CLデータの様式


実はCLデータの作成については、私もかなり以前から課題としていました。
見るからに整然としていて、効率の良さそうなフォーマットなので、
DXFからCLへの変換は不可能では無い…と考えていたからです。
でも、実際に市販の変換ツールを購入してみると、90点と120点は違っていました。

市販ツールは”取っ付き憎い”のですが、慣れると”実用的”です。
(エッ!?こんな事も出来るの?みたいな発見が有ったり…。)。
しかしその”取っ付き憎さ”が故に、CLの認知度が高まらないのなら惜しい話です。
”取っ付き易く”するには、CLデータのフォーマットを理解するのが最善では?



CLデータは、主に一部材毎の 部材情報、外形切断、罫書き、内径切断、 で構成されています。
一つのファイルに多部材のCLデータを入れる場合は、この4つ(BEGIN−END間)を、
部材数だけ繰り返します。
(DXFとは違い”END”カードの数を数えるだけで、1ファイル内の部材数が分ります。)
部材情報(PIECE)は、個々の部材の名称や板厚、材質、員数といった情報が”テキスト”
で記述されているので、一目見れば”どの部材”というのが分るくらい”人に優しい?”様式です。
しかし、少し厄介なのは、残りの3つ…GAIK、MRK1(MRK2)、CUTです。


1.外形切断データ(GAIK)
  罫書き(MRK1)や内径切断(CUT)が無くても、GAIKが有ればCLデータなのですが、
  (正確には、BEGIN−END間に、PIECE、TAIK、GAIKが必須)
  扱える要素(アイテム)は、連続線、直線、円(円弧)だけです。
  汎用CADで言う、”ポリライン、ポリゴン”は、連続線(STGRP)に変換すると思う
  (テストしたことは有りません)のですが、スプラインは”ダメ!(対応して無い)”です。
  勿論、サーフェイスとかソリッドとか、CADの要素名を知る人は”エッ!?”と思うかも
  知れませんが、これはCLから変換される”NCデータ”の制約です。
  (基本的にNC機械は、”点列”しか認識出来ないので…。)

  それなら、DXFの方が良い…と思うのも早計で、DXFからNCに変換するツールも
  この制約が有るために、”使用出来る要素”に制限を設けているはずです。
  (勿論、スプラインからNCデータに変換出来るツールも有りますが…。)

  各々の要素は原点(一般には左下)から原点まで連続化している(一筆書き出来る)事が必要です。
  つまり、ある要素の”始点と終点”は、必ず他の”1要素の始点か終点”と同一で無ければなりません。
  連続しているはずの直線が、僅かでも”離れて(連続化して無い)”いると…。
  最悪の場合、鉄板を切っていた切断機が、途中で止ります。
  (止ると、続きは誰が切るのでしょうか?)
  勿論、そうならないように、NC変換時に対策を講じているはずですが、
  人間にとって”僅かなこと”は、時として機械には”重大なこと”…という訳です。

  どこのCADとは言いませんが、円弧に接する直線の作画には、誤差も有るようです。
  その”誤差”で客先との信頼関係が壊れるのなら…CADくらい、お金を払って買いましょう。


2.罫書きデータ(MRK1、MRK2)
  罫書きと言えば、H−stやV−stの配置線や基線、十字芯と様々ですが、
  NC切断機に”罫書き機能”が無いと、無用のデータになってしまいます。
  (勿論、NC罫書きの専用機械も有るので、一概には言えませんが…。)
  MRK1データは表面の罫書き、MRK2データは裏面の罫書きに使用されるので、
  鋼板を反転してNC罫書きを行わないのなら、MRK2は不要です。

  余談ですが…一般には”罫書き>切断”の順番なので、部材を反転させるのは大変です。
  確かにH−stの”単品”を反転するのは”手”でも出来そうですが、
  H−stだって、罫書きの時点では大きな”ロール材”にネスティングされています。
  3M×10M…なんていう”ロール材”は、人手だけで反転するのは不可能です。
  ロール材を反転するところを見たことの有る人は、背筋が凍ったはずです。

  MRK1で扱える要素は、GAIKの要素と、文字(CHAR)、ボルト孔(BOLT1)です。
  GAIKとは違って、必ずしも要素同士が連続していなくても機械は動きます。
  でも、例えば”破線”をNC罫書きすると、怒られます。
  罫書き機が”不連続な箇所”でどのように動作するか?を知れば当たり前のことですが…。
  敢えて説明しないので知らない人は、”機械の担当者”に聞いて、友達になって下さい。
  機械のことは、そのオペレータが一番詳しいし、それを知らずに原寸は出来ません。

  さて、厄介なのは”BOLT1”です。
  これは、ボルト孔の中心座標のみを示すデータなので、孔径は無い…のですが、
  要するに、CLデータは”孔明けデータ”では無いので、孔径を管理していません。
  (REM文を付加すれば、孔径の記述が可能…というローカルルールは有りますが。)
  感の良い人は、”1が有るなら2も有る?”と思うはずですが、”BOLT2”も有ります。
  (手元の資料”XCL様式”では、”BOLT5”まで有ります。)
  BOLT1とBOLT2の違いは、”ボルト群”の違い…なのですが、
  一般的な主桁ウェブで言うと、一枚のウェブでもS1側のスプライス孔は、”BOLT1”、
  S2側のスプライス孔は、”BOLT2”というような”グループ分け”なのです。
  この概念は”スプライス”という”他の部材”を意識しないと区分が出来ません。
  それこそが”システム原寸”の強みなのですが、”CAD原寸”では、区分が困難です。
  NAPCOでのCL変換は、”BOLT1”のみ対応可能なのですが、どんな問題が有るか?
  ”罫書きに破線を使わない”理由が分れば、自ずと理解出来ます。


3.内径切断データ(CUT)
  内径切断は外形切断と同じ!と思ったら大間違い!!
  確かに、使用出来る要素は同じですし、要素が連続化してないとダメなのも同じです。
  でも、内径切断は時に、”大誤作”を起こします。

  @外形切断と内径切断は切断時の回転方向が違う。
   外形切断が”時計回り”に切断する際は、内径切断は”反時計回り”です。
   フラグが有るので必ず注意してないと”開口”が大きくなったりします。
   これは”フキ代”の問題なので、”レーザーなら関係ない”かも知れませんが、
   これも切断機の担当者に確認したほうが良さそうです。

  Aアプローチ量の大きさ。
   例えば、ガス切断機で開口を行う場合は、直径50以下の穴は除きます。
   ”鉄を切る”というのは案外難しいもので、切れる前に”溶けてしまう”ことが有るのです。
   これも”レーザーなら関係ない”かも知れませんが…。

  Bこれは誤作ではありませんが、MRK1やBOLT1と同じ問題が有ります。
   これもNAPCOでは対応出来ていないので…、皆さんで考えてみて下さい。



実は、元来の”CLデータ”は、これだけなのです。
シンプル…と言うのか凝縮していると言うのか、それ故、理解してないと大変です。
ちなみに”家の工場のCLには、剥離やバットが有る。”という意見も有るはずです。
いつの頃からか、”CLデータ”だけでは対応出来ない、”NC制御”が増えたようで、
CLデータの拡張版”XCLデータ”をCLデータと呼ぶ会社も多いようです。
(NAPCOでは対応していないので、敢えて割愛致しました。^^;)






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