| ロック(秋田犬・メス・血統書付き) |
恐らく、にゃおが物心ついて初めて触れた生き物が、この『ロック』だと思う。 彼女は血統書付きの秋田犬だった。 まだ、にゃおが幼稚園の年中くらいの時に ペットショップで購入したのだった。 ★ 彼女は、他の秋田犬の子犬と一緒に、テーブルに置かれたゲージに入れられていた。 にゃおは小さかったから、ちょうど顔がテーブルの上にのぞくぐらい。 母の指先が一匹の子犬を指し、店員らしき人物の手が伸びて、その子犬をつかんだ。 ツーンとしたシンナーの匂いがして、にゃおの視界から消えた子犬が再びゲージに戻された時、 その子犬の後ろ足の裏がマジックで真っ黒に塗りつぶされていた。 この子が、にゃおの 家にやってくるんだ。 真っ黒い鼻ずらをゲージに押し付けて、にゃおの顔を匂う子犬の瞳は 好奇心に満ち溢れていた。 ★ ★ 何日かして、その子犬が、にゃお家にやってきた。 当時のにゃお家は一戸建ての平屋の借家。 子犬だったせいなのか、それは玄関を入ってすぐの廊下の片隅に、寝床を与えられた。 名前は『ロック』。 メスなのになんでだろうと長い間、不思議だったにもかかわらず、その名の 由来について親に尋ねたことはなかった。 大人になって、ふと思い出して聞いた時、 「6月に買ったから、『ロック』よ」と言われて、まんまやんけ〜とツッコんだ記憶がある(笑) ★ にゃお家は玄関を入ってすぐの廊下の右側がトイレ、左側に4畳半の部屋が二つ。 廊下の 突き当たりが台所と風呂場という間取りだった。 実質的に廊下がロックの場所となったのだが それ以外の場所へは出入り禁止だったらしく、廊下に通じる障子戸はみんな閉じられていた。 家族が食事やくつろぐために部屋にいると、当然、子犬のロックは人恋しくなる。 ふんふん 鳴いてみても、今の時代のように、大型犬を家の中で飼うような風潮は少なく、やがては 外で暮らすことになるのだからと、決して部屋に入れることはなかった。 それでも、ふんふんと 鼻を鳴らして一生懸命障子の外からアピールするロック。 しばらくすると、その濡れた 鼻ずらで障子が破れてしまい、ロックの真っ黒い鼻先だけが障子の穴からのぞいた。 大笑いする家族。 でも部屋の中に入れてもらえることはなかった。 そのうち、ロックも ある程度知恵がついてきて、『鼻先で穴を開ける』ことを習得し、障子は穴だらけになった。 そして、上の方の穴からは鼻先を出して、ふんふんを匂いをかぎ、下の方の穴からは 黒い瞳で覗き込む・・・という毎日だった。 |
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