3つの別れ、4つの邂逅(斉藤ストーリー)第2章


その頃、父さんの遺言は絶対だった。
母さんを俺が守る。
俺は決して暗くなってはいけなかった。

最初の頃こそ暗くなりがちだった俺だが、時が経つに連れそんな事も無くなった。
実際父さんの遺言によって立ち直ったものだったし、
母さんを守ると言う父さんから受け継いだ使命があったから、
俺はすぐに立ち直る事ができたと思う。

季節は秋。
クラスメートの誘いを断り、一路家へと戻る。
家には母さんがいた。
父さんが死んでから、母さんは就職口を探していた。
しかしただでさえ女性の就職が難しい頃だったうえ、もう母さんの年齢では
雇ってくれるところなどあるはずも無かった。

母さんも無理して笑っていた。
就職が決まっていない母さんは、パートと内職を掛け持ちして俺を育ててくれた。
当然貧しかった。父さんの残した貯金も後わずかになっていた。
しかし、俺は幸せだった。

母さんを守ると言ったのに守られているのは少し悲しかったが。

しかしそれも、本当に家計が苦しくなってから、
母さんはほとんど笑わなくなった。
日に日に借金が増えていく。

10月になった頃、母さんは決心をしたようだった。
それから一週間後、何故か家に大金が入ってきた。
俺はそれが何を意味しているのか、まったく分からなかった。

それから母さんは良く家を空けるようになった。
大金が入った事と、母さんが家を良く空けるようになった事で、
母さんに就職口が見つかったと喜んでいた。

母さんはまったく笑わなくなった。
仕事で疲れているんだろうと思い、あまり気にしなかった。

母さんはそのうち、俺にも顔を見せないようになった。
違和感に気づいたのは、その頃。
そこで俺は、母さんを尾行しようと思った。

母さんの後ろをついていって、たどり着いたのは小さな会社のようだった。
母さんはその中に入っていった。
やっぱり母さんは就職口が見つかっただけだった。
そう思って、俺はその場を後にした。
そしてそれ一回で、俺は尾行を止めた。

そんなある日。
俺はいつもの通り学校を後にした。
その日は北川と一緒に帰っていた。
北川と帰るときは、いつも路地裏をとおって人通りの少ない道をとおる。
2人で他愛も無い話をしていると、北川が何かを発見した。
「おい、あれって斉藤の母さんだよな。」
と見てみると、そこには辺りを見回している母さん。
俺は胸騒ぎがして、
「北川、また明日な!」
そう言って、俺は北川と別れ、母さんを見ていた。
すると母さんは、もう一度辺りを見回した後、民家に入っていった。
5分くらい経っただろうか。
母さんは民家から出てきた。そしてその手には、

財布と宝石が握られていた。

俺の周りで、何かが崩れ去った。
父さんの言葉が、頭の中でかすれていく。
俺は許せなかった。今まで信じていた母親は、
その貧しさに耐え兼ねて、空き巣に手を出していた。
母親の裏切り。そうとしか思えなかった。
俺は走った。その先には公衆電話。
「もしもし・・・警察ですか。○●さん宅で・・・あ・・・空き巣が発生しました・・・」
俺はそうとしか言えなかった。
もうその時、母親は母親とはおもえなかった。

1時間後、母親と呼んでいた人は逮捕された。
信じていた人に裏切られてできた傷で、俺は北川以外誰とも話さなくなった。
北川だけが話し掛けてくれた。
それ以外のクラスメートは、白い目で見るだけだった。
そこは本当に俺には地獄のように感じられた。

しかしそんな苦しみも最初の邂逅で吹き飛ばされる事になる。
______________________________________

いかがでしたか。
こんなベタなオチしかかけない自分が嫌になってしまいます。
さて今度は少しカノン本編に近づかせていきます。
またコメントがもらえるのを期待しています。
以上、無人でした。

 

次へ