私は高校に入学した。
その頃だった。
学校に登校すると、一人の生徒を見付ける。
川澄舞。
自分の手を犬に噛ませている生徒。
周りからの奇異の目。

 こいつは、何とか手を打たないといけないかも知れんな・・・。

 その時、現れた影。
「あの・・・良かったら、佐祐理のお弁当、食べさせて。」
あれは・・・倉田佐祐理か。
確かそんな名前の親戚がいたと思ったが・・・。
まあいい。今日の所は見張るべき相手が見つかっただけでいい。

 高校も2年の秋。
私は生徒会長の座に就いた。
私のした事は、簡単な事であった。
秩序維持と、それに反する生徒の監視、排除。
・・・しかし。

 川澄舞の動向だけはいまだに掴めずにいた。
色々な噂が飛び交ってはいるものの、決定的な証拠を見付けた訳ではなく、
排除する事も出来ずにいた。

 窓ガラスが割れるという事件もあったが、
それすら川澄に接点を見出す事が出来なかった。

 そのまま年も明け、この高校に一人転校生が現れた。
相沢祐一。
廊下ですれ違った時、私の中に二つの思いがよぎる。
奴は危険だ。川澄と同じような感じがする。
こいつもどうやら、排除すべき人間になりそうだ。


 ・・・そしてもう一つ。
この男が、祐一こそが、川澄を排除する決定的な場面を作ってくれる。
そういう気持ちがあった。

 そして少し経ったある日。
再び窓ガラスが割れるという事件が起きた。
それと共に、川澄が夜に学校を徘徊しているらしいという情報も入手できた。
やはりあいつが、その場面を作っているようだ。
その漠然な予感は、確信に変わった。

 川澄、お膳立ては整ったようだ。
その時こそ、お前を徹底的に排除してやろう。
この私の、信ずべきただ一つの信念にかけて。

 そして、舞踏会の日。
遂に私は、川澄を排除する、格好の事件に遭遇した。

 

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