2009.10.2 鈑桁
対傾構ガセットの形状不良…それも連続で…。
”対傾構の切り欠きがボルト孔と干渉しています。”
って客先から電話連絡を受けたときは、本当に、”まさか!?”でした。
対傾構の切り欠きと言えば勿論、主桁のH−stをかわす切り欠きですが、
近年のシステム原寸ではこれを自動で出力出来ます。
それでもそれが正しく出力されているのかどうか?は毎回確実に照査を行っているのですが、
納品した配置図を見ると…確かに切り欠きとボルト孔が重なっていたのです。
正確に言うと、他の異なったタイプのV−stを間違えて設定からなのですが、
”下弦材付きガセットの切り欠きとボルト孔”が干渉していたのです。
この失敗には”連続(続き)”が有って、原因と対応策を検討後、
客先へ確認の連絡を行った上で修正を行い再納品を行なったのですが…、
”また同じ対傾構のボルト孔が切り欠きと干渉しています…。”
って再び連絡を受けたときは、頭の中が真っ白になりました。
本当に自分でも信じられなかったのですが…干渉していました。
今度は同じ対傾構の上弦材付きガセットが…。
正確に言うと、再び他の異なったタイプのV−stを間違えて設定からですが、
”上弦材付きガセットの切り欠きとボルト孔”が干渉していたのです。
ここ数年こんなに情けない思いをすることは無かったのですが、
ただでさえ有り得ないような失敗をしておいて、修正した資料がまた同じような失敗…。
これはただ事では無い…と思う気持ちが空回りをしたような大失敗です。
【原因】最初の失敗(下弦材付きガセット)は、確かにV−stの設定間違いでした。
勿論、そんな失敗をしないように照査は充分に行ったのですが、
(実際、手元に有る配置図は、正しく消し込みを施されているのですが…)
そう…変更作業が有ったのです。
@出力した資料を図面と照合して、切り欠きが正しく出力されていることを確認した。
Aその後、V−stの形状変更(クリアランス調整)を行なった。
(V−stの出力タイプを増やした。)
Bその後、再びV−stの形状変更(クリアランス調整)を行なった。
(今度はV−stの出力タイプを減らした。)
Cこの時点で再計算をしてV−stの形状照査(クリアランス調整)が行なわれたか?
を出力図の目視で確認した。
そうです、この時V−stの形状変更に気を取られて、V−stの配置照査を怠ったのです。
それなのに一旦”正しく修正を行った。”と思い込んだ人の視線とは怖ろしいものです。
その後配置図の部材表欄を全量CADで手修正した際に何度も配置図は見たはずなのに、
ガセットの形状不良には気付けなかったのです。
手修正の対象だった”斜材の部材情報”だけを見て、ガセットの形状不良、
(誰が見ても一目瞭然、すぐに分りそうな不良)には気付けなかったのです。
連続の失敗(上弦材付きガセット)も、まさにこれが原因です。
下弦材ガセットの修正が行なえたかどうか?は、勿論照査したのです。
それも修正を行ったV−stの本数に整合性が有るかどうかまで…。
ところが今度は正しく出力出来ていた上弦材ガセットに発生した形状不良に気付けなかったのです。
配置図なので下弦材ガセットと上弦材ガセットは一枚の紙に表示されているのです。
下弦材ガセットの修正状況を確認した際に、すぐ上の上弦材ガセットが見えなかった?
変な話なのですが…見えなかったのです。
”下弦材ガセットを修正したんだ!”と思い込むと、見えなくなるのです。
【対策】この大失敗、実はV−stのクリアランス調整を行なった際に、
正しいV−stを削除してしまったことに起因していました。
そのことに気付かないまま…というのか、”減らす”という修正を行った際に、
”間違えて設定したかも知れない。”と思った記憶が有るのです。
夜遅い時間だったのですが、設定を間違えて無いか修正データの再確認を行なって、
”大丈夫、間違えていない。”と、確信を持った記憶が有るのです。
これが”物を作成する際の思考の怖さ”なのでしょうね。
翌日、実際に出力図を照査した際は、”クリアランス調整をしただけだから。”と、
出力図を目視で確認するだけになってしまったのです。
連続で起こした失敗にも同じようなことが言えると思うのです。
”修正作業は出来るだけ素早く!”なので、視野が狭くなるようなのです。
ある意味それは”集中力”なので否定は出来ないと思うのですが、
下弦材ガセットの修正に集中すれば、上弦材ガセットは見えないものです。
勿論、”紙に印刷すれば気付けたのでは?”という意見も有るのでしょうが、
下弦材ガセットを修正して上弦材ガセットの間違いに気付けるとしたら、
それは、”V−stの孔ピッチを修正した。”という認識を持てていれば…です。
正しいV−stが無くなっていることに気付けなかった、
(以前照査して正しいことを確認したV−stを、今度は正しくセットしたと思った)
こと自体、冷静な照査を出来る状態では無かった…と思うのです。
イレギュラーな作業の影響がどこまで及ぶのか?を知るのは意外に難しいものです。
またイレギュラーな作業が発生するのは、通常、時間的にも余裕が無い時です。
V−stのクリアランスを調整しただけだと思ったから、対傾構までは見なかった。
下弦材ガセットを修正しただけなので、上弦材ガセットは見なかった。
こうして考えると”間違えて設定したかも知れない。”と思ったあの時。
あの時が唯一、この大失敗を防ぐチャンスだったのかも知れません。
私は”物を作る思考と物を照査する思考は別物”だと思っています。
だから出来るだけ照査は翌日…と割り切って作業をしています。
ところが今回は、”もうひと頑張り!”と思って照査をしてしまった。
こんなことなら、”もうひと頑張り!”とか思わずに、
”間違えたかも知れない!”と図面に朱書きでもしておけば、
翌日図面との照合を行なった際に、”何を間違えたのだろう?”と思ったはずです。
今日の自分と明日の自分は別の人。
明日、煩うであろう苦悩を少しでも和らげたいから、今日出来ることは今日頑張るのですが、
そんな保身が、”明日を思い煩う。”ことにつながることも有るようです。
多分、横着をしたのだと思います…明日の自分が少しでも楽になるように…と。
それならば、明日の自分が仕事をし易いように”伝言”を残しましょう。
簡単なことなのですが、意外に出来ないこと…”メモを残す”です。
勿論、メモ紙ではメモをしたことさえ忘れるかも知れないのですが、
独立してすぐの頃に購入した小さな伝言板。
いつの間にか使わなくなって、部屋の片隅に埋もれていました。
今日からは一番目立つところに貼り付けて活用出来るようにしました。
少しでも気掛かりなことは抱え込まずに、明日の自分へ託すのです。
そんな明日の自分への小さな思いやりが、失敗の防止につながるか?
何でもやってみてから結果を評価したいものです。
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