それでもミシンを買いました 1  決心

     にゃお家にはミシンがない。
     主人の亡くなった母が使っていたという昔の足踏みの漕ぐミシンが蔵に入っているらしいが
     とてもじゃないけど、引っ張り出して使える代物ではない。

     ミシンがなければ、ないなりに生活は成り立つ。  ほつれた裾の直しや、スカートの丈直しなど
     少々のことはすべて手縫いでなんとかなるものだし、特別裁縫が得意でないにゃおは服を縫う
     などということは考えなかったから、あればいいなと思う程度で必要性は感じていなかった。

     そんなある日のこと、保育所へ子供を迎えに行くと、遠くからにゃおを見つけた子供が走り寄って
     来た。 なぜか不自然にズボンを片手で押さえている。 どうしたのかと問えば、ズボンがずり
     落ちるというではないか。 見ると、なるほど、縫込み式のズボンのゴムが伸びてしまい、半ケツ
     状態でかわいい桃尻がのぞいていた。
     さて、どうしたものか・・・ そのズボンはサイズ的にはまだまだ使えるものだったし、どこかが
     傷んでいるわけでもない。 ゴムさえ修理できればまだまだ使えるものだった。 入れ替え式の
     ゴムなら簡単だけど、縫込み式のものはどうしたらいいんだろう? 方法としては、新しい平ゴムを
     ズボンの内側に乗せてその上から縫い付けるしかないようだ。 ゴムは引っ張った状態で
     縫わないとギャザーが寄らないから意味がない。 だけど手縫いだとゴムを引っ張りながら
     縫うっていうのは至難の業だ。 何かに挟んで引っ張りながら縫うか、主人にでも引っ張って
     もらうか・・・ どちらも考えたら無理があって難しい。 ううむ・・・

     そんな時に、ミシンのことが頭をよぎった。 これから子供のことで、こうした場面も増えてくる
     だろうし、やっぱりミシンは要るのかもしれない。 そう言えば、自分のためにと買ったホーム
     ウエアのスカート。 裾がロング丈でそのままでは履けないので、裾上げをしようと思いながら
     なかなか腰が上がらない。 大体、針仕事をするなら、誰もいない時でないと無理だ。 切り
     落とす位置を決めてアイロンで折り目をつけて、簡単なしつけをしておいてから、まつり縫いを
     施す。 裁縫が苦手なにゃおにはかなりの時間と労力を要する。 
     ミシンは要る。 やっぱり要る。 にゃおは決意を新たにした。

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