癒しの時間

     にゃおが結婚して今の地にやってきた時、にゃおんちには2匹の猫がいた。
     正確には、にゃおんちの猫ではない。 近所の飼い猫なのだけど、ほぼ一日中、にゃお家を
     テリトリーにして居る猫たちだった。 いつ家に帰ってるのかと思うくらい、いつも家の周りにいた。
     彼らは、首輪がしてあるから飼い猫だという事がわかるだけで、どこの猫で、なんという名前
     なのかもわからなかった。 にゃおと主人は勝手に名前をつけて呼んでいた。

     猫好きというのがわかるのか、猫の方も友好的だった。
     にゃおも折に触れてニボシだとか、カリカリをわざわざ買って与えていたから余計に懐いてくれた。


     農作業というのは、基本的には1年中ある。
     田んぼがある時期はもちろん、冬場でも、畑の世話をしたり、庭の雑草を取る必要がある。

     庭先で農作業をしていると、必ずどこからか猫たちが現れて、にゃおの近くにいてくれた。
     時には、すりすりしてくれたり、すぐそばで寝転んだり。
     にゃおも時々、手を伸ばして猫をなでたり、声をかけたりした。 面倒くさくて単調な仕事が
     ほんの少し、楽しくなる瞬間だった。

     けれど、猫たちも、2時間以上にわたる、にゃおの仕事に付き合うのは疲れるのか、大抵は
     30分もすると、いつの間にかどこかに行ってしまうのだった。


     今年の6月になって、にゃお家に子猫がやって来た。
     生まれて2ヶ月ちょっとの茶トラの女の子。
     賑やかなきょうだいとの生活から離されて、心細い事もあって、いつも、にゃおの後をついて来た。
     だから、農作業のために外に出ても、すぐに廊下にやって来て、ガラス越しに、にゃおを眺める
     最初はニャーニャーと鳴いているけれど、そのうち、静かに座って眺め出す。
     時にはあくびをして、時には寝そべり、時にはスズメの声に目を見開き・・・
     その姿を眺めていると飽きない。
     にゃお家にやってくる2匹の猫たちは、いつの間にかいなくなってしまうけど、子猫はいつまでも
     にゃおが見える所にいる。 にゃおも視線を上げると、いつも子猫を見る事ができる。
     子猫の愛らしい姿やしぐさは本当に心を和ませてくれる。
     にゃおが田んぼの見回りに出かけてしまうと、立ち上がって、にゃおの姿を追う
     遠い田んぼの向こうからでも、茶色の猫の姿が廊下に見えると、嬉しくて手を振ってしまう。

     生き物は心を和らげ、精神を安定させてくれる効能があるという。
     痴呆老人の人たちが生き物に触れると、痴呆の進行を緩やかにしたり、改善する兆しを
     見せるという。

     にゃお家に来た子猫は本当に癒しの天使。
     ずっと元気で、にゃおの事を和ませてくれるといいな(*^-^*)

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