3次元CADの特性
ここでは、一見、短所と考えられる3次元CADの特性を解説します。
勘所…と考えて、頭の片隅に留めて頂ければ幸いです。
1、コマンドが多いのは?
コマンドとは、線を引くなら”LINE”とか、円を描くなら”CIR”という命令です。
最近はアイコン(絵文字)化されているので、英語を覚える必要は有りません。
確かに3次元CADの場合、面や固体作成のコマンドが増えます。
しかし、俗にワイヤーフレームモデラーと呼ばれるCADには、面も固体も有りません。
3本か4本の線で囲んだ範囲が、”面”だと設定されていれば、ワイヤーフレームです。
ワイヤーフレームの視覚的な見辛さを解消したのが、サーフェイスモデラー。
面作成のコマンドは増えましたが、複雑な面も視覚的な判断が出来るようになりました。
面は厚みが無いけれど、世の中に存在するものには全て厚みが有る。
面を6枚貼り合わせれば厚みは表現出来るけど、今度は、面が増えて見辛くなる。
いっそ、木像でも作るように、固体を削ったり貼り付けたり出来ないか?
そこで生まれたのが、ソリッドモデラーというCADで、一段とコマンドが増えました。
固体作成のコマンドだけならまだしも、削ったり貼り付けたりのコマンドも必要。
マニュアルを見ると、和だの差だの訳の分からない説明まで出てきます。
CADて、数学なの?と疑いたくなる状況に、”3次元CADは要らない”となる訳です。
さて、ここまで読んで、3次元CADのコマンドが多い事は理解頂けたでしょうか?
実際、プロの間では、サーフェイスモデラーは、2.5次元CAD。
ソリッドまで扱えて3次元CADだという考え方も有ります。
でも、そこまで覚えなくても2次元CADでは味わえない機能が沢山有るのです。
ここで、2次元CADを使われている皆様に考えて欲しいのは、
あなたは、そのCADが備えた全てのコマンドを、全て使っているのでしょうか?
ということです。
少なくとも私は、1年に一度使うかどうか分からないコマンドは、覚えていません。
そんなコマンドが有ったな、と思ったら、マニュアルなりヘルプなりで調べます。
よく使うコマンドだけを覚えておけば、実JOBには何ら差し障り有りません。
極端な話、3次元モデリングをする人は、2次元用のコマンドを忘れても良いのです。
コマンドが多いと感じるのは、何をするかが明確になっていないから!!
そう思うのは、私だけでしょうか?
2、座標系の概念とは?
座標系…なんだか難しそうな単語で、だから…という声が聞こえそう。
マニュアルにはスクリーン座標だの、ウィンドウ座標だの論理座標だのと…。
2次元CADには、そんな概念は無い!!と思ったら大間違い。
CADがコンピュータのソフトである以上、座標系の無いCADは有りません。
実は、2次元CADは、座標系が固定されているため、意識してないだけなのです。
その昔、かのガリレオは、天体が回るのではなく、地球が回ると説いて非難されました。
2次元CADに座標系が無いのなら、画面の中を拡大・縮小しても値が変わらないのは何故?
難しく言うと、CADの中には絶対座標が有って、それをスクリーン座標に置き換えている。
スクリーン座標の目盛が細かい程、細い線がより細く鮮明に表現出来るという訳です。
そんなこと意識しなくても線だけ引ければいいんだ!!では、永久に人類は月に立てなかったかも。
(あれは、NASAの映画だといううわさも有る。でも私は地球は回っていると信じたい。)
余談が多くなりましたが、本来CADを操作する上で、ある程度、座標系の理解は必要です。
3次元CADで必ず覚えたいのは、ローカル座標系。
ローカルなので操作する人が、自由に設定出来る座標です。
高校の数学では、ベクトルの授業の時に習ったらしい。
私は全然記憶が無い…だけど、直行した横軸がX軸、縦軸がY軸というのは中学で習った記憶有り。
取り敢えず、Z軸を考えなければ、座標系は少し簡単に見えて来ます。
自分で自由にX軸とY軸の設定を出来るんだ…と考えればローカルの意味も少し分かるかも。
何故、そんな機能が必要なのでしょうか?
