生まれて間も無い頃から、世の中がどういうものかを目の当たりにしていた。
物心ついた時には、父親の言い付けを守る人間になっていた。
父は言う。
「この世の中には、3つの人間がいる。
一つは、手を差し伸べる側。
一つは、手を差し伸べられる側。
・・・そして最後に、手を差し伸べる価値の無いもの。
お前は、手を差し伸べる側になれ。
間違っても、価値の無い人間にはなるな。」
幼い頃の自分には、多分父の言っている事の意味など分からなかっただろう。
とにかく、手を差し伸べる側になる。
それだけが、自分の中にあった。
小学校、中学校と当然のように生徒会会長を歴任した。
実際、評判は良かった。
手を差し伸べる事がきちんとできていたから。
そして、あの日。
私はいつもの通り、学校を回っていた。
あわただしい日常。それでも満足感があるのは、
自分のやっている事が正しいからだと思っていた。
その日だけは、いつものコースを外れ、校舎裏に行ってみる。
そこで見たものは・・・。
たばこを吸っている生徒達。
「何をやっているんだ。」
私は言う。
「あー?お前の知った事じゃねぇよ。」
一人が返す。
「未成年なのに、たばこを吸っていていいと思っているのか?
ほら、とっととたばこを出せ。没収する。」
すると、その一人は突っかかってきた。
「・・・うぜぇんだよ・・・。」
その言葉と共に、迫り来る拳。
数人に殴られ、蹴られながら、私は思った。
手を差し伸べても、それをまったく無視する人間がいる。
こいつらは、無視するどころか、それに対し反抗さえする・・・。
そうか、
これが、父がなってはいけないといっていた、
サシノベルカチノナイニンゲンナノカ・・・。
その時、私は心に決めた。
こいつらのような人間など、手を差し伸べるべき人間ではない。
手を差し伸べて、それに反抗するような人間は必要無い。
見付け次第、即刻排除すべきだ、と・・・。