座標変換展開法
紙と定規とコンパスを使った展開手法を見れば、それで良いと思えるのも確かなのです。
それなのに、技術の伝承?が容易でないのは何故でしょう?
そこには、CAD(コンピュータ)と定規・コンパスの考え方のズレが有ると考えられます。
一般にCADオペレーターは、展開の知識を持つ前にCADの操作を覚えます。
そこには定規やコンパスが無い代りに、直線と円弧を描く以外にも沢山のコマンドが有ります。
直線や円弧を描く事と同じ感覚で、線の色を変えたり寸法を作成したりする事を覚えます。
しかし、展開の技術者は、定規とコンパスの代用をCADに求めます。
そこには、線の色や寸法など、ほとんど無関心な状況が有る訳です。
その両者が技術の伝承なるものを行おうとすると…。
一方は、何故この人は円弧ばかり描くのだろう? 寸法を付ける方が難しいのに…。
もう一方は、何故、円弧を描く事が難しいのだろう? 直線と円弧で展開出来るのに…。
求めている事と価値観に相違が有れば、技術の伝承は困難なのです。
では、双方が歩み寄れるものは無いのでしょうか?
それは、今の世では難しいこと…でも、頑張れば皆が楽を出来る事ではないでしょうか?
3次元展開が難しい…とは思いたく無いけれど、楽になる可能性を持つ手法です。
皆さんの力で、3次元展開を一般化して頂きたいのです。
1、与えられた条件
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まず上記の条件の図面で説明します。
この条件を見て、パイプの切り口の展開の説明か? と考えられる方。
パイプはその気になれば、展開型なしでも切断出来ます。(優秀な機械が有るため)
問題はパイプに対して放射状に取付く、補強リブです。
パイプに対して45°なので、一角法・三角法では、リブの平面外形が表現出来ません。
これが、展開の定義で説明した
1、一角法・三角法で表現された図面の内容を、一平面上に表現すること。
であり、あなたは
図面に表現されている内容を、分かり易く表現
しなければなりません。
まず、上記の図面を見て、立体形状を頭の中で描いてみて下さい。
2、図面の示す立体形状
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斜め30度前後(アイソメ)の立体図を理解頂けたでしょうか?
こうして見るとベースPLとリブの溶接面には、本来開先も必要なことが分かります。
2次元でも3次元でもそうですが、図面を見て立体形状を頭に描く事が重要です。
私も、最初は鉛筆で紙に立体のマンガ画を書いてから、CADに向かっています。
3、リブの面直方向を把握する
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鉄板は、曲げ加工が施されていない限り、一般には2次元平面を持ちます。
このリブの2次元平面上のX軸Y軸を、どの辺と辺にするか?を決めます。
私は、ベースPLとの溶接辺をX軸、立ち上りの辺をY軸に設定したいと思います。
4、表示画面(視点)をリブの面直方向にする
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CADの表示画面(視点)を、リブの面直方向に変えます。
その手段を持ってないCADは、3次元CADとは言いません。
面直方向とは、全ての辺のZ値が、一定の値(ゼロでなくても良い)になる方向です。
5、表示画面を平面画面に座標変換する
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今、見えている形状を、CADの平面画面の座標に変換すれば良いのです。
3次元CADは、見かけの座標と絶対的な座標の区別が有ります。
見かけの座標を絶対的な座標へ変換する際、Z値をゼロにすれば、2次元形状が作れます。
後は、開先分延ばして、コーナースカラップを付加すれば、展開終了です。
(開先の延ばし量・角度も、リブの断面を展開すれば容易に把握出来る)
この手法を使用する際は、事前に3次元でのモデリング作業が必要です。
この画のモデリングは簡単なので、15分程度でしょうか?
(実際には、勾配やらケーブル進入角度やらで、もっとかかりますが…)
でも、正しいモデルが有れば、展開は百発百中!! 誰にでも出来ます。
是非、皆様にも取り組んで頂ければ幸いです。
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