紙でも画面でも見た目は2次元なのだから、座標系の意識無しでも立体図は表現出来るはず。
そうなのです、頭で思い描ける画ならば、2次元CADでも立体図を表現出来るのです。
しかし、頭で思い描けない(電卓を叩かないと計算出来ない計算値のような)画は?
そんな画を表現するのを助けてくれるのが、3次元CADです。
ローカル座標を理解する事は、そのための一手法です。
座標を固定した状態で3次元モデリングを行うと、常にXYZの値を考慮する必要が有ります。
(実際、初めて3次元CADに触れた時、私は一本の線を引くのに5分以上かかった。)
でも、自分で自由に座標を設定する事を覚えると…相対値の魔術?が使えるのです。
あなたは、線を引く時に、線の始点と終点のZ座標を意識するでしょうか?
奥行き(Z値)を意識せずに3次元モデリングを行う手法が、座標操作なのです。
どうせ3次元モデリングを行うのならば、より簡単に確実に…という事です。
とは言っても座標操作は、CADを信用出来ないととても不安な気持ちになるものです。
自分が思っている通りにCADが認識してくれているのか?という疑問が生まれます。
私はアイテムのプロパティー情報を神経質なくらい確認する癖が有ります。
新しいCADに触る時には、まず、プロパティー情報の表示コマンドを覚えます。
でも、プロパティーに無関心でモデリングができるの???
そう思うのも、私だけでしょうか?
3、一本の線が持つ意味
紙の上に、一本の線を見つけた時、即座にそれが髪の毛だと判断出来たのは?
そんな所に線が有るはずが無い。と、あなたが知っていたからです。
では、普通に図面を眺めた時、その線がどうやって描かれたか?は判断出来るでしょうか。
そんな事考える必要も無いし、まず、その線の図面上の意味を知ることの方が大切。
もっともな考え方だし、図面が図面である以上、それでも良いのかも知れません。
ここで、皆さんに考えて頂きたいのは、図面が有れば物作りが出来るのは何故なのか?
図面を描く人と実際に物を作る人が同一でも、図面は必要なのか?です。
一人の設計者の意図が、物作りに携わる大勢の人に伝われば良い。
そのための手段が製図であり、図面だったはずです。
実際に紙と鉛筆、定規とコンパスだけでも、それだけの事が出来るのです。
少し横道にそれましたが、近年、CADが普及して、図面はきれいになりました。
誰が描いても同じ太さ、同じ大きさの線や文字が描けるのだから…。
でも、それだけなら、紙と鉛筆、定規とコンパスをコンピュータに置き換えただけですよね。
3次元モデリングは、時として一本の線を描くために、何段階もの手順を追う事が必要です。
何故かというと、定規とコンパスでは、描けない線を描く事が出来るからです。
簡単な例ですが、あなたは100Rの円を、斜め39度から見た線を描けるでしょうか?
電卓を叩いて、こんな形と想像出来ても、案外、表現するのは難しいものです。
でも、3次元モデリングなら、100Rの円を描いて、視点を39度にするだけ。
時々は、”この線は、どうやって描かれたの?”と疑わないと、ひどい目に会います。
特に、曲線は本来2次元CADでは求まらない事が多く、CADデータも信用出来ません。
まして、近年ではCADデータからCAM(NC制御)に直結した生産体制が当り前です。
たった一本の線が不正確だったために、大損害という話は、いくらでも有ります。
あなたは、その一本の線を、あなたのCADで描く事が出来るでしょうか?
案外、そんな素朴な問題を抱えているのが、2次元CADなのです。
勿論、3次元CADさえ有れば、どんな線でも描けるとは限りません。
視点を変えるだけではなく、オフセット線、干渉線、投影線等の手法を駆使します。
このコーナーでは、これらの手法を出来る限り簡単に紹介したいと思ってます。
鉛筆で線を引く際に、熟練者は、鉛筆を回転させて均一な太さの線を描くそうです。
鉛筆で描かれた一本の線にも、そんな思い入れが有る。
CADで描かれた線にも、思い入れが有って良いと思うのです。
どんな線でもCADで表現出来るようになりたい!!
これが、私にとって、永遠の課題です。
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