それでもミシンを買いました 5  苦闘

     ネジを外して、鉄板外して、ボビン取り出して、カマをのネジを調節して、戻して、試し縫いして・・・
     なんて面倒なんだろう・・・ 調子が合うまでこれをくりかえすっていうの?

     兄ちゃん曰く、
     「僕らでも一発で調子を合わせられるようになるのに10年かかりましたからね」
     げ・・・ マジですか? 
     なんでも、調子を合わせるのに10回くらいはこの作業を繰り返さなければならないらしい。
     しかも、何回も作業を繰り返すと、カマを傷める元になるから、できるだけ少ない回数で
     調節するのが望ましいのだそうだ。
     ますます面倒だな(-_-;)  しかも布の厚さが変わるごとに調節をし直さないといけないらしい。
     すでに気持ちが重くなってくる。 このミシンじゃダメかも・・・

     にゃおは、ふと疑問に感じたことを兄ちゃんに尋ねた。
     「裾上げなんかしてて、布の厚さが変わる場所に来たら、そこでストップして、今みたいに
     調節し直すんですか?」
     「そうなりますね。 でないと、今みたいにツレますから」
     あう・・・( ̄□ ̄;)!! これはダメだ。
     そして、この兄ちゃんの一言が、にゃおを禁断のゾーンへと導いてしまうのだった。

     「それは厳しいですねぇ。 自動糸調節のついたものはないんですか?」
     にゃおは、口にしてはいけないことを言ってしまった。
     この時、にゃおの頭の中には昔のミシンの姿が浮かんでいた。 確か、糸調節をするダイヤル
     みたいなのがあって、それを回して調節していた記憶があった。 このミシンにはその
     ダイヤルすらついていない。 そういうのはないのか? という意味でだったのだけど、
     15年ぶりのミシンはあまりにも久しぶりすぎて、各部分の名称なんかも忘れていた。

     兄ちゃんは、「今、ちょうど、車に積んでるのがあるんで、それを見てみますか?」と言った。
     この時、にゃおはすでに兄ちゃんの罠にはまっていたのかもしれない。
     兄ちゃんは車に戻って、別のミシンを一台持って来た。 ジャノメ製品だ。 
     出して見ると、それは今まで目の前に置かれたミシンとは比べ物にならないくらい立派な
     ものだということが、素人のにゃおにもハッキリわかった。 持ち運びのできるハードケース付き
     だし、サイズもそれまでのミシンより一回りくらい大きい。 そして、小窓がついていた。
     コンピューターミシンだという。 縫い方など、ワンタッチで記憶させたりできるらしい。 糸の
     縫い幅なども自由自在にコントロールできるようだ。 確かに操作は楽みたい。
     「これだと、自動糸調節がついてるんで、途中で布の厚さが変っても今みたいにツレる
     事もないし、調節する必要もないですよ」
     兄ちゃんは、そのミシンにも、にゃお自身にボビンの糸を巻かせたり、上糸や下糸の準備を
     実践させた。 そのあとで、見ててくださいと、まずは、にゃおが用意していた薄手の布を
     縫って見せた。
     確かに、いきなりキレイに縫えた。 今度は、兄ちゃんが持参した厚い布を取り出す。 それは
     キルティング生地を4つ折りにしたくらいの厚さのものだったが、薄手の布と取り替えてすぐに
     キレイな縫い目を披露してくれた。 ああ、これは楽!!

     「これ、いいですねぇ」
     きっと、にゃおのその言葉にはもう、これが欲しいっていう無意識のメッセージが溢れていた
     のだろう。 

     「ただ、こちらは、ちょっと高くなるんですよ」
     「おいくらなんですか?」
     「え〜と、21万8000円になりますね」

     はぁぁぁぁぁ〜〜〜???
     に・・・にじゅういちまん、はっせんえん???( ̄□ ̄;)!!

     にゃおは、卒倒しそうになった(いや、この時、卒倒しとけばよかったかも)。

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