難儀なしろかき

     通常、にゃお家では、畦(あぜ)つけをしてから約1週間くらいあとに「しろかき」をするのよ。
     主人は仕事を持ってるから、農作業は土日でないと出来ない。 ところが、主人の職場では
     仕事内容の関係で、休日出勤があったり、当直(泊まりこみでの仕事)があったり、早朝出勤、
     深夜にまで及ぶ残業と、仕事時間が一定してない。  一応、勤務時間は何時から何時までって
     決まってはいるけど、その時間どおりに仕事が終わることなんて、ほとんどないのよ(苦笑)

     毎月、1ヶ月分の仕事のローテーションが発表される。 5月の予定表では、畦(あぜ)つけをした
     1週間後の27日(日)が休日出勤にあたっていた。 この日はしろかきは出来ないよね。
     相変わらず水は少ない。 畦(あぜ)つけ後、なんとか水を入れようとするのだけど、ほとんどと
     言っていいほど水は入っていなかった。 畦(あぜ)つけと違って、しろかきには大量の水が要る
     こんな程度じゃ、到底、しろかきは出来ない。 この様子だと、26日(土)にしろかきをするのは
     絶望的だった。

     休日出勤をすれば、代休という形で月曜日が休めるので、この日に決行することにした。
     この日を逃したら、もう田植えが間に合わない。 庭にはすでに注文した田植え用の苗箱が
     ところ狭しと並んでいる。 5月の陽射しはすでに殺人的。 夏を思わせるような暑さの日も
     あって、朝晩の水やりをしても、苗が水不足で枯れ気味になっちゃってる。 おまけに苗箱に
     入ってても少しずつ苗は生長する。 あんまり伸びすぎると田植えの時に田植え機のツメが
     上手く苗をひっかけられなくて(からまるってこと)、きちんと植えられないんだよね。
     どうしても、6月の第1週目の土日あたりで田植えをしたい。 そのためには、もうこの時しか
     ないんだなぁ。


     2001年5月28日(月)
     前日の休日出勤に加えて、その前の週は出張などもあったりして、主人の疲労もたまってた。
     午前中は体が動かないし、気力もないということで、午後からいよいよしろかきとなった。
     水の入りは、まぁまぁ。 この日も朝から晴天だったから、水が蒸発してしまうことが心配。
     しろかきと言っても、にゃお家の場合、いきなりトラクターで田んぼに入るわけじゃない。
     その前に、「元肥入れ」というのをするんだね。 これはいわゆる田んぼの栄養剤。 にゃお家の
     場合は10キロ入りの粒剤の肥料を約4袋入れる。 広い田んぼだから、まんべんなく肥料を
     まくのは大変。 肥料まきの機械っていうのもあるみたいだけど、にゃお家にはそんなものは
     ない。 人力がたより。 バケツ(3〜4キロくらいの肥料が入る)に移し替えては主人が
     田んぼの中を歩きながら手でまいていく。 にゃおは主人が肥料をまき終わったらバケツに
     新しい肥料を移し替えて渡す役目。 田んぼの真中の方でなくなっちゃうこともあるから
     その時は、大体の見当をつけて、その近くまで、えっちらおっちら重い肥料の袋を下げて
     行く。 こうして、何往復もしながら肥料をまき終えたら、今度こそは、しろかきなのだ。

     14時30分からトラクターはついに田んぼに入った。
     この状態だと、にゃおの出番はなし。 ただ、主人のやることを見てるしかないのよ。
     水が十分ある時だったら、水が多いから、制限しろとか、足りなくなってきたからもっと入れろとか
     お役目があるけど、今回は水が思うようにないんだから、そういう必要もない。 
     ところが1時間も経たないうちに、主人がトラクターを止めて降りてきてしまった。
     ずいぶん不機嫌そう。 「キツイから休む」と言い残して家の中に入ってしまう。  水がかなり
     入っているように見えても、こねてみると、水がどんどん土に吸収されてなくなってしまう。
     しろかきをするには田んぼの土全体が水にヒタヒタ状態でするのがベストなんだって。 
     だけど、どう見ても、水が足らない。 ホットケーキの粉を牛乳や水でこねる時でも、水分が
     少ないと混ぜてても上手く混ざらないし、こねてるものにダンゴのようにくっついちゃったり、
     重かったりするでしょ? あんな感じ。 疲れてる上に、思うようにできなくてイライラしてるんだろうな。
     陽射しはかなりキツイ。 このまま田んぼを放っておいたらますます土が固くなっちゃうよ?

     時刻が16時になろうとしていたので、にゃおは保育所に預けてる子供を迎えに行くことにした。
     こういう時に、本当に保育所はありがたいね。 これが幼稚園とかだったらもう14時半頃には
     帰ってきちゃうもんねぇ。 迎えに行く手間はあるけど、いざとなったら17時半頃までは延長で
     見てもらえるから、保育所さまさま。 子供のことを気にしながら作業をしなくていいしね。

     子供と戻ってみると、主人は再びしろかきをやっていた。 それからはノンストップの作業。
     これ以上遅れると、夕方になって夕食の準備が始まったりして生活廃水が流れてくるからね。
     にゃおは子供を外で遊ばせながら作業を見守る。  水が少ないから、思うように土が
     ねれない。 高い部分の土は低い部分のところへと移動させて、全体が均等に平らになるように
     しなくちゃいけないのに、土が重いから、思うように移動させられない。 何度も主人が
     「水が少ないけぇ、やれん(水が少ないから上手くできない)」と愚痴をこぼす。 18時半を過ぎる
     頃になって、「もう、やめた!」とヤケクソ気味で主人がトラクターを降りてしまった。
     いつもだったら、綺麗な水面が広がるばかりなのに、あちこちに土が水から出ている。
     素人のにゃおが見ても、きちんと平らになっていないことがわかる。 

     にゃおがトラクターの泥を水で洗い流す間に、主人は「えぶり」と呼ばれるT字型もので
     (野球のグランドを成らすトンボみたいな感じを想像してね)少しでも土が均等になるように
     していたけど、やっぱり水が少ないから思うようにならなくて、すぐに止めてしまった。
     19時10分。 やっと、一応の後片付けも済んで、家の中に入ることができた。 
     ああ、水が十分あったら、もっとスムーズにできるのに。 同じ時間がかかっても、気分的に
     満足感があるのにな。 
     それでも、しろかきが一応は出来たからいいとしなくちゃね。 しろかきしないことには
     田植えが出来ないんだもん。 これで来週には田植えだな。 そこまで済めば、大きな
     山をひとつ越えたことになるもんねぇ。

     ・・・だけど、「そうは とんやが おろさない」ってのが、今年のキーワードなようで・・・
     にゃおたちは翌日、さらに愕然とする事実を目にするのだった。 お〜のぉ〜!!

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