お経読誦の功徳


摩訶般若波羅蜜多心経。
観自在菩薩。行深般若波羅蜜多時。照見五蘊皆空。度一切苦厄。
舎利子。色不異空。空不異色。色即是空。空即是色。受想行識。亦復如是。
舎利子。是諸法空相。不生不滅。不垢不浄。不増不減。
是故空中。無色無受想行識。無眼耳鼻舌身意。無色声香味触法。
無眼界乃至無意識界。無無明亦無無明尽。乃至無老死。亦無老死尽。
無苦集滅道。無智亦無得。以無所得故。菩提薩埵。依般若波羅蜜多故。
心無罣礙。無罣礙故。無有恐怖。遠離一切顛倒夢想。究竟涅槃。
三世諸仏。依般若波羅蜜多故。得阿耨多羅三藐三菩提。
故知般若波羅蜜多。是大神呪。是大明呪。是無上呪。是無等等呪。能除一切苦。真実不虚。
故説般若波羅蜜多呪。即説呪曰。
羯諦羯諦。波羅羯諦。波羅僧羯諦。菩提薩婆訶。
般若心経。



これが、あれれ^^;が最初に覚えた”般若心経”というお経。
青色の文字だけを数えると”262文字”ということで、
”般若心経は262文字”という説が主流のようですが、
最後の”般若心経”という4文字を加えて”266文字”という説も有るようです。
この文字数を多いと感じるか、少ないと感じるか?
体調を崩す前の私には、”とてつも無く長いお経”と思えたのですが、皆さんは如何?



1.般若心経との出会い。

”若い頃に煙草を吸うと記憶力が落ちる!”
という話を聞いたことが有る人には察しが付くと思いますが、私は暗記が苦手!
英語の単語暗記が苦手なことを、煙草のせいにしていた頃が有ります。
その苦手意識が45歳になっても心に焼き付いていました。
20代の頃に失業して、どうにもならない状況まで追い込まれた時も、
”自分は覚えることが苦手だから、考える仕事じゃないと勝負にならない!”
…って、それがプログラマーを目指した一番大きな理由だった程に暗記は苦手。

40代で独立してすぐの頃、とても忙しい最中に、法事が有りました。
曹洞宗の法事では”修証義”というお経を参列者全員で読誦するのですが、
気忙しさと不安感で疲れ果てていた私には、そのひと時がとても清々しく感じられました。
すぐにネットで調べたのですが、当時は”修証義”の全文を解説したHPが無かったのです。
仕方なく書店で買い求めた”お経の本”に、たまたま”般若心経”も載っていました。
”修証義”33ページに対して、”般若心経”は僅か3ページ。
でもそれを”暗記したい”とは思わない…”修証義”を調べたくて買った本なので…。



2.お経は頭で理解したくても…。

その一年後、私は”寝付けない、起きられない。”の状況に陥っていました。
丁度橋梁業界を震撼させた事件の影響が色濃い時期とも重なったのですが、
新しいことにチャレンジすることへのプレッシャーや、将来への不安やら…。
お酒を飲んで寝ても小一時間で目が覚めて、朝まで眠れない…とか、
胃薬が頭痛薬になり、気が付くと睡眠薬を飲んでも熟睡は出来ない状態。
布団に入ることが”辛い”ので、仕方なくネットでも…みたいな生活で、
”修証義”に留まらず、禅語の”無門関”を調べてみたり、般若心経を調べてみたり…。
調べても意味を理解することは難しいので、考えている内に眠くなる訳です。

これが”お経の功徳?”と思われても困るのですが、
その頃に何かのホームページへ、ある登山家の話が載っていて、
”私は山に登る際、般若心経の書かれた小さな紙切れを持って行く。
 極寒のテントで一夜を過ごすのは、本当に怖いので…。”
何故かその話だけが頭に残りました。



3.確かに”お経”の暗記は簡単では無い。

当時、般若心経を解説したあるホームページに、般若心経の覚え方が出ていて、
”これをこのままの形で覚えるのは無謀!”
ということで、ある程度の文節に区切って覚える方法が紹介して有りました。
どうせ眠れないのだから…と、興味半分で挑戦してみたのですが…駄目!絶対無理!
そもそも最初の20文字辺りからつまずくし、後半の”得阿耨多羅三藐三菩提”から、
最後の”羯諦羯諦。波羅羯諦。波羅僧羯諦。菩提薩婆訶。”さえもつながらない。
”やっぱり私に暗記は無理。”…という状態で、年末のドタバタを迎えました。

