4つの別れ、3つの邂逅(斉藤ストーリー)第3章


父親も母親もいなくなった俺は、特に親戚と呼べる人もいなかったため、
施設に預けられる事になった。
いつもの通り学校にも通えるようだったし、
志望校の受験も許可してもらえた。
学校の方でも北川が気さくに話し掛けてきてくれたため、
独りで過ごす事も無くなった。

冬。俺は何か考え事があると、
施設の近くにあるもののみの丘に行く事にしていた。
その日も少し考え事があったので、もののみの丘にいった。
さすがに冬になると、ただの風が研ぎ澄まされた刃のように感じられる。
ここからの景色は、冬独特の澄み切った空気で、いつもより良く見える。
この辺りは、昔からの伝説があるので、
この街唯一の観光スポットになっている。
その伝説は、狐に関するものだった。
「もののみの丘には、数年間生き続けて妖狐になった狐がいて、
その妖狐に頼むと、一番会いたい人に出会える」と言うものだった。
俺はこの話を信じてはいなかった。
当然、伝説と呼ばれているものだし、信じるにしても子供だけだと思っていた。

いつものようにそこで考え事をしていると、そこには狐がいた。

黄金色に光る毛並み。しかしその狐は、どう考えてもおかしな所があった。
左足が折れている。そう思った。
俺はその狐に向かっていき、そこらにある木の破片や
持っていたハンカチで応急処置をした。
狐が心配だったが、その日は暗くなりかけていたので施設に戻った。

次の日、狐はそこにいた。
次の日も、その次の日も、狐はそこにいた。
いつしか俺はその狐に話し掛けるようになっていた。

年が変わる。その頃俺は、その狐に対して不思議な感覚を持ち始めていた。
もしかしたら、この狐は妖狐なのかもしれない。
足が折れているのに、3日目ぐらいから
普通に歩いていたのがまず不思議な事だった。
それからたとえ怪我をしても、2日か3日で直っていた。
俺は妖狐の伝説を信じてはいない。でもこの狐が妖狐なら・・・
俺には会いたい人がいた。
俺は狐に語り掛けた。
「なぁ、俺はこの夏に、父さんを病気でなくしてしまったんだ。
父さんは優しくて、いつも俺の心配をしていてくれた。
1年前の冬、父さんは、こんなに立派に育ってくれて、
もうこの世に思い残す事はなくなったといったんだ。
でも俺は、父さんとの約束を果たせられなかった。
そして父さんが死ぬとき、一番言いたかった事が言えなかった。
せめて、もう一度会いたい。会って、もう一度でいいから話がしたい。」
その日は暗くなるまで狐を抱きつづけた。

次の日から、狐の姿は見えなくなった。


2月に入り、寒さも一層厳しくなる。
しかしそれも下旬に入ると、暖かくなってくる。
その日、俺は商店街に買い物に出かけていた。

ふと一人の男が目にとまる。
そしてその時、あの狐の伝説の続きが思い出された。
「しかしその狐は、その前の記憶すべてを忘れてしまう。
記憶を戻す事ができるかどうかは、その頼んだ人次第である。
さらに・・・」
さらに?なんだっただろう。
いや、多分関係ない事だ。
俺はその男の方を向き、満面の笑顔でこう叫んだ。

「父さん!!」

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いかがでしたか?
もう次に訪れる「別れ」が分かってしまいそうだなー。
でもその「別れ」は、多分最後のとどめなので、
とりあえず次は、「恋愛」ですね。

コメントを本っ当に希望いたしております。

 

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