リョウT(桜文鳥・メス)

犬のチビが死んでしばらくは生き物を飼うことがなかった。
ある日のこと、まだ小学生だった妹が、鳥を飼いたいと言い始め、母も鳥なら
犬猫ほどの手間も要らないだろうし、いいだろうということで妹の望みを叶えることになった。
母と妹はデパートの屋上にあるペットショップへ出向き、「桜文鳥」という種類の
鳥を1羽連れて戻ってきた。 それまで家では巣から落ちたスズメなどを
飼ったことはあったけど、正式に何か鳥を飼ったことはなかった。
まだ幼鳥の文鳥はくちばしの端が黄色くて丸い目がキョトキョトとあたりを見回して
それだけで愛嬌を振りまき、みんなの微笑を誘った。
名前を決める時、「オス」だということでなぜか「リョウ(了)」という名前になった。

「リョウくん」と呼び親しまれて、文鳥は成長した。 くちばしはきれいな桜色になった。
リョウは妹が望んで買ってもらった鳥だから、形上は「妹の鳥」であったが、
籠から出して遊ばせると、どういうわけか、にゃおによく止まった。
肩に頭に止まっては、ところかまわずフンをされるのには閉口したけど
妹よりもにゃおに懐くので、だんだんと情が移ってきたものだった。

文鳥というものが、どの程度の知能を持っているのかは知らない。
それでも「リョウくん」と呼べば「チュクッ!」と返事をするし、籠の外に出していても
「リョウくん!」と腕や胸を叩くと、そこへパタパタと飛んでくるようになった。
羽根を切っていたので、思うように飛び回ることは出来なかったけど、
直線距離なら相当の間飛ぶことはできたのだ。 犬のように呼べば飛んでくる・・・
そんな姿に可愛さを感じないわけはない。 さらに、何かを食べていれば
口端をつついて、自分にもよこせとアピールしてくる。 仕方なしに口をほんの少し
開けてやると、ツンツンとつついて分け前にありついた。 時には口の中に
体半分を突っ込むような状態で口の中をつつくこともあった。 まさに
サバンナの中で大きな口を開けて口の中を鳥に掃除してもらうカバ状態。
今では鳥などから口移しで食べ物をやったりすると悪い病原菌が移ったりするので
そういう行為はつつしむようにとの獣医からの助言もあるけど、
当時はまだ、そういう情報は少なく無防備だった。 幸いに何か病気になることは
なかったけど、今だったらちょっとできないことだったかもしれない。

妹も「私の鳥なのに」とやきもちを焼くほど、二人?の中はヒートアップして行くのだった(笑)


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