ローンさりげなく

     前記事(百恵伝説)にも、ちょっと書いたのだけど、にゃおの父は借金大王です(苦笑)
     自分で事業を始めては結局、行き詰まり、残るのは借金だけっちゅうわけ。
     それが理由で両親は、にゃおが中学2年の時に離婚しちゃった。

     この父って人、にゃおが言うのもなんだけど、働き者なのだ。 いつも何か仕事をしてる。
     ただその仕事が長続きしないだけ。 小さい頃は、にゃおを可愛がってくれて、あちこちへ
     遊びに連れて行ってくれたマイホームパパ型の人。 恐らく、「人に使われるのが嫌。 だから
     自分で事業を起こす(つまり自分が社長ってわけね)」ってことさえなかったら、とてもいい
     人だったはず。 母ともよく、「父親としては申し分ないけど、家庭人としては失格だったね」
     って話すくらい。

     父のもうひとつの偉大なところ、それは借金に対する姿勢
     普通ねぇ、借金してさぁ、金融会社から返済の催促が来るじゃない? びびるでしょ?
     昔からサラ金なんて所は結構、怖い方がいて、返済を迫ってくるじゃないですか?
     どうも平気だったみたいなのよ。 返す気はあるけど、返せないものは返せない・・・ってな
     考え方だったみたい。 返せないなら借りるなって感じだけど(笑)

     にゃおはほとんど記憶にないんだけど、まだ小さい時に、借金の取立ての電話が鳴って
     母はノイローゼになったらしいのよ。 父は仕事で家を空けてほとんどいなかったんだけど。
     ずっと後になって話してくれたことだけど、その時、あんまり催促がひどかったりして
     困り果てた母は、精神的に弱い人のふりをしたんだって。

     サラ金「あんたねぇ、人から金借りといて返さないってのは、どういう了見?」
     母「はぁ・・・ そうですねぇ・・・(おバカっぽい受け答え方)」
     サラ金「このままで済むと思うなよ」
     母「はぁ〜い。 済みませ〜ん(思いっきりトロっぽく)」
     サラ金「オマエ、バカか?!」
     母「バカってなぁにぃ〜?」

     ってな具合。 相手は埒が開かないと思ったのか、電話を切ったそうな。
     それっきり、そこからは電話がかかってこなかったんだって。 母ちゃん、やるな。
     でも、そこまでしなくちゃいけない気持ちってどんなに惨めで辛かったことか・・・(ノд-。)

     こんな状態なのに、父はしょっちゅう、「大丈夫だから放っておけばいい」って言ってたらしい。
     大丈夫って、これのどこが大丈夫なんだかわかんないんだけど(苦笑)

     そうして、抱えた何千万もの借金、父は田舎の裕福な家の5人姉弟の末っ子として
     甘やかされて育ったから、兄弟たちがみんなして所有してた山を売ったり、お金を出して
     返済してくれたんだけど(それがきっかけで広島へ帰郷したのね)、それ以外の
     小口の借金はどうやらみんな踏み倒したらしい。 小口ってったって、何十万とか何百万とか
     って単位だから決して小口とは言えないけど。 相手も法外な利息で貸してる手前、堂々と
     法的手段に訴えてこれなかったのよね。 今、にゃおが大人になって思ってみると、よく
     それで済んだなって思う。 金融業界って横に全部つながってて、誰かの借金を誰かが
     肩代わりしようものなら、その情報が流れて他のところもみんな、その人のところに取り立てに
     行くとかするらしいじゃない? 親戚の家に押しかけて行かなかったのが不思議なくらいだし、
     コンクリート詰めにされて海に捨てられたっておかしくないのに、本当にラッキーなヤツ(苦笑)

     そんなこんなで、戸籍上は父と縁の切れたにゃお一家。
     だけど、まぁ、嫌いで別れたわけではないし、父の実家がにゃおたちが住んでた家(離婚した時
     父が家を出た)のすぐそばにある関係で、ちょこちょこ家に帰ってきたりはしてたんだよね。


     にゃおが大人になって自宅で中学生相手に英語を教えるようになっていたある日のこと。
     一本の電話が鳴った。 にゃおが電話を取ったのだけど、向こうから聞こえてきたのは
     なんとも笑える言葉だった。

     先方「もしもし、こちら『ローンさりげなく』ですが」
     にゃお「は? なんですと?(すでに口元が笑っている)」
     先方「『ローンさりげなく』です」

     もう父が家を出てから10年近く経ってたのに・・・
     パパりんめ、また、やった(踏み倒した)な・・・
     可愛そうな『ローンさりげなく』は、返せないものは返せない主義の父にうっかりと金を貸して
     しまったものの、返済してくれる気配がないばかりか、行方不明で消息がつかめないからって
     にゃお家に電話をかけてきたんだそうな。 居場所を知りませんか・・・ってね。
     知らんわ。 なにをしてるんだか、全国を飛び回ってる父なんだもの。 
     知ってたとしても教えない。 父をかばうんじゃなくて、それをきっかけに、にゃお家が
     金銭トラブルに巻き込まれるなんてのは、もってのほかだもん。 

     「さぁ、わかりませんねぇ。 もう10年以上、連絡ないですし」
     可愛そうな『ローンさりげなく』は、「それじゃ、連絡があったら教えてくださいね」と
     無理な事を懇願しながら、実に落胆した様子で電話を切った。 ご愁傷様なことだ。
     ローン側に同情するってのもおかしな話だけどさ(~_~;)

     今でも、ふっと、『ローンさりげなく』という言葉を思い出しては笑ってしまうにゃお。
     最初は、ふざけてるのかと思ったけど、のちに街の電柱に『ローンさりげなく』の広告が
     張ってあるのを見て、実在の金融業者だったんだなぁと妙な感心をしたものだ。
     あの後、一回だけ電話が来たけど、それっきり。 果たして今も『ローンさりげなく』は
     健在なのかしら。 不景気で厳しい世の中だから、潰れたかなぁ? まさか、父が踏み倒した
     借金のせいで倒産なんてことになってなきゃいいけど(≧m≦*)

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