舞踏会に川澄が来ているとは意外だったが、
もしかしたら今日こそ尻尾を掴まえる事が出来るのではないかと期待していた。
佐祐理も来ているようだ。そして相沢祐一も・・・。
川澄が会場で踊っている姿。
ふん、今くらい楽しんでおくといい。
これから先、お前はここにいれないだろうからな・・・。
そして、佐祐理が会場から出て行く。
そして、事件は起こった。
何が起こったのかは分からなかった。
会場を出ていった佐祐理が、空を舞う。
何かに吹き飛ばされたかのように。
川澄の方を見ると、顔が青ざめている。
そして、目に力が戻ったかと思うと、
川澄は剣を取り出した。
必死になって剣を振り回すその姿。
何か、見えないものと戦っているようにさえ見えた。
そして、川澄が動きを止める。
会場は、見るも無残な姿に変わり果てていた。
最初の佐祐理が吹き飛んだ所を見ていたものはいないはずだ。
これは、絶好の機会だ。
そして、私は叫んだ。
「退学だ!これは由々しき問題だぞ!」
とりあえず、その日はすぐに解散となり、私は家に戻った。
これで、遂に川澄を排除する事が出来る。
何かが引っかかるが、気に留める事はないだろう。
大事をおこせば、小事などは関係ないのだから。
それから少し後、学校が妙な空気に包まれていた。
どうやら前からあった、
生徒会への反乱組織の行動が活発化してきているようだ。
その中心に、あの二人の姿があった。
どうやら川澄の退学を取り消そうと努力しているようだ。
そして、遂に佐祐理が抗議に訪れる。
目の前には、山積みとなった署名。
必死に説得しようとする佐祐理と、途中から入ってきた相沢。
私は彼女たちの要求を突き放した。
その日、私は眠れなかった。
川澄の排除に成功したのに、この後悔の念はなんなのだろう。
その時に分かっていた事実は、2つ。
信念が揺らぎ始めている事。
その信念を守るために、彼女たちの要求から耳をふさいでいた事。
信念が揺らぎ始めている?
一体何故・・・何の為に。
揺らぐ事の無いはずの信念と、佐祐理達の言葉との間に挟まれ、
私は今迄に味わった事の無い、「苦悩」というものにさいなまされていた。