主材の作成


通常、橋梁業界で主材(主要部材)と言えば、主桁のウェブ・フランジを指すようです。
横桁、ダイヤフラム、対傾構といった部材は、主材ですが、一般には断面部材と呼ばれます。
原寸の作業を、自分以外の人にやってもらう時、業界では、決まり文句が有ります。
”主材のデータが有るので、後は簡単でしょう・・・。”
私は、主材と言えば、主構造(骨組み)を形成する構造だと思います。
お役所に提出する”骨組図”なるものには、断面部材のラインも有るのですが・・・。
勿論”主材の納期”という話の時は、断面部材が含まれているのも、業界では常識です。




主材(主桁のウェブ・フランジ)は、原寸線形を忠実に反映する必要が有ります。
この分野で、一日の長を持つのは、汎用性を持つバッチシステムです。
汎用CADでの手作業も勿論、可能ですが、この場合お役所に提出する資料は”別途”となります。
”CADで作れば簡単でしょう”という言葉は、誰かに仕事をお願いするときの必須ワードです。
勿論、所掌範囲は、お役所提出資料を含む・・・のが、業界の常識です。

某橋梁メーカーのバッチシステムは、主材だけでなく、断面や2次部材も作成出来ます。
勿論、製作資料、検査資料、お役所への提出資料も出力出来ます。
”一貫システム”と呼ばれる代物ですが、橋梁メーカー各社は、これを目指しています。
これを持つ持たないで、誤作という有ってはならない事態が発生する確率も違います。
まして、今時の標準的な橋梁物件は、一貫システムを持っている前提で価格が決まります。
持ってないのに持っている振りをすると、必ず、”貧乏暇無し”とか言う言葉が飛び交います。


一般に、汎用バッチシステムは、他部材との取り合いを取ることが困難です。
一貫システムは、取り合いが取れることが大きな特徴です。
主材を仕上げるという作業においても、汎用バッチは、基本的に外形のみ信用出来ます。
一貫システムは、外形と配置線は信用出来ます。

いずれにせよ、主材のデータが有れば、最低限、外形は信用出来ます。
配置線なんて、断面部材と、均等割の2次部材だけ・・・と主材の図面には描かれています。
それくらいは、CADの手仕事でどうにでもなる・・・のなら、自分でやればいいのですが・・・。


橋は、道の上を、人と車が通るもの・・・と思ったら大間違い。
通常、道路の下にも”検査路”と呼ばれる点検用の道が有るのです。
雨が降れば、橋の下が濡れていない分、どこかに雨水を流さなくてはなりません。
阪神大震災以降は、橋が地震でも落ちない工夫も、進歩しています。

”添架物”と呼ばれるこれらの設備は、場合によると、橋本体の図面よりたくさん出図されます。
電力、水道、NTT、ガス等のライフラインも、添架物の一つです。
”添架物の処理もお願い出来ませんか”と、私なら、やんわりお願いします。
”添架物の作成も、主材と一括して行います”と相手が言えば、にっこりですね。
仕事を発注して頂いたあなたが、お客様のおごりで飲みに行けるのは、そんな時かも知れません。
添架物の作成と添架物の処理(位置出し)では、倍以上、工数が違います。
添架物の位置出しだけで、主材の外形を作るくらいの時間がかかります。
どこかの橋梁メーカーは、添架物の位置出し専用システムを作ったとか、使ってるとか・・・。
しかし、通常であれば、これだけは汎用CADの手仕事に頼らざるを得ないのが現状です。
私は、仕事をもらう立場上”本体付きピースの原寸まで”で契約しています。


外形をバッチで、配置線と添架物の位置出しをCADで行い、主材が完成しました。
さて、この部材を、誰が切断して、マーキングして、孔明けを行い、溶接をするのでしょう。
NC工作機の存在を知らなかった・・・としたら、”会社を潰す気か!”と怒られます。

今時、主材をNC工作機の力も無しに、加工する橋梁メーカーは、生き残っていません。
客先のNC工作システムに対応したデータの納品、これが、難関です。
”DXFデータでいいよ”と言われて、パソコンCADのこと・・・と思ったら大間違い。
要は、レイアの制御をきちんとやって欲しい・・・という意味なのです。

橋梁メーカーごとに、DXF、CL、BMI、IGES、どれを使っているかも分からないのです。
それを統一する動きもありますが、工場の既存設備だけは、どうしようも有りません。
NCマーキング、NC切断、NC孔明け、NC溶接、果てはNC計測、仮組みシミュレーション。
”NCデータも作ります。”と見栄を張っても、橋梁メーカーは、そこまで期待してくれません。
それでも担当者が、”にこっ”と、してくれたら・・・何事も実験台が必要な訳で・・・。

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