あれれ…^^;の原寸資料


例えば新入社員の方が、”原寸部門”に配属されたら、どうするでしょうか?
”図面”を読めることが前提になりますが、分厚い資料や基準書と共に先輩から一言、
”図面通りに作るだけじゃ、ダメだよ!”とアドバイスが有るはずです。
図面通りに作るはずなのに、それだけではダメ???
”じゃ、どうすりゃいいの?”と思っても、当面は目先の仕事で手一杯!!
分厚い資料には、λがどうだの、δがどうだの…って、何を読めば良いのかさえ分からない。


そんな時、各種資料の取り扱い…とか解説した資料があれば有難い?
このコーナーは、そんな想いを持つ人を対象に設けました。
ベテランの人には当たり前過ぎる問題も、初心者には重大な問題。
時には、”何故そうなのか?”という素朴な疑問にも答えたいものです。

★☆★ 道路橋示方書・同解説 ★☆★
 社団法人 日本道路協会が刊行し、業界では”バイブル”とされている書物。
 鋼橋の製作に携わる人ならば、最低限”I共通編・II鋼橋編”を手元に置きましょう。
 一冊8000円程度の書物なので、社会人としてお給料を貰っているのなら、
 自分で書店に出向いて、手に入れましょう。

 500ページ近い書物だし、難しそうな計算式とか書かれているので馴染み辛い書物です。
 (私などは数学や物理とか苦手なので、通読していると直ぐに眠くなります。)
 でも、何が書かれていそうか?だけは把握しておいて欲しいです。
 私がチョイチョイ確認する項目は、
  1.鋼種選定基準…図面に指示されている板厚と材質が、基準を満たしているか?
  2.溶接継手基準…T継手の取付け角度が、基準を満たしているか?
  3.高力ボルト継手基準…孔縁端や孔ピッチが、基準を満たしているか?
 等ですが、実際に検査での立会いが必要な人は、”部材および仮組立の精度”とかも、
 確認しておくと良いでしょう。

 他の殆どの資料や解説書は、この書物に準じて作成されているはずです。
 何かの解説書で素朴な疑問を感じた時は、必ず、”道路橋示方書・同解説”を確認しましょう。
 先輩が言う通りに作れば良い!!なんて思うのは、学生時代までです。


★☆★ デザインデータブック ★☆★
 社団法人 日本橋梁建設協会が出版している橋梁設計のマニュアル本。
 設計に関する公式や基準等が解説して有るので、興味が無いと、直ぐに眠くなる書物です。
 (これまた300ページ近い書物なので…。)
 私も”原寸に携わる人が設計の勉強をしても無駄?”と思った記憶が有るのですが、
 10年後の今は、これが一番分かり易い解説書だと思うようになりました。

 私が重宝している項目は、
  1.ボルトの形状及び寸法…図面にボルトの形状は、描かれて無いですから…。
  2.排水管(エルボ)の寸法…図面にエルボの形状は、描かれて無いですから…。
  3.積載に関する法令…作った物が運べない、なんていうのは最悪ですから…。
 等です。

 ”デザインデータブック”は、”道路橋示方書・同解説”の内容を、
 具体的な橋梁設計に活かすための解説書です。
 面積とか体積とかの公式から、行列とか確率の公式まで、まさに数学の復習本にもなります。
 ”そんなもの役に立たない?”と思っていたらXセルの計算式も作れません。
 与えられたものだけを使っていては、すぐに取り残されてしまいます。


★☆★ 鉄鋼重量便覧 ★☆★
 産経新聞社が出版している鉄鋼素材の解説書。
 鉄鋼業界の”赤本”とも呼ばれますが、内容を覚える本ではありません。
 (780ページ…これを全て覚えている人は素晴らしい!)
 一般には、鉄鋼材料(素材)を発注する人が定尺の確認に使用しているようですが、
 この本には、日本で手に入る形鋼全ての規格が載っています。
 …と言うことは、この本に出ていない形鋼は存在しない?
 設計の人も、施主からの急な変更依頼とか有ると、在り得ない形鋼を要望する事があります。
 そんな時は図面もノットスケールになりますし…。

 私が確認している項目は、
  1.形鋼の断面寸法…この位置にボルト孔を明けられるの?なんて、調べます。
  2.形鋼の単位質量…極端に設計重量と製作重量が異なれば、やはり問題ですから…。
  3.形鋼の定尺…1mのFB必要なだけでも、一般には5.5mの素材購入が必要です。
           逆に6mのFBが必要ならば、5.5mの素材が2本必要です。
 等です。

 ”鉄鋼重量便覧”の内容は、鉄鋼メーカーの仕様変更と共に変わっていきます。
 そんなに高価な本では無い(2,625円?)ので、常に最新の本を持ちたいものですが、
 一般的な形鋼の断面や単位質量が変わったという話は知りません。
 古くなった本も、それなりに重宝です。


★☆★ 原寸基準書 ★☆★
 製造メーカー各社が独自に作成している基準書。
 各社の工場設備に応じて内容が異なるので、10社有れば、10通りの内容になります。
 (工場の製作ノウハウに関わるので、一般には門外不出とか社外秘とかになっていますが…。)
 ”図面通りだけではダメ!”は、一般にこの基準書に準じて欲しいの意味ですが、
 こればかりは、物作りの実情を知らないと理解出来ない内容が殆どです。
 100ページにも渡って詳しく取り決めを行っている基準書もありますし、
 10ページ程度の取り決めで、後は各工事の仕様によって取り決める基準書もあります。

 一般には、
  1.原寸資料の作成要領
  2.加工系列の解説
  3.溶接要領の基準
 等について書かれていますが、”何故そうなのか?”まで解説してあることは極稀です。

 ”原寸基準書”の内容は、工場の仕様に合わせてあるので、”昔からの決まり…”とか、
 ”どっちでもいいんだけど…”とか、案外難しいものです。
 でもだからと言って自分流の原寸基準を作ると、必ず工場全体が混乱する問題になります。
 原寸の後工程は、即、工場での加工です。
 工場全体の稼動効率が理解出来ないと、原寸基準は理解出来ないようです。



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