夏休みなので、朝、店を開けるのは7時半頃からでいい。
主な客はクラブにやってくる中学生が相手だし、卸屋さんも10時過ぎでないと現れない。
起きると、まず、チッチの入っている箱にかけてあるハンカチをどけてやる。
光を感じるのかどうかはわからないけど、にゃおがゴソゴソしたり、ハンカチを
取る音に反応して、チッチは、「チクッ、チクッ!!」と鳴き始める。
声をかけると、羽を震わせて応えてくれる。
夜のうちにしたフンのついたティッシュを取り替えて、小鳥の雛専用のエサを食べさせる
スポイトで水に浸して柔らかくしたエサを与える。
店番をしながら、暇さえあれば、チッチと声をかけて頭をなでたり、抱っこしたりした。


3日くらいしたある日のこと。
チッチを自由に遊ばせていた時、呼ぶと、声のした方に突進してきたチッチが
じゅうたんをツンツンと突付いた
あれ? と思ってみていると、まるでエサをついばむように、あちこちを向いて
ツンツンとやっている。 これはもしかして・・・?
にゃおはチッチを深めの箱に入れて、そこにエサのアワ粒を置いてみた。
エサの方に誘導すると、チッチはそこへやってきて、なにやら、ツンツンする。
偶然に、エサの一粒がくちばしに挟まった。 チッチは起用にくちばしを動かして
エサの薄皮を剥くと、それを食べたのだった。
「チッチが自力でエサを食べた!!」
これは、ものすごく大事なことだ。 だって、自力でエサが食べられるってことは
人の手を煩わさなくて済むってこと。 生きていく道が開けたってことだもの。
にゃおはエサを多めに入れた小さな箱の中にチッチを入れた。
最初はヘタクソだったけど、だんだんと上手にエサをついばめるようになっていった。



妹の術後も順調で、明日にでも退院して帰ってこられるという頃、チッチはすっかり
自分でエサを取ることができるようになっていた。 ただ、いつもエサ箱の中に
入れていたのではフンをして汚してしまうし、狭苦しい。 だから適度に
スポイトでエサをやりながら、自由についばませるという形を取っていた。
すっかり元気になったチッチは、拾われた当初より、一回り大きくなった。
呼ぶと羽を振るわせる姿が、嬉しくて仕方ないというように見えた。
良かったね、チッチ。 これで生きていけるね。


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