架設方法の条件


1.ステージング(ベント)工法

橋脚と橋脚の間に仮の橋脚(ベント)を建てる工法。
橋脚とベント、ベントとベントの間に持ち上げたブロックを載せてつなぎます。
(持ち上げる方法で、トラッククレーン、ケーブルクレーン等の分類が有ります)
平野部の河川橋は、まずこの工法を採用します。
詳しいことは分かりませんが、安全で効率的な方法なのだと思います。
ベントを建てられるスペースとベントの高さが問題になります。
背の高いベントを解体中に、事故が発生することも有るようです。

架設がベントと決っていれば、落とし込みブロックだけ確認しています。
一般的には橋の片側から順番につなぐので、落とし込みはもう一方の桁端です。
桁端はアバットとの間に隙間が充分有るので、精度を吸収出来ます。
架設を急ぐために両側からつなぐと、橋の中央が落とし込みになります。
橋のブロックジョイント部の隙は、耐候性でも10ミリです。
当然、架設時の精度誤差をどうするかを、原寸時に折り込むことが必要です。

2.送りだし(手延べ)工法



架設場所が深い渓谷で、ベントが建てられない…そんな時に採用されるのが手延べ工法です。
渓谷だけでなく、架設橋の下に鉄道が有る場合も、まず、手延べを採用するようです。
(鉄道の上にベントを建てることは不可能ですから。)
手延べは、片側の端支点側に充分な送り出しヤードがあることが前提になります。
(橋の両側は通常は道路になるので、それなりのスペースは有るはずなのですが。)
比較的重量が少ないトラス構造の手延べ機を、送り出すブロックの端に固定します。
その後、もう一方を台車で押しては新しいブロックをつないでいきます。
手延べ機の先端が、向側の橋脚に届けば、後はひたすらつないでは押すだけ。
橋本体が向側の橋脚に届いたら、手延べ機を外しクレーンで降ろせば架設出来ます。

手延べで問題になるのは、どちらから押すのかです。
手延べ機を付けるブロックは、手延べ機の取り合いを考慮する必要が有ります。
手延べ機を付ける桁端は、原寸時鉛直か完成時鉛直かで度々もめます。
また、手延べ機の重量と橋の重量が送り出すブロックに集中するため補強も必要です。
手延べ…の可能性が有れば、何をおいても手延べ方向だけは確認しましょう。
それすら決まらない工事ならば、せめて両方の桁端は、1メートルでも長く作りましょう。
後で鉄板をつなぐのと切断するのとでは、随分、効率が違います。

ちなみに、送り出し工法には台車式、台船式等有りますが、知らないので割愛します。

3.片持式工法



すでに架設の完了した桁の先端まで、ブロックをクレーンで運びながらつなぐ工法。
架設桁の上にクレーンと結合ブロックの荷重がかかるので、キャンバーの管理が重要です。
つなごうとする桁の先端は、不安定な荷重がかかるので、安全性の確認も重要です。
また、ジョイント部もステージングがない状態でつなぐので、精度管理が困難です。

本四架橋で話題になった自走台船の工法は、ブロックを片持式に巻き上げた工法?
実際に、片持工法の工事を手掛けていないので、この程度しか分かりません。

4.ケーブルエレクション工法



架設橋の両端に鉄塔を建ててケーブルを渡し、ケーブルキャリアでブロックを運ぶ工法。
大ブロック工法が使えない山奥の架設で採用されているのを、一度だけ見かけました。
ケーブルが耐えられるブロック重量に制約があるためだと思いますが、
アーチ橋で採用されていました。

アーチは縦桁の下に横構が有るため、これを一体で架設します。
本来取り合いのない縦桁と横構をコネクションでつなぐため、位置だしも難儀でした。
いづれにしても、アーチと名が付けば、長大橋は少ないので、大ブロックが主流です。
アーチで山奥…と言う場合に、この工法では…と確認しましょう。

5.大ブロック工法



海上に架けられる橋は、この工法を採用することが多いように思います。
文字通り、ブロックをいくつかつないで、大きなブロックにして架設します。
橋脚と橋脚を一跨ぎに出来るため、ステージングなど不要です。
3000トン級の重量を吊れるクレーンと100M程度のブロックを組む地組み場が有れば、
この工法が採用される可能性は大きいです。
それだけ、安全性と経済性に優れた工法だといえます。

大ブロック工法が採用されると、必ず変更図が出図されます。
最初から分かりそうなものなのに…と思うのですが、大ブロックを吊る吊り金具です。
数千トンもの重量を吊るための金具なので、補強リブやらフルペネ溶接やら一大事です。
取付け位置に干渉部材が有ることも一般的なことなので、それ相応の対処も必要です。
この辺に来そうだな…というのはなんとなく分かるものです。
”足場用ならここまで言わない”と、設計者にも理解して頂いて、対処しています。

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