熾烈な水取合戦

     にゃおたちが田んぼに水を引くために使う主な水路は、通称「大川」と呼ばれる、大きな川から
     水を引いている。 その水路をたどっていくと、途中で山の方から流れてくる水路と合流する。
     それが一本になってにゃお家の前の用水路を流れていくのだ。
     この合流後の水を使うのは、にゃお家ともうひとつ、にゃお家の上にある田んぼの2軒だけ。
     それ以外の田んぼは、合流する前の途中にあるので、大川からの水のみで、すべてを
     まかなっている。 当然ながら、この辺の田んぼは大体同じ時期に同じような作業をするから
     大川の方からの水はほとんど期待できない。 にゃお家と、もう一軒の田んぼは、合流する
     もう片方の水路を流れてくる水が頼りになるのだった。

     畦(あぜ)つけのために水を引こうとするものの、ほとんど用水路に水がない。 これは異常事態。
     にゃおは水路を逆に辿って歩いてみた。 合流地点まで来て、唖然とした。 大川方面からの
     水路は干上がっている状態で、底が白く乾いている。 これは大川から水路へ向かう水門が
     閉じられてるか、どこかの田んぼが水をせき止めて入れているのだろう。 だけど、もう一方の
     山から続く水路にはチョロチョロと水が流れてるだけ。 なんでやねん? 通常、この時期は
     こっちの水路から、相当量の水が流れてるはずなのに・・・
     あ!!!
     にゃおは突然思い出した。 確かこの山の方で数年前の土石流災害で被害にあった場所の
     修復&補強工事をするって回覧版が回って来てたっけ。 当然、たくさんの土砂が水路にも
     落ちるわけで、そうなると泥水が流れることになる。 だから水路に流す水を制限しているのかも!

     ヤバイ、ヤバイ、ヤバイぞ!!
     これじゃ、田んぼに水なんか入らないよ。 他の田んぼが大川からの水路で水を引き終わった
     時間帯に入れるようにしなくちゃ。 だけど、それって夜遅くの時間か、朝、めっちゃ早い時間帯で
     ないといけない。 だって、この辺の用水路は各家庭の生活廃水も一緒に流れるんだもの。
     朝晩は食事の支度や後始末、お風呂や洗濯というように汚れた水がたくさん流れる。 そんな
     水を田んぼに入れるなんてイヤだよぉ。

     大体、用水路の水がそこそこキレイになるのは夜の10時を回った頃から。 ということは
     その時間頃まで待って、水を入れ始めるか、朝まだみんなが寝静まってる頃から入れるかの
     どちらかだ。 夜に水を入れるのは邪道らしいけど仕方ないんだよね。

     こうして、わずかに流れる水量が少しでも増える夜を見計らって、田んぼに水を引く。
     大丈夫かなぁ。 この時期はもう夏並みに暑い日もあるから、少ししか水が入ってないのに
     いい天気だと干上がってしまって、何の役にも立たなくなる。 
     こりゃあ、前にも増して、水取合戦は熾烈を極めそうだぞ(-_-メ)

            目次へ     次へ     HOME