果たして翌年の正月明け…何故か頭痛薬を飲んだ翌日に発熱して、何故か身体も重かった。
風邪だと思い近所の医者に行ったのですが、投薬と念のための血液検査をして頂いて帰宅。
翌朝早くに掛って来た電話に、いつも通りに起きられない布団の中で対応すると、
血液検査の結果のことで、すぐに病院へ来て欲しい…とのこと。
本当にショックだったのですが、その時は肝臓が壊れているので入院して下さいと言われた。
この忙しい時に入院なんて、今度は生活が壊れてしまう…。



4.それでも”お経”は暗唱出来る。

お医者さまと相談して、その日からの一ヶ月間は、日曜を除く毎日通院して点滴治療。
自覚症状は無かったのですが、疲れていたのか最初の頃は点滴が気持ち良かったです。
でもそれが一週間、二週間と続くうち、30分近い点滴の時間は長く感じられるものです。
勿論、治療期間中は”絶対禁酒”なので、ただでさえ眠れない夜も一段と長くなりました。
堪りかねて手にしたのが、”修証義”を調べるために買った本。
”般若心経”のページを見て、”これ、覚えられなかったなぁ…。”と思いながら、
難しい漢字の横に書かれた”ひらがな”を通読しました。
暗記は出来ていなくても、読んでいるだけでも気持ちが良くなることに気付きました。
それを3回繰り返すと、とても眠くなって…翌朝は何年か振りの快眠感を覚えました。

その日から、点滴治療の時間に”観自在菩薩。行深般若波羅蜜多時。照見五蘊皆空”
(かんじーざいぼーさつぎょうじんはんにゃーはらみたじしょうけんごーおんかいくう)
という、般若心経の冒頭20文字の”読み”が頭に浮かぶようになりました。
勿論そこから先は暗記出来ていないので、そこで止っては、また”観自在菩薩…”
になるのですが、今度は就寝前の”ひらがな通読”への意識が違います。
”照見五蘊皆空。度一切苦厄。舎利子。色不異空。空不異色。色即是空。空即是色。…”
少しづつ治療中に暗唱出来る長さが増えて、都合2ヶ月の治療期間が終わる頃には、
途切れ途切れでも、262文字の”暗唱”を出来るようになりました。



5.暗唱と暗記は少し異なりますが…。

お正月明けに身体を壊した同じ年の秋頃だったと思うのですが、
朝5時に目が覚めて、朝ご飯を食べたくなりました。
勿論、それまでも毎朝食パンの一枚くらいは食べていたのですが、その日の朝は、
”ご飯と味噌汁が食べたい。”と思いました。
後から思うと、例年なら夏バテが出る頃なのに…ですが、
その頃には般若心経もお坊さん並の速さで暗唱出来るようになっていました。
その日から毎日、朝はご飯に味噌汁、お漬物。
暗唱出来る”お経”も大悲咒、消災咒、舎利礼文、普門品偈、寿量品偈と増えました。
(同時に20年以上変らなかった体重が増え始めたのを喜んで良いのかどうか…。)

暗唱というのは”丸覚え”なので、否定的な意見も有るようですが、
仏教での”仏”は、皆さんの一人一人に宿っているとされています。
その”仏”の言葉が”お経”なのであって、その言葉に人間の脳が安心感を覚えるのでは?
多分それが暗唱でも暗記でも、実は”ふりがなの通読”でも、脳にとっては同じことなのです。

勿論この2年の間には”お経の解説本”も読んだので、お経の一通りの意味は知っています。
でも本当のお経の教えを理解するには、まだ程遠い状態…であることも知っています。
そんな私でも、現世利益を受けている”ありがたさ”を、皆さんにも知って頂きたいのです。



功徳とは何なのか?
それは自分が得た”利益”だと考えがちですが、
大切なものと引き換えにして自分が得た”お金”は、果たして利益なのでしょうか?
(例えば…例は悪いですが…大切な家族を失って得た保険金は利益なのでしょうか?)
目で見えるものだけが”利益”なら、目が認識出来ない”熟睡”や”安心感”は何なのでしょう?
”生活しづらい御時世”と言ってしまえばそれだけですが、
”苦から脱却したい!”と願うくらいのことは出来そうです。
釈迦が生涯の説法で語ったことは、”苦の真理”にかかわることだけだそうです。
お経は元々釈迦が語った”一切皆苦”からの脱却を教えた書物なのだそうです。

良薬は口に苦いので、”私”には難しい教えも有りますが、
苦からの脱却を欲っした”私の脳”が、自然に受け入れたのかも知れませんね。^^;



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