夏休みなので、朝、店を開けるのは7時半頃からでいい。 主な客はクラブにやってくる中学生が相手だし、卸屋さんも10時過ぎでないと現れない。 起きると、まず、チッチの入っている箱にかけてあるハンカチをどけてやる。 光を感じるのかどうかはわからないけど、にゃおがゴソゴソしたり、ハンカチを 取る音に反応して、チッチは、「チクッ、チクッ!!」と鳴き始める。 声をかけると、羽を震わせて応えてくれる。 夜のうちにしたフンのついたティッシュを取り替えて、小鳥の雛専用のエサを食べさせる スポイトで水に浸して柔らかくしたエサを与える。 店番をしながら、暇さえあれば、チッチと声をかけて頭をなでたり、抱っこしたりした。 ★ ★ 3日くらいしたある日のこと。 チッチを自由に遊ばせていた時、呼ぶと、声のした方に突進してきたチッチが じゅうたんをツンツンと突付いた。 あれ? と思ってみていると、まるでエサをついばむように、あちこちを向いて ツンツンとやっている。 これはもしかして・・・? にゃおはチッチを深めの箱に入れて、そこにエサのアワ粒を置いてみた。 エサの方に誘導すると、チッチはそこへやってきて、なにやら、ツンツンする。 偶然に、エサの一粒がくちばしに挟まった。 チッチは起用にくちばしを動かして エサの薄皮を剥くと、それを食べたのだった。 「チッチが自力でエサを食べた!!」 これは、ものすごく大事なことだ。 だって、自力でエサが食べられるってことは 人の手を煩わさなくて済むってこと。 生きていく道が開けたってことだもの。 にゃおはエサを多めに入れた小さな箱の中にチッチを入れた。 最初はヘタクソだったけど、だんだんと上手にエサをついばめるようになっていった。 ★ ★ ★ 妹の術後も順調で、明日にでも退院して帰ってこられるという頃、チッチはすっかり 自分でエサを取ることができるようになっていた。 ただ、いつもエサ箱の中に 入れていたのではフンをして汚してしまうし、狭苦しい。 だから適度に スポイトでエサをやりながら、自由についばませるという形を取っていた。 すっかり元気になったチッチは、拾われた当初より、一回り大きくなった。 呼ぶと羽を振るわせる姿が、嬉しくて仕方ないというように見えた。 良かったね、チッチ。 これで生きていけるね。 |
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