2000年の田植え事情(後半)

    10時過ぎまでは曇天だった天気もなんだかすっかり青空に変わってしまった。
    主人は11時になるかならないかで、「もう、午前中はやめる」と言って家の中へ入っちゃった。
    田んぼは半分も植えてない。 いつもだったら午前中に田植え機で全部植えて、機械も洗って、
    午後からは「植えつぎ」のはずなのになぁ・・・ こんなことで終わるのかな?

    朝は6時ごろ朝食を取ったからお腹も空いてる。 早いけどお昼ご飯にすることになった。
    にゃおなりにお昼ご飯の用意をしておいたのだけど、にゃお母が子守りがてらに近くのスーパーへ
    子供と買い物に行き、お寿司やら刺身やらを買ってきてくれた。 おまけに家で卵焼きや鳥肉を焼いたり
    したものまで作って来てくれてたから、なんだか豪華。 子供も喜んで卵焼きをパクついてる(笑)
    空はますますいい天気になって、雲ひとつない様子。 暑すぎると田んぼの水加減が難しくて
    田植えがスムーズに行かないんだよね。 どうしてかって? 機械にもよるけど、にゃお家の田植え機は
    押して歩くタイプ。 フロートという浮き輪の役目をするものがお腹にくっついててそれが2つの車輪の
    駆動力で水上を滑っていくんだよね。 だから暑くなって田んぼの水が蒸発しちゃって乾いてくると、
    うまく滑らないのよ。 うまく滑らないと自分で押さないといけないから体力を使って疲れちゃう。
    おまけに滑りが悪いと、それだけ狭い間隔で苗を植えてしまうから、苗も予定よりたくさん使っちゃうし、
    泥が硬いとせっかく植えた苗がへんな格好で植えられちゃうの(まっすぐに植えられない)。
    かと言って水が多すぎると今度は植えた苗が水没しちゃうし、やっぱり歩きにくくてこれまた体力を
    消耗しちゃうんだよね。 水は多すぎず少なすぎず。 でもにゃお家の田んぼは広い一枚田。
    (田んぼは一枚二枚って数えるらしい) 水を均等に行き渡らせるなんて不可能だよ。
    ここは浅いけどあっちは深いってことがどうしても起こってくる。 だから余計に難しい。

    「暑くなると田植えがますます難しくなるからちょっと休んですぐ始める」とのうたもうた主人。
    横になるや、がお〜 がお〜と怪獣に変身だ。(にゃお家ではおおいびきをかいて寝てる状態を
    怪獣に変身すると表現するのです) こりゃあ、ちょっとやそっとじゃ起きないよ?
    にゃおはその間に食事の後片付けや夕食の下準備、洗濯物を取り込んだりとフル回転。
    休みたいけど、今ここで休んじゃ、あとでどうせ自分の首をしめるんだもん(苦笑)
    約1時間ほどして、目覚めた主人が田んぼへ出かける。 田んぼは端の方が相当乾いて
    泥の表面が白っぽくなってる。 ヤバイよねぇ。 にゃおのような素人が見ても
    これって田植え機で植えるの無理そうだよ? 
    相変わらず1時間やっては休憩のペース。 5時のサイレンが鳴ってもまだ機械植えが終わらない。
    だめだ。 これって絶対今日中に「植えつぎ」は出来ないよ。
    そのころ例のひどく乾いたあたりに差し掛かった主人。 全然滑らない田植え機を一生懸命、押してる。 
    そんな努力を笑うように田植え機はのたくたと進んでちゃんと仕事をしようとしない。
    「もう、今日はやめ!」と半分キレかかった主人が田植え機での田植えを諦めた。
    田んぼから田植え機を出すのにバックで出ようとしてる。 いつもなら前進で出るのにな?

