お手てが痛い

     にゃお家の田んぼは、変形した形になっているけど、だいたい、台形だと思ってもらうといい。
     長い辺に当たるのが、畦(あぜ)ってわけね。 この畦(あぜ)の部分、何でだか最初の
     数メートルと最後の数メートルがコンクリート畦(あぜ)になってる。 この最後の数メートル部分の
     コンクリートが老朽化してきて、だんだんと欠けたり、ひびが入ったりしていた。 
     歩く時にガクっとして危ないし、ひびが入ってると水漏れするから直しておこうということになり、
     ホームセンターで耐水性のセメントを購入。 本当はちゃんと砂と混ぜるやつがいいんだけど
     時間的なことや面倒くささを考えて、水で練るだけってやつにした。 

     5月中旬のある日曜日。
     その日は『井出掃除(いでそうじ)』と呼ばれる用水路の清掃日だった。 町内清掃とは違って、
     田んぼを作ってる人たちが、自分たちが使う用水路を清掃するのが目的。 にゃお家は今、
     作ってる田んぼの用水路と、ちょっと離れた場所に、今はすっかり休耕田で荒れるばかりに
     なってる田んぼの用水路と2箇所の掃除に行く義務がある。 行かないと『出不足』という
     罰金を取られちゃうのだ。

     その清掃には主人が出向き、それが終わってからは、畑に夏野菜の苗を植える作業。
     そして午後3時半を過ぎてコンクリート畦(あぜ)の修理となった。
     この時期、気温はさほどでなくても陽射しはきつい。 この日は天気がよかったから
     外にずっといると汗をかいてしまうくらい暑い。 あんまり暑い(陽射しがきつい)と
     せっかく修理したコンクリートがひび割れてしまって、あまりよろしくないのだ。
     それで陽射しが柔らかくなってきた夕方近くから始めたってわけだ。

     にゃおがせっせとセメントを練って、主人がそれで塗りつけていく。
     その様子は、まるで左官屋さんだ。 時には、にゃおもやってみるけど、なかなか上手く行かない。
     だんだんと時間が過ぎて、日が暮れる。 手元が見えにくくなってきたからやめると
     主人が立ち上がった。 確かにあたりが薄暗くなっている。 まだ、もう少しデコボコがあるし、
     乾くと、どうしても、ある程度のひび割れがするので、それを修理しておくのと、石垣の草が
     また伸びているので、もう一度、取っておくようにとの指令が出された。  
     主人は裸足で田んぼの中に入る事が多い。  もちろん、畦(あぜ)の上も裸足で歩く。
     セメントがデコボコしてると水でふやけた足が簡単に傷ついてしまう恐れがあるんだよね。
     足を怪我してしまったら田植えができなくなるもん(バイキンが入って別の病気になっちゃうから)。

     翌々日、子供を保育所に送ると、にゃおは早速、田んぼへ出て、左官屋さんに変身した。
     今回の指令は、ほぼ出来上がった部分を滑らかにすることと、ひび割れた個所を
     直すことだから、そんなに難しくない。 練ったセメントを少しずつ塗りつけては指先で
     均(なら)していく。 最初は軍手をしてたんだけど軍手にくっついちゃて、思うように
     塗れないから、途中から外して素手でしちゃった。
     そして、これが、とんでもないことになっちゃったんだな。

     順調に塗り塗りして、だんだんこっちも面白くなる。 そうすると欲が出て、もっときれいに
     しようなんて思っちゃうんだよね。 グリグリとやってると、左手の人差し指の腹に
     ツキっとした痛みが走った。
     あれ? 何か、痛かったぞ?
     ふと自分の指先を見て、にゃおはビックリした。

     な・な・なんじゃぁぁぁぁぁ〜〜〜〜Σ( ̄□ ̄;)

     にゃおの人差し指の腹は、直径約5ミリくらいの範囲で、ペロリと皮が剥けていた
     しかも、その中心に、砂粒大のセメントがめり込んでいるじゃないの!!

     人間ってのは、よくよく精神に左右される生き物らしくて、自分の指先を見て、
     大変だぁって思った瞬間に、ズキン、ズキンと痛み出した。
     うああああ、痛い、痛いよぉ〜〜〜
     さっきまで、何ともなくて、平気で塗り塗りしてたくせに、指先の状態を認知するや
     痛み出すんだからね(笑)

     どっちにしても、この状態はヤバイ。 早くめり込んだセメントと出して消毒しなくちゃ。
     にゃおは急いで家に入って流水で洗い流しながらセメントを取った。 
     あああああ、痛い、痛いわ。 水がしみるぅ(T_T)
     さらに消毒をして『コロスキン』というセメダインのような臭いのする液体バンソコウを
     つけておく。 これが、また、しみるんだなぁ。 しかも穴が開いた個所。
     ひぃぃぃぃ〜〜〜〜〜って絶叫したね(苦笑)

     ああ、セメント塗りは、もうお終いにしてもいいけど、まだ石垣の草取りが済んでないんだな。
     幸い、怪我をしたのは左手だから草取りに大きな支障はないけど。
     再び田んぼに出て、草を取るものの、テンションが下がってて調子が出ない。
     怪我をしたり、細かなことで時間をロスしたりして、結局、全部取り切れなかったし。
     時間も、もうお昼の12時半を過ぎてるじゃん。 え〜い、もう、やめだ、やめだぁ!!
     半分、ヤケクソになって家に帰り、手を洗おうとして、さっきの指先の怪我が目に止まった。

     ヤバイ(−−b) これじゃ、炊事洗濯ができねぇぞ(大汗)

     左手の人差し指って、案外、使う頻度が高い。 水を使う時は手袋をすればいいとして
     食材を切る時には必ず指で押えなくちゃいけないし、洗い物をする時も
     この指が使えないと力が入らなくて取り落としそうになる。 普段、何気なく使ってるけど
     改めて見ると、こんなにも不便なものなんだね。 もちろん、パソコンのキーを叩くのも
     難しいしさ(笑)

     幸い、2日くらいで傷みは半減し、物が当たっても痛むことも少なくなったけど、
     本当に失敗しちゃったよ。 田植えまでは、もう怪我をするわけにはいかないもんね。
     今度は、もっと慎重にしなくちゃ(~_~;)

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