏気味であること。 特に左上側にかなり悪い部分
        
があるということ。
     その2 左下奥から2番目に昔にすっぽりと銀歯をかぶせたあとがあるが(専門用語で冠(かん)と
          言うらしい)それがもう古くなっていて穴が開いたり薄くなったりして全然役に立っていない
          ということ。

     「その1」については自分でも自覚はあったのだ。 ここってヤバイよね〜って思いながら
     一応歯磨きはちゃんとしてたつもりなんだよね。 まぁ、これは正しい歯磨きの仕方を守って
     磨けばそこそこは改善するものらしい。 問題は「その2」の方なんだ。 これもにゃおは自覚があった。
     まずこの冠(かん)は、思い起こせばかれこれ20年近く前にかぶせたもの。 先生に言わせると、
     このかぶせてある冠(かん)の技術は今はまったく行われていないタイプのものであり、この処置の
     仕方は化石的な技術なんだそうだ。 まったく医学ってのは日進月歩だもんなぁ。
     何年も前からこの冠(かん)に舌が触れるとざらつき感を感じてたし、なんかヒビが入ってる
     らしいこともわかってた。 4年前ににゃおは子供を妊娠してる間にも詰め物が取れて
     治療に来たことがある。 その時にこの冠(かん)について、取り替えてくれないかと言ったのだ。
     あの時、先生、なんて言ったか覚えてんの?
     「これはまだ大丈夫ですから」
     そう言ったじゃあないのぉ〜 ちょっとくやしかったにゃおは、その事を言ってやった。
     もちろん、先生は覚えちゃいないだろうさ。 だけどここまでになるまでにゃおが放っておいたんだって
     思われるのはあんまりにもシャクだったんだよね(先生と張り合ってどうすんだ(笑))
     子供が生まれてからは近くに子守りをしてくれる人もいなかったにゃお。 行きたくても
     行けなかったんだ。 歩いて5分。 家からその歯医者が見えるのに、行けなかったんだよ。

     先生はにゃおの言葉に一瞬言葉をつまらせ(それはヤバイとでも思ったのかな?)、とりあえず
     次回に右下の詰め物を入れ終えたあとで歯石を取り、そのあとで取り掛かりましょう・・・と
     のたもうた。 お〜い、チョット待ってくれよ〜 もう全然役に立ってないんでしょ?
     それってヤバすぎない? 来週詰め物して、その次の週に歯石を取って、その次から
     取り掛かる? 2週間もこのままで置いとくわけ? それとも、ここまで放っておいたんだから
     あと2週間くらいいいってこと? 

     なんだかすっきりしない思いのまま、「お疲れ様」の声とともに診察台を降りたにゃおは、
     ノロノロと子供が待つ、待合室へと戻っていったのだった。

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