    ガゴンガゴンガゴン・・・
    車輪が空回りして出て来ない。 ギョ? またなの?
    日曜日のトラクター事件が頭をよぎる。 
    「ねぇ、『あゆみ』持って来た方がいいんじゃない?」というにゃおの言葉に、「大丈夫」だって。
    全然、大丈夫じゃないじゃん。 現に、田植え機、出て来ないもん。
    田んぼが柔らかいから田植え機の重みで機械が沈み、出口との段差がありすぎて
    出られないんだよね。 その段差を埋めるべく、木切れを持って来いだなんて言う。 
    ねぇ、絶対、「あゆみ」の方が早いってばぁ。 なんでそんことわかんないのかなぁ?
    案の定、いくら木切れを入れたってどうにもならない。 
    「しょうがない、『あゆみ』持ってきて」
    遅いっちゅうの! またしても納屋から「あゆみ」をえっちらおっちら取り出して、田植え機の
    車輪の下へ入れる。 せーので引っ張ると・・・ ほおら、田植え機はちゃんと出るじゃないかぁ。
    よかったぁ。 このままハマったらまたレッカー車呼ぶところだったよ。
    「もうねぇ、疲れて思考力がないんよ(ないんだよ)。 いつもなら前進で出るのにその体力もなくてさぁ
    (田植え機を押し上げる力が残ってないってこと)」
    おいおい、それはわかるけど、思考力ないんなら、とりあえずにゃおの言うこと聞けよ。
    もちろん、口に出したりしないけど、にゃおの心の中は「アホかおまえ」の連呼(爆)
    これだけで30分以上ロスしちゃったじゃないの。
    田植え機の泥を洗い流して納屋にしまって。 田んぼは田植え機で植えるべきところも
    植えられずになんだか、みすぼらしい感じ。 「植えつぎ」別の日にやるのかぁ・・・ ガックリ。
    「なんか今年は疲れるのう(疲れるなぁ)  何でかのう(何でかな)  こんなんは(こんなのは)初めてじゃ」
    確かにね。 にゃおも今日はいつもの仕事を全部してないのになんだかすっごく疲れたよ。
    なんでかなぁ??? と、二人して考え込んでた時・・・ そうだ! 確か今年は
    トラクターの刃(土や泥をかき混ぜるために回転する部分)を取り替えたんだよね。
    新しい刃だから深く掘れちゃったんだよ。 深く掘れちゃうと歩きにくいもんね。
    それに考えてみて、いつもだったら「しろかき」して、一週間たってから「田植え」だよ。
    でも今年は日曜日に「しろかき」できなくて疲れるばかりで、木曜日に「しろかき」したでしょ?
    そして今日(4日の日曜日)、「田植え」だもん。  泥もまだ柔らかすぎるし、第一、一週間の
    間にこれだけのことをしたら、相当体が疲れてるはずだよ。 回復する暇なんてありゃしないんだもん。
    だったら、今日だって、妙に田植えの途中で休憩しちゃったのも納得できるよね。
    ちょっと体を酷使しすぎてたんだよ。
    理由がわかると、二人ともそうかぁ〜と納得。 しょうがないことだったんだと思えば、
    今日田植えが全部済まなかったのも、少しは諦めがつくってもんだよね。
    でも、改めて「植えつぎ」するのって面倒だなぁ(にゃおが植えるわけではないが)
    いつする? え? あさって? ふぇ〜ん・・・(T_T)


    二日後の6日(火)のこと。
    朝6時から「植えつぎ」開始。 やっぱり例年のごとく、苗の植えてあるラインの修正のことで口ゲンカ。
    もうやだよ。 どうして毎年同じことで嫌な思いをしなくちゃいけないのさ。
    朝ご飯もまだだっけ? お腹空いてるからケンカもするのかな?
    ひとまず7時半に家に入って、起きた子供と朝ご飯。 9時から再び、「植えつぎ」の続き。
    ほんっとうにごめんね。 もう一回だけお外に行ってくるから待っててね。
    もう、わかってるんだろうね。 子供はいつもとかわらない笑顔で「は〜い♪」とお返事。
    今度はそんなに時間かからないからね。
    一足先に仕事を始めてた主人。 なあんだ。 にゃおがラインの指示なんかしなくても
    ちゃんと一人でできてるじゃん。 こんなことなら人にラインの指示をさせてしなくてもいいケンカなんか
    することもなかったのに。 そこでにゃおは考えた。
    「にゃおが言うより一人で植えた方がよっぽどキレイに植えられてるよ」
    そしたら気をよくしたのか、主人、その後は一人でせっせと植えていた。
    おかげでケンカもしないで和やかに、あれこれと話しながら、爽やかな青空の下、「植えつぎ」は
    終わったのだった。 ほっほっほ(^ ^;

    まったく、今年の田植えは一から十までトラブル続きだったねぇ。
    毎年同じ作業のはずなのに、絶対同じってわけにいかないのが不思議なところだね。
    毎年が初めての年になるんだもん。 これからもいろんなことが起こるんだろうなぁ・・・

    午後のひと時、にゃお家は全員、がお〜 がお〜と怪獣に変身したのは言うまでもない。

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