それでもミシンを買いました 2  打診

     そんな、にゃおの心を見透かしたかのように、翌朝の新聞のチラシに、某社のミシンの売り込み
     広告が混じっていた。 しげしげと眺めてみると、そこには信じられないようなことばかりが
     書かれていた。

     「キュートで実用縫いが手軽にできる○○ミシン 45000円を7800円」
     「厚ものの縫いも薄もの縫いもO,K ××ミシン  68000円を8000円」 などなど

     ひゃ〜 こんなにミシンって安く買えるの? この元値と売値の落差はなんなんだろう? 
     見れば、ブラザーだのシンガーだのジャノメだの、ミシンの王道をゆくブランドミシン
     軒並み叩き売りのような値段で紹介されている。 
     ほんまかいな、へぇ〜 1万円くらいで実用縫いが出来たらいいじゃん・・・ 
     実際、にゃおは何か服を縫おうとか、刺繍をしたいなんて希望は持っていない。 あくまでも
     直線縫いができればいいのだ。 これならいいかもしれない。 機械には当たりハズレがあるけど、
     この価格なら万が一はずれても、惜しくない気がする。 しかもその広告主は以前から何度も
     チラシを入れているのを見たことのある名前で、本社は福岡だが広島やその他、中四国を
     中心に広く支店を設けて運営しているようだ。 広島支店はにゃおの住んでいる近くの区域に
     店がある。 修理や困った時はいつでも修理を引き受けてくれると書いてある。 
     ふうん・・・ サービスもまずまずなのかな? ここで頼んでみようかな?
     にゃおは何度もチラシを眺めた。

     物はたいした値段ではないかもしれないけど、こういうものは一応主人の許可を取る必要がある。
     ところが、2002年に入ったとたんに、家屋の補強工事や、井戸水をくみ上げるモータータンクの
     交換修理と立て続けに大きな出費がかさんでいた。 そのチラシが入っていた数日後も、お風呂を
     沸かすボイラーの配水管や減圧弁などが、どうもイカレて急に16000円が飛んだばかりだ。
     これらは必要に迫られたものだし、生活に支障をきたすものだから、主人も文句を言うことは
     ないけど、その上、ミシンときたら、あまりいい顔はしないかもしれない。
     さらに運の悪いことに、その数日間、主人の職場では仕事上のトラブル続きで、毎晩遅い帰宅が
     続き、本人も過労死モードに突入してて、すこぶる機嫌が悪い。 よっぽどのタイミングを狙わないと
     いけない状況だった。

     さらに数日が過ぎて・・・
     その日も、主人が遅い帰宅で午前様になった。 ただ、その日は、トラブルに一応の解決が
     ついたとかで、あまり機嫌は悪くない。 眠い眠いと言いながらも、遅い食事を取ったあと
     いつまでもコタツで話込んだ(にゃおはほとんど聞いてるだけ)
     なんか、いいタイミングだなぁ・・・ そう感じたにゃおは、主人の話がひと段落して話題が途切れた
     時にさりげなくミシンのチラシを取り出しながら、「あのさぁ・・・」と切り出した。

     チラシを見ながら、にゃおの話を聞いた主人は、あっさりと買ってもよいという許可をにゃおにくれた。
     いままでの重なる出費を考えたら、多少は渋い顔をするかもと覚悟していただけに、ちょっと
     拍子抜けだった。 ともあれ、これでミシンを買うことができる。 にゃおの気分は最高だった。

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